エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の在庫見通し(つらつらコラム7月24日)

ダイジェスト
週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

昨日、EIAが発表した天然ガス在庫量(7月11日から7月17日までの在庫増減)は37Bcfの増加で、市場予想の36Bcf増とほぼ一致した。前週の45Bcf増と比較して在庫増加幅が減少し、平年(5年平均)の56Bcf増も下回り続けているが、いよいよ過去5年で最大の在庫量になりつつある。ただ、天然ガス市場は在庫統計には今週も反応薄で、発電需要の高まりを材料に上昇したと考えられる。

7月17日時点の天然ガスの在庫量は平年同時期に比べ15.5%(前週比-0.4%)多くなっている。夏の熱波の影響で在庫の増加スピードが前週減速しており、在庫水準は平年に近づいている。増加量は37Bcfとなり平年の在庫増加量である63Bcfを4週連続で下回った。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)

地域別の天然ガス在庫の増減を見てみよう。表1はアメリカの地域別在庫の内訳で太平洋岸と南部の沿岸部で天然ガス在庫の減少が続いている。現在の在庫量は3215Bcfで平年と比べて436Bcf、前年と比べて656Bcf多い。今後の在庫増加が平年並みの週56Bcf増だとした場合の10月31日時点の在庫予想は偶然だが4159Bcfと据え置かれた。この量はアメリカの天然ガス貯蔵施設の設計容量(4693Bcf)の88.6%、有効容量(4261Bcf)の97.6%に相当し、飽和状態になる可能性は依然として高い。

天然ガス需要と供給

次に天然ガスの需給を見てみよう。表2は7月16日から7月22日までの天然ガス供給の内訳となる。生産量は日量89.7Bcfと前週の88.9Bcfに比べて0.8Bcfの増加となった。輸入ではカナダからの輸入が0.2Bcfの減少だった、供給量全体では日量0.7Bcfの増加となった。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は表2と同じ期間(7月16日から7月22日)の部門別の天然ガス需要となる。まず、一日当たりの総需要量は85.5Bcfとなり前週比で1.1Bcfの増加となった。発電用需要は41.3Bcfと前週比で0.4Bcf増となり発電用需要の増加が続いている。工業用は20.4Bcfと前週比で同値で横ばい、住宅用・商業用は8.9Bcfと前週比で0.3Bcfの増加だった。新型コロナウイルスの感染拡大による再規制による再減少といった影響は見えていない。輸出需要では、メキシコ向けのパイプライン輸出が5.6Bcfと前週比で0.1Bcfの増加、LNG輸出は3.7Bcfと0.4Bcfの増加だった。LNGの輸出はやや増加したが、前年実績の半分近くに留まっている。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2は7月14時点のベーカー・ヒューズ社が発表した原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)となる。リグ数の合計は253基と今週も前週比5基となり、リグ数の減少が続いているが、今年3月と比較すると減少スピードは大幅に低下している。

図2 原油・天然ガス採掘用稼働リグ数推移(出展元 EIA)

表4は原油と天然ガスの稼働中リグ数の前週からの変化の一覧となる。7月14日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が1基減った180基、天然ガス採掘用が4基減少した71基、その他(表には未記入)2基の合計253基だった。天然ガスのリグ数がやや減少しているが、これまで大きな減少が続いていた原油リグの数がほぼ横ばいとなっている。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数の前週比比較と前年比比較(出展元 EIA)
今後の見通し

今週の在庫統計では天然ガスの生産量が上向いていることが示されたが、天然ガス相場には重要視されず、発電用の天然ガス需要の増加見通しを支援材料として上昇した。金融緩和の資金も依然流れ込んでいる。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大による天然ガス需要の減少はまだ統計に現れていない。最新の天然ガス在庫統計では、7月16日時点の在庫増加量は37Bcfとなり、今週も気温上昇による冷房用の電力需要増加が消費を牽引した。ただし、アメリカの夏のピークは過ぎつつあり、原油統計ではガソリン精製量が落ち込み始めている。気温の低下による電力需要減が予想される。新型コロナウイルス対策や気温の低下による需要への影響は来週以降徐々に表れるだろう。
一方で、輸出用需要の低迷が続いている。LNG輸出は最盛期(今年初め)の3分の1強の水準まで低下している。今後、全世界で新型コロナウイルスの感染拡大による需要減により過剰な在庫(アメリカ貯蔵率75.4%、欧州貯蔵率84.3%)を未だ抱えている中で冬が本格化するまでは輸出が増えるとは考えにくい。ついにアメリカ国内のシェールオイル生産が再増加が始まった。原油価格が40ドル付近で高止まりが要因で、この原油の増産により、今後、原油の付随ガスとしての天然ガス生産に上向き、価格に下向きの圧力がかかると考えられる。事実、天然ガス自体の生産増加に加えて、今週発表のEIAの原油統計ではアラスカ産に続いてシェールオイルの増産が始まったことが確認されており、天然ガスの生産増で、過剰在庫による下落が10月末までのどこかで起きる可能性が更に高まったと考えられる。毎週EIAから発表される天然ガス在庫や原油在庫、原油生産を巡る石油・ガス業界のニュースに引き続き注意したい。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。