エネルギー速報:EIA原油統計とOPECプラス会合の行方(つらつら分析6月4日)

 

EIA週間統計の総評とOPECプラス会合開催延期

今週発表のEIA週間原油統計でも、引き続き原油需要の改善が進むかが注目された。発表された在庫情報は次の通り。原油在庫は207万バレル減少、製油所の稼働率が71.8%と前週より上向いた。ガソリンの在庫は279万バレル増加、留出油の在庫は大幅増となる993万バレルの増加、オクラホマ州クッシング在庫は173万バレルの減少となった。
今週は原油在庫が再び減少に転じ、製油所の稼働率が上がったことは原油需要の増加を示しているが、ガソリン在庫が増加となり、原油需要が今後回復するかが不透明となったことで、原油相場はEIAの週報の発表直後に一時下押しした。今日は、実際に原油需要と石油製品の需要を中心にEIAの報告の内容を確認していきたい。
一方で、一昨日には6月4日開催の見通しと報じられたOPECプラスの会合は、前日になって5月からの協調減産の順守率が議論となったことで、4日開催はないと報じられるなど、開催情報が錯綜している。確実なことはサウジアラビアとロシアが、現状の日量970万バレルの減産を7月も継続(元々の計画では7月は日量770万バレル)、7月以降の減産量は毎月協議を行うことで合意したことで、これを受けて昨夜原油相場は上昇した。

原油と石油製品の在庫

原油在庫は再び減少に転じた。ガソリン在庫と留出油在庫は今週はともに増加となった。クッシングの在庫173万の減少とやや減少スピードが落ちている。

API統計 EIA統計 EIA統計前週 EIA統計2週前 EIA統計3週
原油(万バレル)48減207減792増498減74減
ガソリン(万バレル)171増279増72減283増351減
留出油(万バレル)592増993増549増383増351増
クッシング在庫(万バレル)222減173減339減558減300減
表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となり、それぞれの油種の今年の在庫推移(実線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。どの油種も大幅減にはならなかったため過去5年の在庫レンジの上限を超えた在庫水準が続いている。ただし、例年は夏の在庫減少シーズンに入っているため、留出油などでは大きな今年の在庫は例年と比べて大きな乖離が生じている。

図1 原油在庫推移(出展元 EIA)
図2 ガソリン在庫推移(出展元 EIA)
図3 留出油在庫推移(出展元 EIA)
原油生産と輸出入、戦略備蓄

原油生産量は日量1120万バレルと前週の日量1140万バレルから20万バレル減少した。最盛期(1310万バレル)に比べて190万バレル減となり、減産が続いている。今週は1日当たりの輸出が38万バレルの減少となったのに対して、輸入は103万バレルの大幅減少となった。前週と比較し、カナダ産、メキシコ産の原油輸入が減少する中、サウジアラビア産の輸入が横ばいとなっている。戦略備蓄への積み増し量が57万バレルと前週に比べてほぼ倍増している。

原油生産と輸出入今週  前週  2週前  3週前  4週平均  前年同時期  
原油生産(万バレル/日)112011401150116011421225
戦略備蓄増加(万バレル/日)57302627
原油輸入(万バレル/日)617720519539599733
原油輸出(万バレル/日)279317324352318322
表2 原油生産と戦略備蓄、輸出入 (出展元 EIA)
石油製品生産量と製油所稼働率

製油所の稼働率の上昇に応じて、製油所への原油投入量は前週と比べて日量約31万バレル増加した。製油所稼働率は平年より約20%低い状態が続いている。製油所での処理量の増加分はガソリン生産に振り向けられたと考えられ、前週よりガソリン生産量は日量約60万バレル増加した。ジェット燃料の生産はほぼ横ばいで、生産量の微増が続いているが前年度生産量の3分の1にも達していない。留出油の生産量は7万バレルの微減となり、引き続き生産量は横ばいとなっており、前年と比べると約90%の水準となっている。

製油所稼働率等今週  前週  2週前  3週前  前年度同時期   
原油投入量(万バレル/日)13301299129012381674
製油所稼働率(%)71.871.369.467.991.8
ガソリン生産(万バレル/日)  7777177167491004
ジェット燃料生産(万バレル/日)50494544179
留出油生産(万バレル/日)   471478480489540
表3 石油製品生産量 (出展元 EIA)
石油製品供給(需要)

