エネルギー速報:EIA月例エネルギーレビュー(つらつらコラム6月29日)

初めに

今日は25日に発表されたアメリカのEIA(エネルギー省情報局)の月例エネルギーレビューから原油部分を取り出して4月から5月の都市封鎖前後のデータを中心に見ていこう。

ダイジェスト
原油生産
左:図1 1~5月の原油の生産量、輸出入量、供給量平均比較(出展元 EIA)
右:図2 原油生産量推移(出展元 EIA)

2020年1月から5月にかけての原油生産量、原油を含めた石油製品の総輸出入量(輸入が正の量)、石油製品の供給量の月平均を2019年、2018年と比較したものが図1で、図2が月ごとの生産量の推移をまとめたものとなる。2020年は3月以降に原油価格の下落による減産が行われているが、月平均では直近3年つまり、史上最大生産量を維持している。一方で輸入量は年々減少しており、2019年9月以降、アメリカは原油と石油製品を加えた石油の純輸出国に復帰している。石油製品の供給量は2018年2019年と横ばいとなったが、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大による需要の急減で、例年比で20%の供給が減少した。次に原油の輸出入を見てみよう。

原油輸入量と輸出量
原油輸入量(万バレル/日)原油輸出量(万バレル/日)
2018年5か月平均784.9181.1
2019年5か月平均703.0279.4
2020年5か月平均614.8337.4
2020年1月640.8325.1
2020年2月651.9370.8
2020年3月629.6355.7
2020年4月543.9326.3
2020年5月607.6311.1
表1 原油輸入量と輸出量

表1を見るとシェールオイルの生産が増加するのに伴い、アメリカの原油輸入量は漸減して、代わりに輸出量が増加する傾向が続いている。2020年3月以降輸出入は共に減少したものの、5月に入って輸入のみ急速に回復している。国内需要減少の中でも原油価格が国内価格以下へ下落したことによる海外からの購入が増大していると考えられる。次は製油所への原油投入量と石油製品の生産量について見ていこう。

製油所への原油投入量と石油製品生産量(供給)
左:図3 石油製品生産量、原油投入量の推移(出展元 EIA)
右:図4 石油製品生産量推移(出展元 EIA)

図3に見るように原油の製油所への投入量(Crude Oil Net Inputs)はこれまで、冬に減少し、夏のドライブシーズンに増加するというサイクルを繰り返してきたが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大による需要減に伴い3月から投入量と石油製品の生産量(Total Net Production)が急落した。5月からは持ち直しが始まっているが、平年に比べて20%近く低い水準に留まっている。図4は代表的な石油製品の生産量を見たもので、ガソリン(Motor Gasoline)の生産量が4月の平年比62%を底に都市封鎖が緩和された5月は77%まで持ち直している。ディーゼル燃料(Distillate Fuel)は平年比95%と5%ほどの減少に留まった。最も影響を受けたのがジェット燃料(Jet Fuel)で、4月には平年比36%、5月には28%の大幅減少となった。ジェット燃料だけで一日当たり約130万バレルの需要が未だ失われたままとなっている。重油(Residual Fuel)生産量には大きな変化はない。次に石油製品の供給量を見よう。

石油製品供給量(需要)
左:図5 石油製品供給量(需要)推移(出展元 EIA)
右:図6 1から5月の石油製品供給量平均(出展元 EIA)

図5は各石油製品の供給量の推移を示している。ガソリン(Motor Gasoline)は5月以降生産回復と供給回復が見られる。ディーゼル燃料(Distillate Fuel)は供給の5月に入って増加が見られるが十分ではなく在庫が積み上がりの原因となっている。ジェット燃料(Jet Fuel)の供給量は低迷しており、5月の時点では増加の気配はまだ見られていない。プロパン(Propane)は暖房用に使われるが、冬の終わりとともに減少している。重油(Residual Fuel)は横ばいとなっている。図6は1月から5月の全石油製品の供給量の例年との比較で、2020年は例年と比べて1日当たり約250万バレルの需要が減少している。表2はさらに細かく見たもので、4月には実に例年の4分の1に当たる日約550万バレルの需要減となった。5月に入り回復が見られるが、依然平年比で400万バレル需要が減った状態となっている。次に在庫量について見ていこう。

石油製品供給量(万バレル/日)
2018年5か月平均2026.6
2019年5か月平均2024.4
2020年5か月平均1779.5
2020年1月1990.5
2020年2月1983.9
2020年3月1828.4
2020年4月1473.3
2020年5月1624.8
表2 石油製品供給量(需要)
原油在庫と石油製品在庫
左:図7 原油と石油製品の在庫量推移(出展元 EIA)
右:図8 石油製品の品目別在庫推移(出展元 EIA)

図7は原油と石油製品の在庫量の変化を見たもので、2020年3月より急増して原油と石油製品全体を合わせた在庫量(Total)は21億473万バレルに達している。図8は品目別の在庫変化を見たもので、ガソリン(Motor Gasoline)在庫は生産に回復がみられた5月でも微増にとどまり、ある程度需要が回復していることを示している。ディーゼル燃料(Distillate Fuel)と重油(Residual Fuel)は生産量に大きな変化はないが在庫が増加しており、船やトラックといった物流需要が回復していないことがわかる。ジェット燃料(Jet Fuel)も生産減が続いているのに対して在庫が横ばいであり、航空需要には回復が見られない。

今後の見通し

2020年3月から行われた都市封鎖の影響で、アメリカの石油製品需要は約25%減少している。特に航空需要の激減によりジェット燃料の需要は約75%減少した。5月末の行楽シーズンの開始に合わせて都市封鎖が順次解除されたが、週の報告を見る限りは緩やかな回復となり、6月末時点でも原油・石油製品の在庫の積み上がりが続いている。加えて6月下旬からアメリカ各地で新型コロナウイルスの感染が再度拡大しており、先週末には新規感染者数が過去最大を更新した。検査体制の整備による感染確認数の増加はあるにしても、確実に患者が増加しており、テキサス州やフロリダ州、カルフォルニア州では再度の規制強化が始まった。感染症の専門家は封鎖を訴えているが、現状では再度の都市封鎖の実施はいまだ否定されている。ただし、患者数の急増が拡大すれば、再度の都市封鎖に追い込まれると考えられる。

新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に需要が冷え込む中、原油価格の上昇によりアメリカの原油生産量の増加が見込まれる。ただし、需要がない場合、これらの原油は在庫に回ると考えられるが、既にアメリカ全体で、11億9443万バレルの在庫がある。内、戦略備蓄は容量7億9700万バレルの内、82.02%に当たる6億5372万バレルが備蓄されている。民間備蓄は戦略備蓄と異なり、タンカー備蓄等の手段もあるために上限の想定は難しいが、EIAに届け出済みの原油タンク容量は5億8600万で、既に92.27%に当たる5億4070万バレルの在庫が存在する。アメリカ全体のタンク容量に対する在庫率は86.36%となる。

最後に、これまで200万バレル以上の減少を続けていた、オクラホマ州クッシングの原油在庫の減少ペースが最新のデータでは99万バレルと鈍化しており、4月前と同様に需要が鈍化しているのではないかと考えている。今週のEIAの週間統計に注目したい。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。