エネルギー速報:原油採掘用リグ稼働数の底打ちと増産(つらつらコラム7月27日)

 

ダイジェスト
原油採掘用リグ

リグとは原油や天然ガスを採掘するための井戸を掘る装置(図1)で、先端にドリルの刃がついたパイプが地面を掘っていく。原油や天然ガスはこの穴を通じて地上へ自噴したり、ポンプで吸い上げられる。シェールオイル用のリグは掘削開始から完成まで数か月程度を要すると言われており、現在の稼働リグ数は数か月後の原油生産を占うバロメータとなる。稼働リグ数は新型コロナウイルスが欧州で猛威を振るい始めたころの3月14日に683基稼働していたが、それい以後に石油会社が設備投資を絞り始めたため、大幅な減少が続いて7月17日まで実に4か月の間減少を続けて数はおよそ4分の1となる180基まで減少した。

米シェブロンがシェール大手買収 「費用対効果高い」 (写真=ロイター ...
図1 原油採掘用リグ (出展元 日本経済新聞社)

ただし、リグは単なる穴掘り機械であり、リグ数の減少は必ずしも原油の生産量の減少を意味していない。その証拠にリグ数は年初から75%ほど減少したものの、原油生産量は日量1310万バレルから210万バレル減少した日量1100万バレルまで、16%減少するにとどまった。リグによって井戸が掘られる。掘られた井戸は仕上げが行われて油井となるが、当座使わない井戸は掘削済みだが未仕上げである井戸(DUC)として仕上げ作業を行えばすぐに原油生産へ移行できる状態で保持される。4月以降は新しく井戸を掘るためのリグ数は設備投資の減少で激減したが、既に掘られている手持ちのDUCを油井とすることで、原油生産の維持が行われたと考えられる。6月に入ると、一大生産地であるパーミヤン盆地(Permian)ではDUCも増加していることが見える。これは、もっとも生産コストの安いパーミヤン盆地に資金と人員、リグが集中しているためだと考えられる。原油価格の上昇がアメリカ産原油の生産再開を後押ししているが、原油生産効率自体も以前より高まっている。

表1 原油産地別の掘削済み未仕上げ井戸(DUC) (出展元EIA)
原油生産量
図2原油生産量の推移(日量1000バレル)(出展元 EIA)

原油生産量は6月12日の発表の日量1050万バレルが底となった。この週は前週比で60万バレルの減少だったが、メキシコ湾岸へ接近したハリケーンのために原油生産が影響を受けたことが大幅減の要因となった。その後、この時の落ち込みから原油の生産量は1100万バレルまで回復した。しばらくこの水準だったが、先週のEIAの発表で10万バレルと小幅ながら上昇に転じて日量で1110万バレルとなった。原油価格の上昇で、シェールオイル企業や石油企業の増産体制に入ったと報道されていたが、前々週末にはアラスカ産原油の、先週にはシェールオイルの増産が確認されている。

原油相場の今後の見通し

アメリカ産原油が増産に入ったことは8月のOPECプラスの減産実施内容に影響を与えるかもしれない。このまま協調減産を続ければ、価格は維持できるかも知れないが、減産分アメリカのシェールオイルの生産量が回復して、原油市場におけるシェアを押し上げることになる。こうなると減産で儲かるのは産油国ではなく、アメリカのシェールオイル採掘業者となると考えれば、OPECプラスの産油国が減産を放棄して増産する可能性が浮上する。
一方で、アメリカのシェールオイルの未来もそれほど順風満帆でないとの分析もある。分析では現在の増産はあくまで、採掘済みの井戸を利用した増産で長続きしないとしている。理由としては今年の初めの設備投資の削減で、採掘のための人員・機材を大幅に削減したため、現在の能力以上の増産が難しいことが挙げられている。
この2つの意見のどちらが正しいのか現時点では判断できないが、言えることは8月の原油の生産量は協調減産幅の縮小で200万バレル+シェールオイルの増産分増加するということ。このシェールオイル増産は想定外と思われ、WTI原油1バレル40ドル近傍で高止まりする原油相場に大きな影響を与える可能性を秘めている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。