エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の在庫見通し(つらつらコラム7月3日)

ダイジェスト
週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

昨日、EIAが発表した天然ガス在庫量(6月20日から6月26日までの在庫増減)は65Bcfとなり、市場予想の73Bcf増、前週比120Bcfと比較して増加幅が減少となったこと、この先2週間の天気予報で気温が従来の予報より上昇し、冷房用需要が高まるとの見方が支援材料となって、天然ガスは上昇した。

6月26日時点の天然ガスの在庫量は平年同時期に比べ17.8%多い。今週は在庫の増加スピードに減速が見られており、増加量は65Bcfと平年の在庫増加量である63Bcfとほぼ一致した。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)

次に地域別の天然ガス在庫の増減を見てみよう。表1はアメリカの地域別在庫の内訳で今週は南部の沿岸部で在庫が減少に転じた。現在の在庫量は平年と比べて466Bcf多い状態となっている。今後の在庫積み上げのペースが平年並みの63Bcfだとすると10月31日に在庫は4189Bcfとなる。この量はアメリカの天然ガスの貯蔵施設の設計容量(4693Bcf)の89%、有効容量(4261Bcf)の98%に相当する。
また、試みに2020年は2019年と同様の需要と生産があり、昨年と同様のペースで在庫が増加すると仮定して10月末の在庫を推測してみよう。2019年を使うのは世界的に見て観測史上2番目に暑い夏であり、冷房用天然ガス需要も大きかったため。次に、2019年の3月から10月の月別生産量と2020年の月別生産量を比較してみよう。

単位:Bcf3月4月5月6月7月8月9月10月
2019年27872712278727352829289228312959
2020年29182772
表2 2019年と2020年の月別生産量比較(出展元 EIA)

新型コロナウイルスの感染拡大で2020年3月以降は生産が減少しており、奇しくも2020年4月の生産量は2019年4月と同一の水準となっている。推測に当たって2020年の生産量は5月以降も2019年と同一水準で推移すると仮定する。なお、原油価格の上昇で2020年後半の生産量は4月より増加すると見込まれている。
一方、2019年6月末から同年10月末までの在庫増加量は642Bcfだった。需要と生産が同一水準だとする上記の仮定を適用すると、2020年6月末の時点での在庫は3077Bcfであり、2020年10月31日の予想在庫量は4431Bcfとなる。この量はアメリカ全体の天然ガス貯蔵施設の有効容量よりも170Bcf多く、施設が溢れることになる。

今後の生産増や新型コロナウイルスの感染拡大による需要減により、在庫増加のペースがどうなるかには引き続き注目していきたい。

今後の見通し

最新の天然ガスの在庫統計で6月26日時点の在庫は前週比65Bcfとなった。需要の詳細は独立記念日前のため発表されていないが、統計に反映される20日から26日までの間は気温が平年より上昇しており、冷房用の電力需要が増加し、発電需要が増加したことが最も大きな要因だったと考えられる。
在庫増加ペースは落ちたものの、天然ガス在庫は平年並みのペースで増加しており、今年の10月31日に貯蔵施設の有効在庫容量の98%が埋まる見通しは変化しない。

先週のの天然ガス相場は新型コロナウイルスの感染拡大による需要の減少見通しを懸念材料として大きく値下がりしたが、今週に入ると、冷房用需要の増加見通しや金融緩和の資金が流れ込んだことが下値を支える展開となった。アメリカ各地では新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、全米の過半数の州で増加が続いている。拡大スピードが速い州では移動規制などの再導入が始まっており、このまま再度のロックダウンに至ることで、天然ガス需要の減少から、在庫が溢れる状況に至る公算が高まっている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。