エネルギー速報:OPECの6月総会を巡る綱引きその2(つらつらコラム6月3日)

総会の前倒し見通し

先月28日にOPECの6月総会を巡る状況についてのコラムを書いたが、今週に入り、総会の繰り上げが行われる見通しとなった。また、4月の合意に基づく減産期間の変更が行われる見通しとなっている。まず、もう一度4月に決定した減産の枠組みについて振り返っておきたい。

減産枠組み

現在行われているOPECプラスの減産案は、OPECプラス全体で6月まで日量970万バレル、7月からは減産量を減らして770万バレルで12月まで減産を続ける。翌年からは580万バレルに減らして16か月間減産を行うというもので、OPECプラス外の減産についてもまとめると、

となる。減産率は23%に達して、サウジアラビアとロシアは日量850万バレルまで生産量を落とすことが求められた。
上記とは別にサウジアラビアは日量100万バレル、UAEは日量10万バレル、クウェートは日量8万バレルと自主的な追加減産を今月から当面の間行う予定とされる。

先月末の時点で、ロシアは自国の減産目標の達成と、自主的な減産の積み上げは行わない方針を発表していた。同時にOPECプラス外でおよそ400万バレルの減産が行われていることで、6月から7月には需給が均衡すると見通しと、7月以降は合意に基づいてロシアは減産規模の縮小を行うとの方針も明らかにされた。
今月に入ると、970万バレルの減産期間の延長がOPECプラスとロシアの間で協議され、昨日の夜に7月の減産量を970万バレルまで引き上げることが、合意されたと報道されている。別な報道では8月も続ける可能性があるといわれている。

サウジアラビアとクウェート、UAEの狙いは減産量を増やすことで、財政均衡レベルまで原油価格を上げることにあると思われる。ここで資料を元に現在の原油価格と、各国の財政均衡レベルを振り返っておきたい。

図1 財政均衡価格(IMF調べ、出展元 日本経済新聞)

IMF調べによると、財政均衡に必要な原油価格は北海ブレント原油基準でサウジアラビアが76.1ドル、UAEは69.1ドル、クウェートは61.1ドルとされている。今月初め時点の30ドル台では財政赤字となる価格であることがわかる。3国は原油価格を吊り上げるために減産幅の積み増しを行いたいとの思惑があり、是が非でも今回のOPEC総会で7月以降の減産幅を維持しようと協議を重ねていると考えられる。昨日の合意を受けて、今日の時点で北海ブレント原油先物は3か月ぶりに40.1ドルまで上昇しており、成果があった形となる。

今後の見通し

昨日、OPECプラスの7月の減産幅は、6月から200万バレル減らす予定であったのを取りやめ、引き続き7月も970万バレルの減産幅とすることで合意したと報道された。これにより原油価格は昨日から上昇している。中東の産油国は更に8月も減産幅を970万バレルへ引き上げることを狙っているが、ロシアの採算ライン(北海ブレントで約30ドル)はすでに満たされており、ロシアにとっては減産を行うメリットが減少しているため、8月も減算幅引き上げに合意するのか、更に9月以降も続く可能性があるのかどうかは全くの未知数となっている。
ただ、仮に970万バレルでの減産が続き、需要と供給が均衡したと仮定しても、今年4月までに積み上がった原油在庫は10億バレルに達しており、全てを使うのに100日が必要となる。加えて、報道される需給の均衡の時期は、先月のGSのレポートでは5月末から6月、先月末のロシアのエネルギー相の会見では6月から7月と、需要回復が順調に後ろへずれており、実際にいつ需要が均衡するのかが不透明となった。
また、昨日報道されたところでは、原油価格上昇により、アメリカの複数のシェール業者(すでに公表しているのはバースリー・エナジー、EOGリソーシズ)が、生産を再開する方針であることが明らかになった。これらのシェール業者は新規の井戸の掘削は続けており、いつでも生産再開できる状態を続けており、価格の回復により今月から生産を再開する。コンサルティング会社ライスタッド・エナジーによると、アメリカの6月の減産量は当初165万バレルと推定されていたが、シェールオイルの生産再開で130万バレル規模まで縮小する見込み。今のところ、再開は減産分のごく一部だが、生産再開が続けばOPECプラスの減産効果は損なわれることが確実となる。
一方で、新型コロナウイルスの流行は全く収まっておらず、感染者数は現在途上国を中心に増加している。先進国は回復途上、インドをはじめとした途上国の原油需要の回復は遠い。また仮に第2波が先進国を襲い、感染者数が急増することになれば、4月のように原油価格が大幅下落する可能性が残っている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。