エネルギー速報:天然ガス在庫統計(つらつらコラム6月5日)

 

週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

木曜日にEIAが発表した天然ガス在庫量(5月23日から29日までの在庫増減)は市場予想の前週比110Bcf増に対して、予想を下回る102Bcfの増加となった。在庫が予想ほど積み上がらなかったことで、発表直後には急伸したが、生産量の増加見通しやLNGの輸出減少見通しが懸念材料となって、天然ガス価格は急落した。今日は最新のEIAのレポートから生産量と需要を中心に見ていきたい。

まず天然ガスの在庫量と過去5年平均を比較する。図1は5月29日時点の天然ガス在庫量と5年平均の中央値(黒線)および在庫量の最小値と最大値の幅(灰色)を示している。在庫量は過去5年の最大値へ次第に近づいている。
次に地域別の天然ガス在庫を見ていこう。表1はアメリカの地域別在庫の内訳で全ての地域で在庫が増加している。現在の在庫量は前年度に比べて39%、5年平均と比べて18%多い値となっている。先週と比べて平年との在庫差が縮小している。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)
天然ガス需要と供給

次に天然ガスの需給を見ていく。表2は5月28日から6月3日までの天然ガス供給の内訳で、生産は日量89.3Bcfと前週の89.2Bcfからほとんど変化がなかった。これまで、じりじりと生産量が減少していたが、減少にブレーキが掛かった。カナダからの輸入が微増だったため、供給量全体では0.8bcfの増加となった。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は5月28日から6月3日までの天然ガスの需要を部門別に見たもので、総需要量は79.0Bcfと前週に比べて2.0Bcfの増加となった。内訳は、発電用需要が3.5Bcfの増加、工業用が0.2Bcfの増加、住宅用・商業用が1.1Bcfの減少だった。需要減少にブレーキが掛かっている。輸出ではメキシコ向けのパイプライン輸出が0.3Bcf、LNG輸出は0.7Bcfの減少だった。EIAのレポートによると、発電コストの高い原子力発電所が停止し、代わりに天然ガス発電所を運転したため発電用需要が上昇したと報告されている。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2はベーカー・ヒューズ社が発表している過去13年分の原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)で、12週間連続でリグ数の減少が続いている。稼働中リグ数は301基と前週比15基の減少となり、1987年の同社の統計開始以来3週連続で最低値を更新している。

図2 天然ガス採掘用稼働リグ数(出展元 EIA)

表4は稼働中リグ数を原油と天然ガスに分けて前週からの変化を見たもので、5月26日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が15基減った222基(約6%減)、天然ガス採掘用が2基減少して77基となった。原油採掘用リグは未だ減り続けているが、天然ガス採掘用リグ数の減少スピードは鈍っている。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数及び前週比と前年比(出展元 EIA)
今後の見通し

今週の天然ガスの在庫統計は予想の110Bcfを下回る102Bcfの増加となり、一時的に天然ガス相場は上昇した。その後、天然ガス生産が増加していることやLNG輸出の減少懸念から天然ガス相場は下落した。
ベーカー・ヒューズ社が発表するリグ数では、天然ガスの採掘用のリグ数は前週比2基減、原油採掘用リグ数は前週比15基減となり、減少スピードが更に鈍化している。生産量もこれまで大きな減少が続いていたが、反転しそうで底を打ったとみられる。
需要面では、新型コロナウイルス対策の都市封鎖解除の影響から発電量が増えたことに加えて、発電コストの高い原子力から安い天然ガス発電へのシフトにより、天然ガスの発電用需要を中心に大きな増加が見られた。LNG輸出は前週に引き続いて減少している。欧州での天然ガス価格の下落には歯止めがかかったが、在庫量は今日の時点で73%と引き続き上昇しており、LNG輸出の回復はしばらく見込めなさそうだ。
今週は原油価格が欧米の経済再開による需要回復期待と、OPECプラスによる減産幅の延長期待から上昇した。明日に予定されているOPECプラスの会合では7月の減産幅を6月と同量の日量970万バレルを維持することが正式決定する見込みで、原油価格が更に上昇することが予想される。原油価格の回復に伴い、3月以降油井を閉鎖し生産量を減らしていたアメリカのシェール業者が生産再開準備を始めており、副産物として生産される天然ガスの量も今後増加することが見込まれる。このため、従来筆者が考えていたよりも更に天然ガス価格の下落が早まり、低迷が長期化するのではないかと考えている。


図3のように来週中頃にかけてメキシコ湾岸に熱帯低気圧クリストバルが熱帯暴風雨へ発達しながら接近する見込みで、既に製油所などの閉鎖が発表されている。暴風雨による生産減予想を受けて原油と天然ガスは価格は下支えされると考えられる。天気予報にも注意したい。

図3 熱帯低気圧クリストバルの進路予想(出展元 NOAA)
*時間は東部標準時間(EDT)

※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。