エネルギー速報:EIA週間原油統計(つらつら分析7月2日)

 

ダイジェスト
EIA週間統計の総評

今週発表のEIA週間原油統計では、原油在庫が719万バレル減少した。4週間ぶりに原油在庫量が減少した。製油所の稼働率は75.5%と前週比で0.9%上昇した。石油製品では、ガソリンの在庫は119万バレル増加、留出油の在庫が59万バレル減少となった。オクラホマ州クッシング在庫は26万バレルの減少だった。
製油所の稼働率が上がり、原油需要は確かに増加したものの、在庫減の主因は原油輸入量が大幅に減少したためで、原油需要が大きく回復したわけではなかった。
今日も原油需要と石油製品の需要を中心にEIAの報告の内容を確認していきたい。

原油と石油製品の在庫

原油在庫が減少に転じたため、原油在庫総量は5億3350万バレルと減少した。ガソリン在庫が増加に転じた一方、留出油在庫が減少となった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は26万バレルの減少となり、8週間連続の減少を維持したが、減少幅が0に次第に近づいている。

API統計 EIA統計  EIA統計前週  EIA統計2週前 EIA統計3週前 
原油(万バレル)816減719減144増121増572増
ガソリン(万バレル)246減119増167減166減86増
留出油(万バレル)264増59減25増135減156増
クッシング在庫(万バレル)16増26減99減260減227減
表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれ図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。どの油種でも大きな変動はなく過去5年の在庫レンジの上限を超えた在庫水準が続いている。

図1 原油在庫推移(出展元 EIA)
図2 ガソリン在庫推移(出展元 EIA)
図3 留出油在庫推移(出展元 EIA)
原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)

原油生産量は日量1100万バレルと前週から横ばいとなった。最盛期(1310万バレル)に比べて210万バレルの生産減で減少に歯止めがかかった。今週の輸出は1日当たり6万バレルの減少、輸入は58万バレルと大きく減少した。輸入の内訳はカナダ産315万バレル(前週322万バレル)、サウジアラビア産82万バレル(前週138万バレル)、メキシコ産49万バレル(前週75万バレル)等でサウジアラビア産やメキシコ産の輸入が大きく減少した一方で、コロンビア産29万バレル(前週6万バレル)やナイジェリア産27万バレル(前週4万バレル)、アンゴラ産17万バレル(前週2万バレル)等が増加した。戦略備蓄の積み増し量は24万バレルと前週に比べて減少した。
Ajustmentは見慣れない量だが、需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられる。EIAによると通常は多くても原油投入量の2%程度の量といわれている。今週は通常の倍以上とかなり多いが、この量を考えても原油輸入量の減少が主因であることは変わらない。

原油生産と輸出入今週   前週   2週前  3週前  4週平均  前年同時期  
原油生産(万バレル/日)110011001050111010901220
戦略備蓄増加(万バレル/日)2431243127
原油輸入(万バレル/日)596654664686650758
原油輸出(万バレル/日)309315246243278299
Adjustment(万バレル/日)-63-5-65-90-5634
表2 原油生産と戦略備蓄、輸出入 (出展元 EIA)
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率

製油所への原油投入量は製油所の稼働率が0.9%上がり、日量約19万バレル増加し1403万バレルとなった。依然として稼働率は平年より約18%低い。ガソリン生産量は日量約11万バレルの増加、ジェット燃料の生産は5万バレル増加、留出油の生産量は6万バレルの増加となった。ガソリン生産は回復中、ジェット燃料は低迷、留出油はなお横ばいが続いている。

製油所稼働率等今週  前週  2週前  3週前  前年度同時期   
原油投入量(万バレル/日)14031384136013481733
製油所稼働率(%)75.574.673.873.193.9
ガソリン生産(万バレル/日)  8908798358131051
ジェット燃料生産(万バレル/日)74697461190
留出油生産(万バレル/日)   462456449476530
表3 石油製品生産量 (出展元 EIA)
石油製品供給(日量、需要)

石油製品の供給(需要)ではガソリン供給が日量4万バレル減少と横ばい。ジェット燃料の供給は22万バレルの減少で、例年の3割程度となった。留出油の供給は31万バレルの大幅増となった。

石油製品供給(日量)今週  前週  2週前 3週前  前年同時期  
ガソリン供給(万バレル/日)856860787790946
ジェット燃料供給(万バレル/日)58807871191
留出油供給(万バレル/日)377346355330396
表4 石油製品供給(需要)量 (出展元 EIA)
石油製品需給(日量)

