エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の在庫見通し(つらつらコラム7月10日)

ダイジェスト
週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

昨日、EIAが発表した天然ガス在庫量(6月27日から7月3日までの在庫増減)は56Bcf増加で、市場予想の57Bcf増、前週比65Bcfと比較して増加幅が減少し、平年の63Bcf増も下回った。天然ガス市場は在庫統計には反応薄で、アメリカ国内の新型コロナウイルスの感染拡大で今後のガス需要が減退するとの懸念が強まって大きく下落している。

7月3日時点の天然ガスの在庫量は平年同時期に比べ16.9%多くなっている。今週は在庫の増加スピードが前週よりさらに減速しており、増加量は56Bcfと平年の在庫増加量である63Bcfを下回った。今日も需給の動向について見ていきたい。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)

地域別の天然ガス在庫の増減を見てみよう。表1はアメリカの地域別在庫の内訳で南部の沿岸部での在庫減少が続いている。現在の在庫量は平年と比べて454Bcf多い。在庫積み上げのペースが減速しており、今後の増加が平年並みの週63Bcf増だとすると10月31日に在庫は4177Bcfとなる。この量はアメリカの天然ガス貯蔵施設の設計容量(4693Bcf)の89%、有効容量(4261Bcf)の98%に相当し、依然として高い。

天然ガス需要と供給

次に天然ガスの需給を見てみよう。表2は7月2日から7月8日までの天然ガス供給の内訳で、今週の生産量は日量89.5Bcfと前週の88.3Bcfに比べて1.2Bcfの増加と今週は比較的大きな生産増加となった。また、カナダからの輸入が今週も0.1Bcfの微増だったことで、供給量全体は1.3Bcfの増加となった。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は表2と同じく7月2日から7月8日までの部門別の天然ガスの需要で、総需要量は83.4Bcfと前週に比べて1.2Bcfの増加となった。発電用需要が2.6Bcfの増加となり全体の需要増を牽引しているが、その他の工業用は0.2Bcfの減少、住宅用・商業用は横ばいだった。輸出需要はメキシコ向けのパイプライン輸出が0.3Bcfの減少、LNG輸出は1.3Bcfの大幅な減少となり、特にLNGの輸出は前年実績の半分、年初の3分の1まで減少している。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2は6月30時点までのベーカー・ヒューズ社が発表した原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)を見たもので、およそ4か月に渡ってリグ数の減少が続いており、原油採掘用稼働リグ数は前週比3基減少の185基となり、1987年以来の最低値を今週も更新しているが、減少スピードが低下し、減少数がほぼ横ばいになってきた。

図2 天然ガス採掘用稼働リグ数(出展元 EIA)

表4は原油と天然ガスの稼働中リグ数の前週からの変化を見たもので、6月30日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が3基減った185基、天然ガス採掘用が1基増加して76基、その他(表には未記入)2基の合計253基となり、天然ガスのリグ数が3週間ぶりに増加に転じた。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数及び前週比と前年比(出展元 EIA)
州ごとの天然ガス消費量

図3は2018年の調査に基づいたアメリカの州ごとの天然ガス消費量の内の上位5州と下位5州を示している。上位の州は人口が多いのに加えて、天然ガスを消費する石油産業と化学産業が集中している。7月10日時点でこれら上位5州(テキサス、カルフォルニア、ルイジアナ、フロリダ、ペンシルベニア)のいずれでも新型コロナウイルスの感染拡大が進んでおり、特に、テキサス、フロリダ、カルフォルニアの3州では経済活動の再制限が行われる見込みで、今後、天然ガスの需要低迷として現れてくると考えられる。

図3 アメリカの州ごとの天然ガス消費量の内の上位5州と下位5州(出展元 EIA)
今後の見通し

昨日の天然ガス相場は、在庫統計は重要視されず、新型コロナウイルスの感染拡大による需要の減少見通しを懸念材料として大きく値下がりした。なお金融緩和の資金が流れ込んでいることが下値を支える展開となっているが、アメリカ各地で新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。特に天然ガス需要の高いテキサス州やカルフォルニア州、フロリダ州では感染者の増加から、経済活動の制限が始まる見込み。最新の天然ガス在庫統計では、7月2日時点の在庫は前週比56Bcfとなった。統計に反映される27日から2日までの間、気温が平年より上昇しており、冷房用の電力需要が増加した。一方で、輸出用需要の減退が続いている。特にLNG輸出は前年度の実績の半分、年初の3分の1の水準まで低下した。全世界で新型コロナウイルスの感染拡大による需要減が見込まれる中、輸出需要が早期に回復することは困難だと考えられる。一方で、天然ガス生産の増加が統計に現れており、筆者は今後リグ数の増加に伴って生産が回復していくと考えている。


今週は気温上昇による冷房用需要の高まりから、在庫増加ペースが56Bcf増と平年の増加ペースの63Bcf増を割り込んだものの、上述の新型コロナウイルスの感染拡大による後の需要減の見通し、リグ数増加による天然ガスの生産量増加の見通しから、今年の10月31日に貯蔵施設の有効在庫容量を超える公算は高いと考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。