エネルギー速報:EIA週間原油統計とシェールオイル生産再開について(つらつら分析6月18日)

 

ダイジェスト
EIA週間統計の総評

今週発表のEIA週間原油統計で発表された在庫情報は次の通り。原油在庫は121万バレル増加した。製油所の稼働率が73.8%と前週より0.7%上向いた。ガソリンの在庫は166万バレル減少、留出油の在庫が135万バレル減少、オクラホマ州クッシング在庫は260万バレルの減少となった。
今週も製油所の稼働率が上がり原油需要が増加したが供給が上回り、原油在庫が史上最高量を今週も更新している。事前予想に反してガソリン在庫、留出油在庫がいずれも減少となったことで原油相場はEIAの週報の発表直後に一時上昇した。その後は原油在庫の増加を嫌気して下落している。今日も原油需要と石油製品の需要を中心にEIAの報告の内容を確認していきたい。

原油と石油製品の在庫

原油在庫は増加し在庫総量は5億3928万バレルと史上最高値を更新している。事前予想に反して、ガソリン在庫、留出油在庫は今週減少となった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は260万バレルの減少と6週間連続の減少となった。

API統計 EIA統計  EIA統計前週 EIA統計2週前 EIA統計3週前 
原油(万バレル)386増121増572増207減792増
ガソリン(万バレル)427増166減86増279増72減
留出油(万バレル)92増135減156増993増549増
クッシング在庫(万バレル)329減260減227減173減339減
表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれ図は今年の在庫推移(実線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。どの油種でも過去5年の在庫レンジの上限を超えた在庫水準が続いている。

図1 原油在庫推移(出展元 EIA)
図2 ガソリン在庫推移(出展元 EIA)
図3 留出油在庫推移(出展元 EIA)
原油生産と輸出入、戦略備蓄

原油生産量は日量1050万バレルと前週の日量1110万バレルから60万バレル減少した。最盛期(1310万バレル)に比べて260万バレルの生産減となったが、これはメキシコ湾岸に接近した熱帯暴風雨クリストバルの影響がメキシコ湾岸での原油生産に影響を与えたためと推定される。今週は1日当たりの輸出が3万バレルの減少となったのに対して、輸入は22万バレルの減少となったが、輸入量は依然として高止まりしている。内訳はカナダ産308万バレル、サウジアラビア産140万バレル、メキシコ産51万バレル、コロンビア産56万バレル等で、前週多かったイラク産は5万バレルへ激減している。戦略備蓄への積み増し量は24万バレルと前週に比べて減少した。

原油生産と輸出入今週   前週   2週前  3週前  4週平均  前年同時期  
原油生産(万バレル/日)105011101120114011051220
戦略備蓄増加(万バレル/日)2431573036
原油輸入(万バレル/日)664686617720672746
原油輸出(万バレル/日)246243279317271342
表2 原油生産と戦略備蓄、輸出入 (出展元 EIA)
石油製品生産量と製油所稼働率

製油所への原油投入量は前週と比べて日量約12万バレル増加した。製油所稼働率は0.8%上昇したが、今週も平年より約20%低く低迷が続く。ガソリン生産量は日量約22万バレル増加した。ジェット燃料の生産が13万バレル増加し、生産量の微増が続いているが、なお前年度生産量の半分以下の水準が続く。留出油の生産量は27万バレルの減少となった。前年と比べると約90%の水準が続いている。

製油所稼働率等今週  前週  2週前  3週前  前年度同時期   
原油投入量(万バレル/日)13601348133012991726
製油所稼働率(%)73.873.171.871.393.9
ガソリン生産(万バレル/日)  8358137777171042
ジェット燃料生産(万バレル/日)74615049183
留出油生産(万バレル/日)   449476471478537
表3 石油製品生産量 (出展元 EIA)
石油製品供給(需要)

石油製品の供給(需要)ではガソリン供給が日量で3万バレル減少とほぼ横ばい。ジェット燃料の供給は7万バレル増加したが、例年の4割弱の水準が続いている。留出油の供給は25万バレルの増加、週では約180万バレルの供給増加となった。
前週と比べてガソリンの生産量が22万バレル増加し、供給量は3万バレルの減少と前週と同程度となったが、今週のガソリン輸出が前週比で、19万バレルの増加となったことが在庫の減少につながった。留出油の生産量が27万バレル減少するいっぽうで、今週の供給量が約25万バレル以上増加したことで在庫がやや減少した。ジェット燃料の生産と供給は例年の半分にも達しない低迷が続いている。そのため、石油製品全体の供給量は日量1729万バレルと、前週の1757万バレルに比べて約28万バレル減少しており、原油需要は順調に増加しているとは言えない。