前週と比べ、製油所での原油消費量は増加したが、日量19万バレル程度の増加にとどまった。石油製品ではガソリンの生産量が11万バレル増加したが、供給量が4万バレル減少したこと、ガソリンの輸入量が日量98万バレルと輸出量48万バレルを大きく上回ったことで、生産量+輸入量-輸出量が供給量(需要)を上回り在庫が増加した。留出油は生産量が6万バレル増加する一方で、今週の供給量(需要)が31万バレルの大幅増加となったことが主因で在庫が減少した。ジェット燃料の生産と供給は例年の半分にも達しない低空飛行が今週も続いている。そのため、石油製品全体の供給(需要)量は日量1735万バレルと、前週の1834万バレルに比べて約100万バレル減少した。そのため全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は21億700万バレルと前週から約300万バレル増加し、史上最大を今週も更新している。

石油製品価格

表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となる。原油価格はほぼ横ばいとなった。ガソリン受渡価格、ディーゼル燃料受渡価格は共に下落した。ガソリンは製油所からの供給量がやや減少しているにも関わらず、卸売価格が下落したこでスタンドなどの需要が低下していると考えられる。ディーゼル燃料は今週供給が大きく増加したため、価格が下落したと考えられる。

スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し)6/26   6/19   6/12   6/5   5/29   前年同時期  
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)1.0941.1981.0561.1310.9481.913
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)1.1301.2101.1021.0990.9551.931
原油(ドル/バレル)38.5339.7236.2439.4935.5758.20
表5 石油製品受渡価格 (出展元 EIA)

表6は石油製品の小売価格の全国平均となる。ガソリン価格、ディーゼル燃料の価格が今週も上昇している。特にガソリンは卸売価格の下落に対し小売価格が上昇しているが、6月19日の週の卸売価格の上昇の反映だと考えられるため、需要が回復しているかは不透明となる。ディーゼルについては卸売への供給量が大幅増加し卸売価格が下落したものの、小売価格が上昇しており、需要はある程度増加したと考えられる。

小売価格6/296/22   6/15   6/8   6/1   前年同時期    
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)2.1742.1292.0982.0361.9742.713
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン)   2.5632.5212.4952.4342.3803.095
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン)2.8122.7732.7452.6862.6383.343
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン)2.4302.4252.4032.3962.3663.042
表6 石油製品全国価格 (出展元 EIA)
今後の見通し

今週のEIA統計では、原油生産は横ばいとなり、製油所の稼働率上昇により原油処理量が伸びた。今週、原油輸入量が減少したことが原油在庫減少の要因となった。ガソリンは生産量増加・供給量減少が在庫増加要因だが、それ以上にガソリン輸入が増加したことが在庫増加の要因となった。ガソリン価格からみるガソリン需要回復は今週は一服となった。留出油の生産量は微減となったが、供給量が大幅に増加したことで在庫が減少した。石油製品全体では出荷量が前週の日量1834万バレルから1735万バレルと2週間前の水準に逆戻りし、生産量過多・供給些少のため、今週も在庫が積み上がり、前週に比べて約300万バレル多い21億700万バレルと記録更新が続いている。
需要面ではガソリンの製油所からの供給量が微減となったのに対して、卸売価格が大きく下落し、小売価格が上昇しているが、これは前週の上昇の影響と思われるため、ガソリン需要が増加したかは不透明となる。留出油は製油所からの供給量が大幅に増加し、卸売価格が下落した。一方で、小売価格はやや上昇しており、やや需要が戻ったように考えられる。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う再度の移動制限など影響が出てくるのか来週は注目したい。

金融緩和による原油価格の上昇で、アメリカでは生産再開の動きが活発化しており、今週大手石油会社コノコ・フィリップスはアラスカでの生産を再開すると発表した。一方で、アメリカにおける新型コロナウイルスの感染が全国的に拡大していることが確実な状況となり、旅行者の移動制限、施設の閉鎖などが再び行われている。アメリカ国内のこの先の原油需要回復は困難だと考えられる。今週、原油在庫は減少したが、なお史上最大水準にある。産油国で構成されるOPECプラスは減産幅の遵守に向けて体制の引き締めを図っており、違反のあったアンゴラやナイジェリアでは遵守のための生産計画が提出される予定となっているが、8月も7月と同じ減産幅が維持されるかについては不透明と伝えられている。また、クッシング在庫の減少スピードがさらに低下しており、今週のAPIの週間統計ではついに在庫増に転じた。EIA統計でも日量26万バレル減少まで減速しており、前述の需要低迷と合わせて、夏には在庫が懸念材料となる可能性が増している。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。