エネルギー速報:EIAエネルギー短観(つらつらコラム7月8日)

EIA月例エネルギー短観
ダイジェスト
総評

新型コロナウイルスの感染拡大防止のために行われた都市封鎖の緩和と再規制のために予測が難しくなっている。エネルギー消費の目安となるアメリカの国内総生産は2020年前半に6.4%のマイナスとなった。今後は回復すると予想している。

原油
原油生産

アメリカにおける原油生産は2021年まで減少が続くと予想している。需要減による原油価格の下落に対応する生産の低下がベースとなるが、今月新たな要因が加わった。7月6日にダコタアクセスパイプラインが、環境保護団体の運転差し止め要求によって停止命令が下った。このパイプラインはノース・ダコタ州のバッケン地域のシェールオイルを大西洋岸へ送っているため、バッケン地域の生産量の減少が想定される。これにより、2020年の生産量が日量60万バレル、2021年の生産量が120万バレル下方修正される見込み。ただし、パイプラインオペレーターは再開のための司法手続きを開始しており、解除された場合は生産量が回復すると考えられる。

原油需要

今月のEIAの推計ではアメリカの原油等燃料消費量は前年比日量210万バレル減の1830万バレルへ減少すると予想している。特に航空需要の落ち込みによってジェット燃料の消費量は前年比で約3割の減少となり、ガソリン、ディーゼル燃料の約1割と比較して大きな減少幅となる見込み。2020年後半からアメリカの燃料需要は回復し始めて2021年には年平均1990万バレルと、コロナウイルス前の水準をほぼ回復すると予想している。需要の増加は原油価格の上昇に結び付いている。今年前半にはアメリカ国内で日量670万バレルの在庫増加があったが、原油需要がより上向くことで、今年後半には減少に転じて日量330万バレルの在庫減少となると予想されている。このペースなら2021年の終わりには2020年に積み上がった在庫は全て取り崩される見通し。
図1は原油の世界生産量(青)と世界需要量(緑)、在庫の増減(棒グラフ)を示している。世界需要は2020年の第2四半期の平均は日量8440万バレルと前年比で1630万バレルの減少となった。ただし、5月の平均は前年比1830万バレルの減少、6月は前年比1660万バレルの減少となっており、世界需要は確実な回復傾向にある。4月には2100万バルの生産過剰状態だったが、4月以降にOPECプラスとカナダやアメリカ、ノルウェーで合計1200万バレルの減産が行われたことで、7月に生産量と需要量が交差した後は日量180万バレルのペースで在庫の消費が進み、2020年初頭から5月までに積み上がった13億バレルの世界の原油在庫は2021年終わりまでに解消すると見込んでいる。

図1 世界の原油生産量と原油需要(出展元 EIA)
原油価格

図2に示すWTI原油価格の6月の月平均価格は1バレル38ドルで、この価格は5月の平均より11ドル高く、4月の平均より22ドル高かった。EIAの分析ではこれは原油消費の回復とOPECプラスその他の減産による上昇だったと述べている。今年後半以降もアメリカ国内の消費の回復が予想されることから、EIAは原油価格は今年の後半には38ドル、来年には46ドルへ回復すると予想している。この価格は前月の予想より、それぞれ4ドルと2ドル高い。

図2 原油価格予想(出展元 EIA)
濃い青線:実績、淡い青線:予想 
天然ガス
天然ガス生産量

EIAは2020年のアメリカ国内の天然ガスの生産量は、平均日量88.7Bcfとなると予想しており、この量は2019年の92.2Bcfから3%の減少となっている。価格の下落による生産減が主な理由で、この動きは2021年前半まで続き、2021年の平均生産量は2020年から更に6%減少して84.2Bcfとなると予想している。

天然ガス需要

新型コロナウイルスの感染拡大による需要の減少で、2020年のアメリカの天然ガス消費量は前年比3%の減少と予測している。2021年後半には生産減少による価格上昇が需要減少を招き、2020年比で5%の需要減少となると予想している。

天然ガス価格

図3は2020年6月までの各種天然ガス価格実績と6月以降の価格予想を示している。2020年前半は需要減によって価格が低下し、2020年6月の価格はヘンリーハブのスポット価格は1MMBtuあたり平均1.63ドルだった。2020年の後半からは生産減少による価格上昇が始まり年末には平均1.93ドル、2021年には生産減少と需要の回復から価格が大きく上昇し、年平均3.10ドルとなると予想している。

図3 天然ガス価格(出展元 EIA)
実線:実績、点線:予想 
まとめ

今月のEIAの月例の短観では、輸送用パイプラインの停止で原油生産が引き下げられたのに加えて、原油需要が前月予想より増加したことで、年末あるいは来年の予想価格が引き上げられた。原油需要は回復の途上にあるが、現在、新型コロナウイルスの感染がアメリカ国内で再び拡大しており、EIAの報告が冒頭に述べているように需要について不確定性が大きくなっている。仮に再度の都市封鎖が行われるのと同様に需要が減少した場合、原油価格には現在の価格から約10ドル程度の価格の下押しがあるのではないだろうか。
一方、天然ガスは価格低下から生産減少が来年の中頃まで続くとEIAは予想している。新型コロナウイルスの感染拡大が収まる前提では需要が回復に向かい、需要増と生産減が合わさって来年には今年の前半の価格の倍となる3.10ドルまで上昇するとの予想となっている。
著者の私見では、原油・天然ガス採掘用のリグ数減少幅が小さくなっており、天然ガスの生産減少傾向は本格的にブレーキが掛かるのではないかと考えている。また、この月報には特に触れられていなかったが、原油高による生産増加により、EIAの予想より生産量は増加して相場の懸念材料となるのではないかと考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。