エネルギー速報:EIA週間原油統計(つらつら分析6月25日)

 

ダイジェスト
EIA週間統計の総評

今週発表のEIA週間原油統計では。原油在庫が144万バレル増加した。原油在庫量は過去最大を更新している。製油所の稼働率は74.6%と前週より更に0.8%上向いた。ガソリンの在庫は167万バレル減少、留出油の在庫が25万バレル増加、オクラホマ州クッシング在庫は99万バレルの減少だった。
今週も製油所の稼働率が上がり、原油需要は増加したが供給が上回り続けており、原油在庫は史上最高量を今週も更新した。石油製品ではガソリン在庫が減少、留出油増加とちぐはぐな結果となった。原油相場は新型コロナウイルスの感染拡大懸念が強かったが、原油在庫が史上最大を更新し続けていることを嫌気して弱材料の1つとなった。今日も原油需要と石油製品の需要を中心にEIAの報告の内容を確認していきたい。

原油と石油製品の在庫

原油在庫が今週も増加したため、在庫総量は5億4070万バレルと史上最高値を更新した。ガソリン在庫は前週とほぼ同量減少し、留出油在庫は今週微増となった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は99万バレルの減少と7週間連続の減少となったが、減少幅が半分以下に減少している。

API統計 EIA統計  EIA統計前週 EIA統計2週前 EIA統計3週前 
原油(万バレル)175増144増121増572増207減
ガソリン(万バレル)33減167減166減86増279増
留出油(万バレル)386減25増135減156増993増
クッシング在庫(万バレル)261減99減260減227減173減
表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれ図は今年の在庫推移(実線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。どの油種でも大きな変動はなく過去5年の在庫レンジの上限を超えた在庫水準が続いている。

図1 原油在庫推移(出展元 EIA)
図2 ガソリン在庫推移(出展元 EIA)
図3 留出油在庫推移(出展元 EIA)
原油生産と輸出入、戦略備蓄

原油生産量は日量1100万バレルと前週の日量1050万バレルから50万バレル増加した。最盛期(1310万バレル)に比べて210万バレルの生産減に逆戻りしたが、これはメキシコ湾岸に接近した熱帯暴風雨クリストバルの影響による生産減が回復したことが大きい。今週の輸出は59万バレルの増加となったのに対して、輸入は10万バレル減少したが、輸入量は高止まりが続いている。内訳はカナダ産322万バレル、サウジアラビア産138万バレル、メキシコ産75万バレル等で、前週多かったコロンビア産が6万バレルへ減少している。戦略備蓄への積み増し量は31万バレルと前週に比べて減少し、2週間前の水準に戻った。

原油生産と輸出入今週   前週   2週前  3週前  4週平均  前年同時期  
原油生産(万バレル/日)110010501110112011051220
戦略備蓄増加(万バレル/日)3124315736
原油輸入(万バレル/日)654664686617672746
原油輸出(万バレル/日)315246243279271342
表2 原油生産と戦略備蓄、輸出入 (出展元 EIA)
石油製品生産量と製油所稼働率

製油所への原油投入量は製油所の稼働率が0.8%上がったため、日量約24万バレル増加した。依然として平年より約20%低い状況が続いている。ガソリン生産量は日量約44万バレルの増加、ジェット燃料の生産は5万バレル減少、留出油の生産量は7万バレルの増加となった。ガソリン生産は回復基調、ジェット燃料は低迷、留出油は横ばいが続いている。

製油所稼働率等今週  前週  2週前  3週前  前年度同時期   
原油投入量(万バレル/日)13841360134813301733
製油所稼働率(%)74.673.873.171.894.2
ガソリン生産(万バレル/日)  8798358137771051
ジェット燃料生産(万バレル/日)69746150190
留出油生産(万バレル/日)   456449476471530
表3 石油製品生産量 (出展元 EIA)
石油製品供給(需要)

石油製品の供給(需要)ではガソリン供給が日量で37万バレル増加となった。ジェット燃料の供給は2万バレル増加で、例年の4割弱の水準での横ばいの状況が続いている。留出油の供給は9万バレルの減少となった。

石油製品供給今週  前週 2週前  3週前  前年同時期  
ガソリン供給(万バレル/日)860787790754946
ジェット燃料供給(万バレル/日)80787138191
留出油供給(万バレル/日)346355330271396
表4 石油製品供給(需要)量 (出展元 EIA)
石油製品需給

