エネルギー速報:EIA原油統計(つらつら分析6月11日)

 

EIA週間統計の総評

今週発表のEIA週間原油統計で発表された在庫情報は次の通り。原油在庫は事前予想に反して572万バレル増加した。製油所の稼働率が73.1%と前週より1.3%上向いた。ガソリンの在庫は86万バレルと小幅な増加、留出油の在庫は減速して156万バレルの増加、オクラホマ州クッシング在庫は227万バレルの減少となった。
今週も製油所の稼働率が上がったことは原油需要の増加を示しているが、原油在庫とガソリン在庫、留出油在庫がいずれも増加となり、原油相場はEIAの週報の発表直後に一時下落した。その後は株の急伸に連れ高となっている。今日も原油需要と石油製品の需要を中心にEIAの報告の内容を確認していきたい。
6月6日に開催されたOPECプラスの会合は、7月も現状のと同様の日量960万バレルの減産(メキシコが離脱したため10万バレルの減少)を継続するとの方針で一致した。

原油と石油製品の在庫

原油在庫とガソリン在庫、留出油在庫のすべてが今週増加となった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は227万バレルの減少となった。

API統計 EIA統計  EIA統計前週 EIA統計2週前 EIA統計3週
原油(万バレル)842増572増207減792増498減
ガソリン(万バレル)291減86増279増72減283増
留出油(万バレル)427増156増993増549増383増
クッシング在庫(万バレル)229減227減173減339減558減
表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれ図は今年の在庫推移(実線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。どの油種も在庫増加となった。過去5年の在庫レンジの上限を超えた在庫水準が続いている。

図1 原油在庫推移(出展元 EIA)
図2 ガソリン在庫推移(出展元 EIA)
図3 留出油在庫推移(出展元 EIA)
アメリカの石油在庫水準

今週、アメリカの石油製品(エタノールや重油、ヒーティングオイルなども含む)と原油を合わせた在庫量はおよそ1200万バレル増加した。戦略備蓄を含んだ在庫量は20億8963万バレルに達し、2016年8月の20億6693万バレルを抜いて2週連続で過去最大の在庫水準となっている(図4)。戦略備蓄を抜いた場合は、14億3963万バレルとなり、こちらは4月末以降在庫量の記録更新が続いている。

図4 石油製品在庫推移(出展元 EIA)
原油生産と輸出入、戦略備蓄

原油生産量は日量1110万バレルと前週の日量1120万バレルから10万バレル減少した。最盛期(1310万バレル)に比べて200万バレル減となった。今週は1日当たりの輸出が36万バレルの減少となったのに対して、輸入は69万バレルの増加となった。イラク産の原油の輸入が日量35万バレルと前週の5万バレルから急増した。戦略備蓄への積み増し量は31万バレルと前週に比べてほぼ半減し2週間前の水準まで減少している。

原油生産と輸出入今週   前週   2週前  3週前  4週平均  前年同時期  
原油生産(万バレル/日)111011201140115011301230
戦略備蓄増加(万バレル/日)31573026
原油輸入(万バレル/日)686617720519636761
原油輸出(万バレル/日)243279317324291312
表2 原油生産と戦略備蓄、輸出入 (出展元 EIA)
石油製品生産量と製油所稼働率

製油所への原油投入量は前週と比べて日量約18万バレル増加した。製油所稼働率は1.3%上昇したが、平年より約20%低い状態が今週も続いている。ガソリン生産量は日量約36万バレル増加したが、前年と比べて約80%の生産量となっている。ジェット燃料の生産が11万バレル増加し生産量の微増が続いているが、前年度生産量の3分の1にも達していない。留出油の生産量は5万バレルの微増となったが、引き続き生産量は横ばいとなっており、前年と比べると約90%の水準となっている。

製油所稼働率等今週  前週  2週前  3週前  前年度同時期   
原油投入量(万バレル/日)13481330129912901706
製油所稼働率(%)73.171.871.369.493.2
ガソリン生産(万バレル/日)  8137777177161027
ジェット燃料生産(万バレル/日)61504945191
留出油生産(万バレル/日)   476471478480523
表3 石油製品生産量 (出展元 EIA)
石油製品供給(需要)

