エネルギー速報:EIA週間原油統計(つらつら分析7月23日)

 

ダイジェスト
EIA週間統計の総評

今週発表のEIA週間原油統計では原油在庫が市場予想の200万バレル減少に反して489万バレルの増加となった。原油生産が日量1110万バレルと前週比で10万バレル増加に転じたほか、製油所の稼働率が0.2%下がった77.9%となり、原油処理量も稼働率に応じて日量10万バレルの減少し1420万バレルとなった。石油製品ではガソリン在庫が180万バレルの減少、留出油在庫が107万バレルの増加となった。WTI原油の受渡地オクラホマ州クッシングの原油在庫は137万バレルの増加となり、3週間連続の増加となった。この他、戦略備蓄への買い上げが先週をもって終了している。原油輸入は37万バレル増加した594万バレル、輸出は45万バレル増加の299万バレルだった。

原油と石油製品の在庫

原油在庫が489万バレルの増加となり、戦略備蓄を除く民間の原油在庫総量は5億3660万バレルとなった。石油製品在庫はガソリン在庫が180万バレルの減少、留出油在庫が107万バレルの増加となった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は137万バレルの増加となり、3週間連続の在庫増加となった。

API統計 EIA統計  EIA統計前週  EIA統計2週前  EIA統計3週前  
原油(万バレル)754増489増749減565増719減
ガソリン(万バレル)202減180減314減483減119増
留出油(万バレル)136減107増45減313増59減
クッシング在庫(万バレル)72増137増94増220増26減
表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれ図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。ガソリン在庫は3週連続で減少が続いているが、原油と留出油の在庫増の傾向に大きな動きはなく過去5年の在庫レンジの上限を超えた在庫水準が続いている。

図1 原油在庫推移(出展元 EIA)
図2 ガソリン在庫推移(出展元 EIA)
図3 留出油在庫推移(出展元 EIA)
原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)

原油生産量は今週10万バレル増加した日量1110万バレルとなり増加に転じた。生産量の内訳ではアラスカの生産量が増加となった前週と異なり、それ以外の48州、つまりシェールオイルの生産が増加している。最盛期(1310万バレル)に比べて200万バレルの生産減少となっている。今週の輸出は1日当たりおよそ45万バレルの増加した299万バレルとなり、輸入は先週より37万バレル増加して594万バレルとなった。輸入の内訳は日量でカナダ産335万バレル(前週217万バレル)、サウジアラビア産46万バレル(前週87万バレル)、メキシコ産64万バレル(前週49万バレル)、イラク産31万バレル(前週19万バレル)コロンビア産43万バレル(前週14万バレル)、ブラジル産20万バレル(前週5万バレル)等でサウジアラビア産が減少した他はメキシコ産、ブラジル産やコロンビア産といった中南米諸国からの輸入が増加した。戦略備蓄の積み増し量は今週0となり、戦略備蓄の購入は12週間、2100万バレル余りで終了した。
Adjustmentが前週に対して162万バレルの増加となり85万バレル増となった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられる。EIAによると通常は多くても原油投入量の2%程度の量といわれているが、目安の通常の倍以上の量となることが多くなっている。

原油生産と輸出入今週   前週   2週前   3週前   4週平均  前年同時期  
原油生産(万バレル/日)111011001100110011021230
戦略備蓄増加(万バレル/日)0282487
原油輸入(万バレル/日)594556739596621718
原油輸出(万バレル/日)299254238309275296
Adjustment(万バレル/日)85-76-76-63-3221
表2 原油生産と戦略備蓄、輸出入 (出展元 EIA)
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率

製油所の稼働率が0.2%上がった77.9%となり、製油所への原油投入量は日量約10万バレル減少し1420万バレルとなった。稼働率が70%台に止まり、平年の約94%に比べて大幅に低いまま上昇が止まった。前週と比較してガソリン生産量は日量約2万バレル減少した907万バレル、ジェット燃料の生産は約2万バレル増加した86万バレル、留出油の生産量は約10万バレル減少した476万バレルとなった。ガソリン生産が横ばいとなった他、ジェット燃料は例年の4割強で低迷、留出油は5週ぶりに生産量が減少となった。

