エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の在庫見通し(つらつらコラム7月31日)

ダイジェスト
週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

昨日、EIAが発表した天然ガス在庫量(7月18日から7月24日までの在庫増減)は平年同時期に比べ15.3%(前週比-0.2%)多くなっている。夏の熱波の影響で発電用需要が高まっていたため、在庫の増加スピードが前週より減速している。在庫水準は平年に近づいており、在庫の増加量は26Bcfで平年の在庫増加量である56Bcfを下回ったが、過去5年で最大級の在庫量となっている。昨日の天然ガス市場は在庫統計には反応薄で、気温の低下で発電需要が今後頭打ちになるとの見方を材料に下落した。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)

地域別の天然ガス在庫の増減を見てみよう。表1はアメリカの地域別在庫の内訳で南部の沿岸部のみで天然ガス在庫の減少が続いている。現在の在庫量は3241Bcfで平年と比べて429Bcf、前年と比べて626Bcf多い。今後の在庫増加が平年並みの週56Bcf増だとした場合の10月31日時点の在庫予想は偶然だが4152Bcfとなった。この量はアメリカの天然ガス貯蔵施設の設計容量(4693Bcf)の88.4%、有効容量(4261Bcf)の97.4%に相当するため、10月末に飽和状態になる可能性は依然として高くなっている。

天然ガス需要と供給

次に天然ガスの需給を見てみよう。表2は7月23日から7月29日までの天然ガス供給側の内訳となる。生産量は日量89.8Bcfと前週の89.7Bcfに比べて0.1Bcfの増加にとどまった。輸入ではカナダからの輸入が0.1Bcfの減少で、供給量全体は横ばいだった。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は表2と同じ期間(7月23日から7月29日)の部門別の天然ガス需要となる。まず、一日当たりの総需要量は85.7Bcfとなり前週比で0.2Bcfの増加となった。発電用需要は41.6Bcfと前週比で0.3Bcf増となり、今週も発電用需要の増加が続いている。工業用は20.7Bcfと前週比で0.3Bcfの増加、住宅用・商業用は9.0Bcfと前週比で0.1Bcfの増加だった。新型コロナウイルスの感染拡大による再規制による再減少といった影響は見えていない。輸出需要では、メキシコ向けのパイプライン輸出が5.6Bcfと前週比で横ばい、LNG輸出は3.2Bcfと0.5Bcfの減少だった。LNGの輸出は前年実績の半分近くに留まっている。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2は7月21時点のベーカー・ヒューズ社が発表した原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)となる。リグ数の合計は251基と前週比2基減となり、今年3月と比較すると減少スピードは大幅に低下している。

図2 原油・天然ガス採掘用稼働リグ数推移(出展元 EIA)

表4は原油と天然ガスの稼働中リグ数の前週からの変化の一覧となる。7月21日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が1基増えた181基、天然ガス採掘用が3基減少した68基、その他(表には未記入)2基の合計251基だった。天然ガスのリグ数がやや減少しているが、これまで大きな減少が続いていた原油リグの数が増加に転じた。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数の前週比比較と前年比比較(出展元 EIA)
今後の見通し

今週の在庫統計では引き続き天然ガスの生産量が上向いていることが示されたが、天然ガス相場では重要視されず、今後の気温の低下で冷房用(発電用)天然ガス需要が減少する見通し懸念材料として下落した。新型コロナウイルスの感染拡大による天然ガス需要の減少は今週も統計に現れていない。

最新の天然ガス在庫統計では、7月23日時点の在庫増加量は26Bcfとなり、今週の統計でも気温上昇に伴う冷房用の電力需要増加が消費を牽引した。アメリカの夏のピークは過ぎつつあり、今後は気温の低下による電力需要減が予想される。新型コロナウイルス対策や気温の低下による需要への影響が来週以降徐々に表れると思われる。
一方で、輸出用需要は低迷が続いている。LNG輸出は前週比で0.5Bcf減の3.2Bcfとなった。最盛期(今年初め)の3分の1強の水準まで低下している。現在、全世界で過剰な在庫状態が続いており、今後冬の需要期が始まっても在庫の取り崩しからしばらくは輸出が大きく増えるとは考えにくい。アメリカ国内のシェールオイル生産の増加が続いている。これは原油価格が40ドル付近で高止まりしていることが要因となっているが、今後のシェールオイルの増産で、付随ガスとしての天然ガス生産も増加すると考えられる。引き換えに価格にはまず冬までに下向きの圧力がかかると考えている。下落の時期を捉えるため、毎週EIAから発表される天然ガス在庫や原油在庫や原油生産を巡る石油・ガス業界のニュースに引き続き注意したい。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。