石油製品の供給(需要)ではガソリン供給が日量で29万バレルの増加、週では約280万バレルの供給が増加した。ジェット燃料の供給は48万バレル減少と今週は半減し、例年の3割弱の水準となっている。留出油の供給は55万バレルの減少、週では約390万バレルの供給減となった。
今週は製油所でガソリンの生産量が増加したほどには供給量が伸びず、ガソリンは在庫増加となった。留出油の生産量は引き続き、横ばいが続いているが、今週の供給量が50万バレル以上減ったことで、在庫の増加速度が跳ね上がっている。ジェット燃料の生産と供給は例年の3割程度と低迷が続いている。そのため、石油製品全体の供給量は日量1507万バレルとなり、前週の1595万バレルに比べて約90万バレル減少しており、原油消費量の増加ペース以上の速さで在庫が積み上がっている。

今週 前週 2週前  3週前  前年同時期  
ガソリン供給(万バレル/日)754725679739944
ジェット燃料供給(万バレル/日)38866335181
留出油供給(万バレル/日)271326366381338
表4 石油製品供給(需要)量 (出展元 EIA)
石油製品価格

表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となる。原油価格は今週も上昇し5週連続の上昇となった。ガソリン受渡価格(価格)は下落、ディーゼル燃料の受渡価格は上昇している。ガソリンは供給量も増えたための下落、ディーゼル燃料は供給量が大きく減ったための上昇と考えられる。

スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し)5/29  5/22  5/15  5/8  前年同時期  
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)0.9480.9590.8750.8771.809
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)0.9550.9400.8820.8891.836
原油(ドル/バレル)35.5733.4929.4424.7353.49
表5 石油製品受渡価格 (出展元 EIA)

更に表6は石油製品の小売価格の全国平均となる。今週もガソリン価格の上昇が続いている。ディーゼル燃料の価格は下落に転じ、1か月間で最安となった。ガソリンについては製油所からの供給が増加し卸売の価格が下落しているため、小売価格の上昇はガソリンの需要増加が起きているためと考えられる。ディーゼル燃料については卸売価格は卸売需要の大幅な減少のためと考えられ、加えて小売価格がここ1ヶ月で最安となったことから、需要がほとんど増えていないと考えられる。

小売価格6/1   5/25  5/18  5/11   前年同時期    
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)1.9741.9601.8781.8512.807
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン)2.3802.3632.2862.2573.194
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン)2.6382.6182.5532.5193.447
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン)2.3662.3902.3862.3943.136
表6 石油製品全国価格 (出展元 EIA)

今後の見通し

今週のEIA統計では、前週と比べて輸入が700万バレル/週と大幅に減少したことで、前週増加した原油在庫は今週減少に転じた。また、製油所の稼働率の上昇で原油処理量が伸びており、その分、ガソリン生産が増大した。ただし、ガソリン供給量がそれほど伸びなかったため、ガソリン在庫は加に転じている。留出油については生産量は微減となったが、供給量が400万バレル/週と大幅に減ったため、在庫が大きく積み上がった。
また、需要面ではガソリンの供給量が増加した以外は、石油製品の供給量は低調で、需要回復には程遠い状態が続いている。前週に続いて石油精製物の全体の供給量が減少しており、原油を精製しても使われずに在庫が積み上がる状態となっている。個々の石油製品では、ガソリンのみは供給増にもかからず、小売価格が上昇したことから需要増加が推定される。一方で、ディーゼル燃料は供給が減ったにも関わらず、価格上昇が見られなかった。このためディーゼル燃料の需要は今週も減少していると思われ、このことは引き続きトラック輸送量が減少していることを意味していると考えられる。コロナウイルスによる都市封鎖の緩和以降に株価・原油の上昇が続いているが、その実、アメリカの原油需要が増加したとは言えない状況が続いており、特に留出油の消費が上がってこない限りはアメリカの実体経済の回復は遠いのではないだろう。

OPECプラスでは7月の減産量を従来通りの770万バレルから現行の970万バレルまで引き上げることを計画している。ただし、減産の不正を巡っての対立からOPECプラスの会合がいつ開かれるかが不透明な状態が続いていいる。ただし、現状の970万バレル減産が7月も続くことは確実されており、原油相場の下支えとなると考えらるため続報が待たれる。
また、メキシコ湾岸に熱帯暴風雨が接近しており、BPなど各社は進路上にある製油所の閉鎖を発表している。大きな被害が出ることは考えにくいが、天気予報にも注意したい。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。