エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の在庫見通し(つらつらコラム6月15日)

ダイジェスト
週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)
*●は今後の在庫量予測

前週、木曜日にEIAが発表した天然ガス在庫量(5月30日から6月5日までの在庫増減)は市場予想の前週比93Bcf増と一致した。生産量の減少見通しが支援材料となって、天然ガス価格は値上がりした。今日は最新のEIAのレポートから生産量とLNG輸出需要を中心に見ていきたい。

まず天然ガスの在庫量と過去5年平均を比較する。図1は6月5日時点の天然ガス在庫量と5年平均の中央値(黒線)、過去5年間の在庫量の最小値と最大値の幅(灰色)を示している。在庫量は過去5年の最大値へ次第に近づいている。示されているEIAの予測(●)では、7月には過去最大値となる見込み。
次に地域別の天然ガス在庫を見ていこう。表1はアメリカの地域別在庫の内訳で全ての地域で在庫が増加している。現在の在庫量は前年度に比べて39%、5年平均と比べて18%多い値となっている。
EIAは当初、10月31日までに在庫が4089Bcfに達し、アメリカの天然ガスの設計容量4693Bcfの87%、有効容量4261Bcfの96%に達すると想定している。この数値は在庫増加ペースが平年並みとして4月から10月にかけての在庫の増加を2080Bcfと仮定している(4月3日時点の在庫は2024Bcf)が、4月以降の在庫増加量は過去5年間の平均より16%多くなっている。今後の在庫増加量が平年並み(週63Bcf)まで減少したとしても、10月31日時点の在庫は当初の予想を上回る4144Bcfに達する。場合によっては有効容量を超える可能性が出てきた。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)
天然ガス需要と供給

次に天然ガスの需給を見ていく。表2は6月4日から6月10日までの天然ガス供給の内訳で、生産は日量89.5Bcfと前週の89.3Bcfからほとんど変化がなく横ばいとなっている。カナダからの輸入は微減で、供給量全体では0.2Bcfの減少となった。89.0Bcfという生産量は昨年の同時期から約4%の減少となっている。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は6月4日から6月10日までの天然ガスの需要を部門別に見たもので、総需要量は79.4Bcfと前週に比べて0.5Bcfの増加とほぼ横ばいだった。内訳は、発電用需要が2.8Bcfの増加、工業用が0.3Bcfの減少、住宅用・商業用が0.6Bcfの減少だった。発電用の消費が大きく増加している。輸出ではメキシコ向けのパイプライン輸出が0.4Bcfの増加、LNG輸出は1.2Bcfの減少だった。メキシコの都市封鎖の解除に伴いガスの消費量が増加している。一方でLNGの輸出は低調となり、2017年6月14日の週以来の低い値となった。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
世界の天然ガス需要

IEAが前週発表したレポートによると、今年の天然ガス消費量は新型コロナウイルスによる需要減少で前年比4%の落ち込みとなる。毎年の需要増加ペースも従来予想の年1.8%増加に対して1.5%に減速する見込み。LNGの輸出に関しても既に欧州では貯蔵容量の75%を超え、中国の貯蔵容量も一杯といわれている他、日本や韓国といった消費国の需要が下向く中、LNG貨物のキャンセルや延期が発生している。

採掘用リグ稼働数

図2はベーカー・ヒューズ社が発表している原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)で、13週間連続でリグ数の減少が続いている。稼働中リグ数は前週比17基の減少の284基となり、1987年の同社の統計開始以来の最低値を今週も更新している。

図2 天然ガス採掘用稼働リグ数(出展元 EIA)

表4は原油と天然ガスの稼働中リグ数の前週からの変化を見たもので、6月2日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が16基減った206基(76%減)、天然ガス採掘用が1基減少して76基となった。原油採掘用リグが未だ2桁減少している一方で、天然ガス採掘用リグ数の減少スピードは鈍っている。
(補足)6月11日ベーカ・ヒューズ社発表の最新リグ数は原油が199基(前週比7基減)、天然ガスが78基(前週比2期増)と天然ガスのリグ数が増加に転じている。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数及び前週比と前年比(出展元 EIA)
今後の見通し

最新の天然ガスの在庫統計は予想の93Bcfと一致した。木曜日には生産量の減少見通しから上昇したが、金曜日にはLNG輸出の減少懸念から天然ガス相場は下落した。ベーカー・ヒューズ社が発表するリグ数では、天然ガスの採掘用のリグ数は前週比1基減、原油採掘用リグ数は前週比16基減となり、天然ガス用の減少スピードが鈍化している。需要面では、発電用需要とメキシコへの輸出を中心に大きな増加が見られたが、工業用需要や住宅・商業用需要、LNG輸出は引き続き減少している。

前週は週を通して天然ガスの生産量の減少見通しが下値を支えて、LNG輸出の減少見通しが上値を抑える展開となった。LNG輸出は欧州とアジアが主な市場だが、どちらも需要の減少と在庫の積み上がりにより、貨物がキャンセルされる状態が続いている。来年以降の需要回復のカギは中国とインドの今後の需要増加となるが、新型コロナウイルスの第2波懸念と合わせて、大量の輸入が行われるかどうかは全くの不透明な状況だと考えられる。

アメリカの国内需要が低迷する中で、生産量の削減にはブレーキが掛かっている。アメリカでも大量の在庫が積み上がる見通しが示されている。本格的に世界需要が回復しない限り、価格が低迷する状況が続くが、在庫が溢れるような場合によっては大きく値下がりする可能性があると考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。