前週と比べて原油の製油所での消費量は増加したが、生産量が熱帯暴風雨による一時的な減少から回復したこと、原油の輸入超過が続いてるため引き続き原油在庫が増加した。石油製品ではガソリンの生産量が44万バレル増加し、供給量が73万バレルの増加と供給が生産を上回っていることが在庫の減少につながった。留出油は生産量が7万バレル増加する一方で、今週の供給量が9万バレルの減少となったことが主因で在庫が増加した。ジェット燃料の生産と供給は例年の半分にも達しない低空飛行が続いている。そのため、石油製品全体の供給量は日量1834万バレルと、前週の1729万バレルに比べて約105万バレル増加しているが、それでも在庫を減少させるには至らなかったため、在庫は約600万バレル増加し史上最大を更新している。

石油製品価格

表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となる。原油価格が上昇している。ガソリン受渡価格、ディーゼル燃料の受渡価格は共に上昇した。ガソリンは供給量が増加しているにも関わらず、卸売価格が上昇したことからスタンドなどでの需要が高まっていると考えられる。ディーゼル燃料は今週供給がやや絞られたが。価格が上昇を続けており、需要の回復がみられる。

スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し)6/19   6/12   6/5   5/29   5/22   前年同時期  
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)1.1981.0561.1310.9480.9591.677
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)1.2101.1021.0990.9550.9401.819
原油(ドル/バレル)39.7236.2439.4935.5733.4953.95
表5 石油製品受渡価格 (出展元 EIA)

表6は石油製品の小売価格の全国平均となる。ガソリン価格、ディーゼル燃料の価格が今週も上昇を続けている。特にガソリンは製油所からの供給が増加し卸売価格・小売価格共に上昇しており、需要が回復していると考えられる。ディーゼルについては卸売への供給量が減少しおり、需要回復とは今週は言えない。

小売価格6/22   6/15   6/8   6/1   5/25  前年同時期    
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)2.1292.0982.0361.9741.9602.732
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン)   2.5212.4952.4342.3802.3633.134
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン)2.7732.7452.6862.6382.6183.383
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン)2.4252.4032.3962.3662.3903.105
表6 石油製品全国価格 (出展元 EIA)
今後の見通し

今週のEIA統計では、原油生産が熱帯暴風雨の接近による回復で増加となった。製油所の稼働率は上昇し続け原油処理量が伸びたが、今週も原油輸入量が高止まりしており、原油在庫は増加した。ガソリンは今週生産量が増大し、供給量が生産以上に増加したため在庫が減少した。ガソリン需要は依然として平年並みを下回ってはいるが回復が続いている。留出油は生産量は増加した一方で、供給量が減少したことが要因で在庫が増加した。石油製品全体では出荷量が前週の日量1729万バレルから1834万バレルへ増加したが、生産量過多・供給些少で今週も在庫が積み上がり、前週に比べて約600万バレル多い21億400万バレルと在庫水準は21億バレルを超え記録更新が続いている。
需要面ではガソリンの供給量が増加したのにも関わらず、卸売価格と小売価格の双方が上昇したことで、ガソリン需要の増加が考えられる。留出油は卸売価格・小売価格がともに上昇したが、供給量が減少している。貨物輸送需要の多いディーゼル燃料の需要増は確認できない。この傾向が来週以降も続くのかに注目したい。

これまでのコラムでも触れてきたが、減産や金融緩和による原油価格の上昇で、アメリカでは生産再開の動きが続いている。加えて、アメリカにおける新型コロナウイルスの第2波が懸念される状況となり、一部の州では一部の旅行者の移動に再度の制限が行われることとなった。原油需要回復には黄色信号が灯っている中で、需要を大きく失う要因となる新型コロナウイルスの第2波がカルフォルニア州やテキサス州、フロリダ州へ襲来している。現在の需要の低迷は在庫を史上最大水準まで増加させている。原油相場はこれまで上昇を続けてきたが、需要減と在庫増、生産増が価格に対するトリプルパンチとなり、暴落する可能性が前週より更に高まったと考えられる。加えて、クッシング在庫の減少スピードに大きくブレーキが掛かっており、日量100万バレルを割り込んだことは、この先の原油相場の懸念材料となるのではないだろうか。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。