製油所稼働率等今週   前週   2週前  3週前  4週平均 前年度同時期   
原油投入量(万バレル/日)142014301434140314131723
製油所稼働率(%)77.978.177.575.576.494.3
ガソリン生産(万バレル/日)  907909904890891986
ジェット燃料生産(万バレル/日)8684857478194
留出油生産(万バレル/日)   476486475462470536
表3 石油製品生産量 (出展元 EIA)
石油製品供給(日量、需要)

石油製品の供給(需要)では前週と比較してガソリン供給が日量9万バレル減少した855万バレル、ジェット燃料の供給は19万バレルの減少に転じた。留出油の供給は前週と比べて47万バレル減少した322万バレルとなった。

石油製品供給(日量)今週  前週  2週前  3週前  4週平均  前年同時期  
ガソリン供給(万バレル/日)855864876856863955
ジェット燃料供給(万バレル/日)107126925896184
留出油供給(万バレル/日)322369310377342380
表4 石油製品供給(需要)量 (出展元 EIA)
石油製品需給(日量)

前週と比べ、製油所の稼働率が低下し、原油消費量が日量10万バレルの減少となった。石油製品ではガソリンの生産量が前週比で2万バレル減少と横ばい、供給量は9万バレルの減少となり、供給量と輸出量が減少したことから在庫減少幅が減少したと考えられる。留出油は生産量が前週比10万バレル減少したのに対し、供給量(需要)が47万バレルの大幅減少となったことで、2週間ぶりに在庫増となった。ジェット燃料の生産は2万バレルの増加で、供給は19万バレルと減少した。例年の3分の2程度の需要となっている。石油製品全体の供給(需要)量は日量1765万バレルと、前週の1848万バレルに比べて約73万バレルの大幅な落ち込みとなった。原油在庫とガソリン以外の主要な石油製品の在庫が増加に転じたため、全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫も21億1700万バレルと前週から約900万バレルと2週間ぶりの増加となった。

石油製品価格

表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となる。原油価格が横ばいとなる中でガソリン価格とディーゼル燃料の卸売価格は前週より下落しており、需要が回復していないといえそうだ。

スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し)7/17   7/10   7/3  6/26   6/19   前年同時期  
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)1.1971.2441.0941.1981.961
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)1.2241.2381.1301.2101.981
原油(ドル/バレル)40.5540.5638.5339.7259.99
表5 石油製品受渡価格 (出展元 EIA)

表6は石油製品の小売価格の全国平均となる。ガソリン価格とディーゼル燃料価格は1セント程度の小幅な下落となった。

小売価格7/20   7/13   7/6    6/29   6/22   前年同時期    
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)2.1862.1952.1772.1742.1292.750
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン)   2.5842.5892.5712.5632.5213.116
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン)2.8362.8422.8212.8122.7733.368
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン)2.4332.4382.4372.4302.4253.044
表6 石油製品全国価格 (出展元 EIA)
今後の見通し

6月以降のWTI原油の価格が40ドル付近で推移していることを反映して、アメリカの原油生産がいよいよ増加に転じた。一方で、アメリカ国内では製油所の稼働率の上昇が止まって低下に転じており、平年と比べた稼働率は大幅に低いまま夏の消費シーズンを終わる可能性が出てきた。EIAが詳細を把握できていない原油(adjustment)により原油在庫が489万バレル増加となった。今週の輸入量は37万バレル増加した594万バレル、輸入量は45万バレル増加し299万バレルだった。石油製品については、ガソリンが市場への供給量は減少したものの、生産量などが微減し輸出が減少となったため、引き続きガソリン在庫が減少は続いているが減少幅を縮小した。留出油は生産量の減少量に比べて市場への供給量が大幅に減少したため在庫が増加したと考えられる。今週は石油製品全体では出荷量が日量1765万バレルと前週の1848万バレルと比べて大幅に減少し、原油在庫量が489万バレル増加したため、全ての石油製品在庫の合計は前週に比べて約900万バレル増した21億1700万バレルとなった。

アメリカにおける新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、アメリカの多くの州では再度の経済活動への規制が始まった。燃料需要の先行きは不透明感を増している。オクラホマ州クッシングの在庫が増加しており、原油現物の買い手が少なくなっていることを意味している。一方で、原油需要が回復しないまま、原油価格の高止まりから原油生産がついに増加に転じている。需要の先行きが不透明となり、輸入と生産の増加で在庫が確実に増加しているこの状況でも金融緩和による資金が流入し、現在の需要より将来の需要回復を見込んだ買いが入り続けている。この原油バブルの終わりはまだ見えていない。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。