エネルギー速報:天然ガス在庫統計(つらつらコラム6月1日)

 

週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

先週木曜日発表の天然ガス在庫量(5月16日から22日までの在庫増減)は市場予想の前週比107Bcf増に対して、やや予想を上回る109Bcfの増加となった。在庫の積み上がりと需要減見通しが懸念材料になって、天然ガス価格は下落した。今日は先週のEIAのレポートと天然ガス月報の中身をみていきたい。

図1は5月12日時点の天然ガス在庫量と5年平均の中央値(黒線)および最小値と最大値の幅(灰色)を示している。次第に在庫量が過去5年の最大値へ近づいている。表1はアメリカの地域別の天然ガス在庫の内訳となるが、全ての地域で在庫が増加している。現在の在庫量は前年度に比べて42%、5年平均と比べて19%多い値となっている。前週の在庫増加が緩やかだったこともあり、在庫の増加ペースはやや落ちている。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)
天然ガス需要と供給

表2は5月21日から27日までの天然ガス供給の内訳となる。天然ガスの生産は89.2Bcfと前週の89.9Bcfからやや減少し、2週連続で日量90.0Bcfを割り込んだ。じりじりと生産量が減少している。カナダからの輸入は横ばいだったため、供給量全体では0.7cfの減少となった。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は5月21日から27日までの天然ガス需要を部門別見たものとなる。まず、天然ガスの総需要量は77.1Bcfと前週に比べて0.5Bcfの減少となった。内訳はみていくと、発電用需要は2.2Bcfの増加、工業用が0.3Bcfの減少、住宅用・商業用が1.9Bcfの減少となった。需要全体の減少が続いている。輸出ではメキシコ向けのパイプライン輸出やLNG輸出は微減だった。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2は過去13年分の原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違いとなるが触れない)で、11週間連続でリグ数の減少が続いている。ベーカー・ヒューズ社の発表している稼働中リグ数は316基と前週比21基の減少となり、1987年の同社の統計開始以来2週連続で最低値を更新している。

図2 天然ガス採掘用稼働リグ数(出展元 EIA)

表4は原油と天然ガス別の稼働中リグ数の変化を見たもので、5月19日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が21基減った237基(約8%減)、天然ガス採掘用が横ばいとなった。原油採掘用リグは減り続けているが、天然ガス採掘用リグの減少数には歯止めがかかっている。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数及び前週比と前年比(出展元 EIA)
EIAの月間報告とLNG輸出の現状

ほぼ3年間にわたり天然ガス生産は増加を続け、2020年3月に日量94.2Bcfのピークに達した。前年比で4.2Bcfの増加だった。一方の需要は新型コロナウイルスによる影響と暖冬が重なり伸び悩み、石炭発電からの転換が進む発電用を除く3部門で前年度より減少した。部門別の増減は以下の通りで、特に住宅用が大きく減少している。

次に天然ガスの輸出は3月までは順調で、1973年に統計が開始されて以降で2番目に多い16.0Bcf(前年比32.9%増)が輸出された。輸出の内7.9BcfがLNGの輸出で、前年比で86.3%の増加となった。また、3月には中国向けに初めてLNGが輸出されている。

図3 輸出港別LNG輸出量(LNGタンカー隻数)(出展元 EIA)


図3は輸出港別のLNGの輸出量を示している。縦軸はLNGタンカー隻数となっている。量で言うと、2番目のピークである3月に7.9BcfあったLNGの輸出量は、5月時点で6.7Bcfへ減少している。これまではヨーロッパとアジアでの旺盛な需要に支えられていたが、減少が止まっていない。要因としては冬が終わったことで暖房用LNGの輸入が減少している季節要因、新型コロナウイルス流行によるLNGそのものの需要減が挙げられている。既に6月分で20隻、7月分で45隻分の貨物がキャンセルされており、EIAによるとこの貨物のキャンセル傾向は夏まで続くと予想されている。このため、LNGの輸出量はキャンセルによって6月に2.3Bcf、7月に5.0Bcf落ち込み、半分以下となると見込まれている。

今後の見通し

今週の天然ガスの在庫統計は前週比109Bcfの増加となり、市場予想の107Bcf増加をやや上回ったことに加えて、天然ガス需要の先行き懸念が重なって天然ガス相場は下落した。ベーカー・ヒューズ社が発表するリグ数によると、天然ガスの採掘用のリグ数の減少が止まり、原油採掘用リグ数の減少スピードにブレーキが掛かっている。レポート内のリグ数の減少幅は前週比21基減少となっているが、レポート発表後に、ベーカー・ヒューズ社が発表した最新のデータではリグ数は前週比15基減と更に減少スピードが落ちている。このため、これまで減少していた天然ガスの生産量の底打ちが予想される状況となった。一方で、輸出を含めた需要の回復は3月から進んでいないため、従来筆者が考えていたよりも天然ガス価格の下落が進むのではないかと考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。