今週 今週  前週 2週前  3週前  前年同時期  
ガソリン供給(万バレル/日)787790754725992
ジェット燃料供給(万バレル/日)78713886167
留出油供給(万バレル/日)355330271326406
表4 石油製品供給(需要)量 (出展元 EIA)
石油製品価格

表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となる。原油価格は今週は7週ぶりの下落となった。ガソリン受渡価格が下落となった一方で、ディーゼル燃料の受渡価格は上昇を続けている。ガソリンは供給量が減ったのにも関わらず、価格が下がったことで、卸売需要に陰りが見られる。ディーゼル燃料は供給量が増えているため、スタンドなどの需要が増加したと考えられる。

スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し)6/12   6/5   5/29   5/22   5/15   前年同時期  
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)1.0561.1310.9480.9590.8751.677
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)1.1021.0990.9550.9400.8821.819
原油(ドル/バレル)36.2439.4935.5733.4929.4453.95
表5 石油製品受渡価格 (出展元 EIA)

表6は石油製品の小売価格の全国平均となる。ガソリン価格、ディーゼル燃料の価格は上昇を続けている。製油所からの供給が増加と卸売価格の上昇、小売価格が上昇が見られるディーゼル燃料需要の増加は続いていると考えられる。

小売価格6/1   6/8   6/1   5/25  前年同時期    
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)2.0982.0361.9741.9602.732
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン)   2.4952.4342.3802.3633.134
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン)2.7452.6862.6382.6183.383
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン)2.4032.3962.3662.3903.105
表6 石油製品全国価格 (出展元 EIA)
DUCの数の分布推移

図4はリスタッド・エネルギ―社によるDUC(採掘済み未仕上げ井戸)の数の推移だが、新型コロナウイルスの影響を受けて2月以降、生産中井戸(薄緑)とDUC(濃い緑)の合計は減少している。これは報道された通り、シェール業者の設備投資の削減を意味しているが、内情は想像とは異なっている。生産中の井戸は2月から5月にかけて半減しているが、DUCの数は逆に750増加している。また、この期間のアメリカの産油量は200万バレル減少したが、半減まではしていない。これは生産中の井戸を早期に掘りつくすことで生産を維持しつつ費用を削減、設備投資を井戸の掘削に回したと考えられる。DUC数(生産余力)は維持されているため、早期に油田の生産再開・拡大を行うことが可能となると思われる。

図4 掘削積み井戸の数(出展元 リスタッド・エネルギー)
今後の見通し

今週のEIA統計では、原油生産が熱帯暴風雨の接近で日量60万バレルの大幅減少となり、製油所の稼働率も上昇して原油処理量が伸びたが、原油輸入量が高止まりしており、原油在庫が増加した。ガソリンについては今週生産が増大し、供給量は横ばいだったが、輸出量の急増によりガソリン在庫は減少した。留出油については生産量は減少し、供給量が増えたため在庫が取り崩された。石油製品全体では出荷量が前週の日量1750万バレルから1729万バレルへ減少したこともあり、今週も在庫が積み上がり、前週に比べて約1000万バレル多い20億9845万バレルと在庫水準の記録更新が続いている。
需要面ではディーゼル燃料の供給量が増加し、卸売価格と小売価格の双方が上昇したことで、ディーゼル燃料の需要は増加していると考えられる。ガソリンは小売価格は上昇しているが、卸売価格が減少したことで、スタンドなどの購入が一段落したと考えられる。貨物輸送需要の多いディーゼル燃料の需要拡大は経済が上向き貨物が増加していることを示しているが、この傾向が来週以降も続くのかに特に注目したい。

原油価格が1バレル40ドル付近まで回復したことを受けて、アメリカのシェール業者の一部は採算がとれるようになった。このためシェールオイルの生産再開に向けた動きが加速しており、6月中には日量50万バレルの生産が再開される見通し。更に6月以降も生産の再開が予定されている。最も生産コストの安いパーミヤン盆地だけでなく、バッケンなどより生産コストの高い地域でも生産再開の動きが見られているという。図4は設備投資が既存井戸の掘りつくしによって削減し、油田の生産余力が温存されている(増強されている)ことを意味している。
OPECプラス等の減産によって原油価格が上昇してきたが、今回のアメリカでの生産再開の動きは減産や原油価格に影響を与える可能性出てきている。昨日紹介したIEAのレポートでも、これまでのEIAのレポートでも、アメリカの減産傾向が来年まで続くとの仮定で議論されてきたが、仮にアメリカの産油量が増加することになれば、新型コロナウイルスの第2波が懸念され、需要回復に黄色信号が灯っている中で、5月以降上昇を続けてきた原油価格は今後、大きく下落する可能性が高まったと考えられる。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。