石油製品の供給(需要)ではガソリン供給が日量で36万バレルの増加、週では約250万バレル供給が増加した。ジェット燃料の供給は33万バレル増加したが、例年の4割弱の水準となっている。留出油の供給は59万バレルの増加、週では約410万バレルの供給増加となった。
前週と比べてガソリンの生産量が増加し、供給量も同程度増加したが、生産量の方が供給量より多いため、ガソリン在庫増加となった。留出油の生産量は引き続き横ばいで、今週の供給量が約60万バレル以上増加したことで、在庫の増加速度は落ちたが、いまだ生産量が上回っている状態が続いている。ジェット燃料の生産と供給は例年の4割程度と依然とした低迷が続いている。そのため、石油製品全体の供給量は日量1757万バレルと、前週の1507万バレルに比べて約250万バレル増加したが、それでも生産量の方が多いため在庫が積み上がっている。

今週 今週  前週 2週前  3週前  前年同時期  
ガソリン供給(万バレル/日)790754725679987
ジェット燃料供給(万バレル/日)71388663178
留出油供給(万バレル/日)330271326366436
表4 石油製品供給(需要)量 (出展元 EIA)
石油製品価格

表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となる。原油価格は今週も上昇で6週連続の上昇となった。ガソリン受渡価格(価格)とディーゼル燃料の受渡価格は共に上昇し1ガロン1ドルを超えている。ガソリン、ディーゼル燃料共に供給量が増えているため、スタンドなどの需要が増加したと考えられる。

スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し)6/5   5/29   5/22   5/15   5/8   前年同時期  
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)1.1310.9480.9590.8750.8771.677
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)1.0990.9550.9400.8820.8891.819
原油(ドル/バレル)39.4935.5733.4929.4424.7353.95
表5 石油製品受渡価格 (出展元 EIA)

表6は石油製品の小売価格の全国平均となる。ガソリン価格、ディーゼル燃料の価格は上昇している。製油所からの供給が増加しても卸売価格が上昇しているのに加えて、小売価格の上昇していることは燃料需要の増加が起きているためだと考えられる。

小売価格6/8   6/1   5/25  5/18  前年同時期    
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)2.0361.9741.9601.8782.732
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン)   2.4342.3802.3632.2863.134
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン)2.6862.6382.6182.5533.383
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン)2.3962.3662.3902.3863.105
表6 石油製品全国価格 (出展元 EIA)

今後の見通し

今週のEIA統計では、前週と比べて輸入が500万バレル/週以上大幅に減少したことが、製油所の稼働率が上昇し原油処理量が伸びたにも関わらず、在庫が増加した原因と言える。ガソリン生産が増大しているが、ガソリン供給量の方が未だ生産量ほど多くないためガソリン在庫も増加した。留出油については生産量は微増だったが、供給量が400万バレル/週と大幅に増加したため、在庫の増加スピードが落ちた。ただし、生産量に比べて供給量が少なく、在庫の積み上がり傾向は変わっていない。石油製品全体では出荷量が日量1750万バレル以上と前週より250万バレル以上と大幅に増加したが生産量には及ばず、在庫が積み上がり、前週に比べて約1200万バレル多い20億8963万バレルと過去最大の在庫水準となった。
需要面ではガソリン、ディーゼル燃料では供給量が増加したが、卸売価格と小売価格の双方が上昇しており、需要増による値上がりだと考えられる。新型コロナウイルス対策として行われていた都市封鎖の緩和以降されて経済が上向きつつあることを示しているのではないだろうか。この傾向が来週以降も続くのかに特に注目したい。

OPECプラスは7月の減産量を6月と同様の割当てでの日量960万とした。メキシコの離脱により10万バレル減少している。また、イラクなど4か国の減産不正に対しては7月から9月の間に割当て以上の減産を行うことで、不正に対する補償を行うとされている。その量は日量130万バレル程度と考えられ、7月の減産量は実質約1090万バレルとなる見込み。ただし、サウジアラビアなど4か国が行っていた120万バレルの自主減産は7月以降は行われない。加えて、原油価格の上昇により、アメリカでは採算ラインを回復したシェール企業が増産準備を行っていると報じられている。需要が供給を上回らない限り、大量に積み上がった在庫処理が始まらないが、いつ始まるかは不透明な状況が続く。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。