エネルギー速報:EIA週間原油統計(つらつら分析7月9日)

 

ダイジェスト
EIA週間統計の総評

今週発表のEIA週間原油統計では、市場予想の320万バレル減少に反して原油在庫が565万バレル増加となり、再び原油在庫量が増加している。製油所の稼働率は77.5%と前週比で2.0%上昇した。石油製品では、ガソリンの在庫は483万バレル減少、留出油の在庫が313万バレルの増加となった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は220万バレルの増加となり、9週間ぶりに増加に転じた。
製油所の稼働率が上がり原油需要は今週も増加しているが、原油輸入量が大幅に増加したことで、原油在庫が大きく増加した。
今日も原油需要と石油製品の需要を中心にEIAの報告の内容を確認していきたい。

原油と石油製品の在庫

原油在庫が増加に転じたため、戦略備蓄を除く民間の原油在庫総量は5億3920万バレルとなった。ガソリン在庫は減少しているが、留出油在庫は再び増加となった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は220万バレルの増加となり、9週間ぶりの増加となった。

API統計 EIA統計  EIA統計前週  EIA統計2週前 EIA統計3週前 
原油(万バレル)205増565増719減144増121増
ガソリン(万バレル)183減483減119増167減166減
留出油(万バレル)85増313増59減25増135減
クッシング在庫(万バレル)222増220増26減99減260減
表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれ図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。どの油種でも大きな変動はなく過去5年の在庫レンジの上限を超えた在庫水準が続いている。

図1 原油在庫推移(出展元 EIA)
図2 ガソリン在庫推移(出展元 EIA)
図3 留出油在庫推移(出展元 EIA)
原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)

原油生産量は日量1100万バレルと2週間連続で横ばいとなり生産量の減少に歯止めが掛かっている。最盛期(1310万バレル)に比べて210万バレルの生産減少。今週の輸出は1日当たり71万バレルの減少となり、輸入は先週より242万バレル増加して739万バレルとなった。輸入の内訳はカナダ産291万バレル(前週315万バレル)、サウジアラビア産142万バレル(前週82万バレル)、メキシコ産133万バレル(前週49万バレル)、コロンビア産33万バレル(前週29万バレル)、ブラジル産22万バレル(前週7万バレル)等でサウジアラビア産やメキシコ産の輸入が大きく増加した。戦略備蓄の積み増し量は8万バレルと前週に比べて大きく減少した。
先週に引き続きAdjustmentが大きく76万バレル減となった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられる。EIAによると通常は多くても原油投入量の2%程度の量といわれているが、今週も通常の倍以上とかなり多くなっている。

原油生産と輸出入今週   前週   2週前   3週前  4週平均  前年同時期  
原油生産(万バレル/日)110011001100105010871230
戦略備蓄増加(万バレル/日)824312421
原油輸入(万バレル/日)739596654664663730
原油輸出(万バレル/日)238309315246277304
Adjustment(万バレル/日)-76-63-5-65-52-47
表2 原油生産と戦略備蓄、輸出入 (出展元 EIA)
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率

製油所への原油投入量は製油所の稼働率が2.0%上がったことで、日量約31万バレル増加し1434万バレルとなった。依然として稼働率は平年より約17%低い。ガソリン生産量は日量約14万バレル、ジェット燃料の生産は約11万バレル、留出油の生産量は約13万バレルそれぞれ増加した。ガソリン生産は回復中でジェット燃料は2週連続で増加したが依然として低迷、留出油は3週連続の増加となった。

製油所稼働率等今週   前週  2週前  3週前  4週平均 前年度同時期   
原油投入量(万バレル/日)143414031384136013951743
製油所稼働率(%)77.575.574.673.875.394.7
ガソリン生産(万バレル/日)  9048908798358771041
ジェット燃料生産(万バレル/日)8574697475200
留出油生産(万バレル/日)   475462456449460535
表3 石油製品生産量 (出展元 EIA)
石油製品供給(日量、需要)

石油製品の供給(需要)ではガソリン供給が日量20万バレル増加した。ジェット燃料の供給は34万バレルの大幅増で、例年の5割程度まで回復した。留出油の供給は67万バレルの大幅減少となった。

石油製品供給(日量)今週  前週  2週前  3週前 4週平均  前年同時期  
ガソリン供給(万バレル/日)876856860787845975
ジェット燃料供給(万バレル/日)9258807877180
留出油供給(万バレル/日)310377346355345355
表4 石油製品供給(需要)量 (出展元 EIA)
石油製品需給(日量)

前週と比べ、製油所の稼働率の上昇で原油消費量は日量31万バレルの増加となった。石油製品ではガソリンの生産量が14万バレル増加、供給量も20万バレル増加となったことから在庫が減少した。留出油は生産量が11万バレル増加したのに対し、今週の供給量(需要)が67万バレルの大幅減少となったことが主因で在庫が増加した。ジェット燃料の生産は11万バレル、供給は34万バレル増加し、例年の半分程度となった。そのため、石油製品全体の供給(需要)量は日量1812万バレルと、前週の1735万バレルに比べて約80万バレルの増加となったが、全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は21億1700万バレルと前週から約1000万バレル増加し、史上最大を今週もまた更新した。

石油製品価格

表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となるが、7月3日はアメリカ独立記念日前の休日のため価格の統計も休みとなった。前年同時期も同様。

スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し)7/3  6/26   6/19   6/12   6/5   前年同時期  
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)1.0941.1981.0561.131
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)1.1301.2101.1021.099
原油(ドル/バレル)38.5339.7236.2439.49
表5 石油製品受渡価格 (出展元 EIA)

表6は石油製品の小売価格の全国平均となる。ガソリン価格は今週も上昇した。一方でディーゼル燃料の価格が今週は下落となった。ガソリンについては供給が大幅に増えたが価格がわずかに値上がりとなったことで、需要もまた増えていると推測される。ディーゼル燃料は供給が絞られており、価格の上昇に不思議はない。

小売価格7/6    6/29   6/22   6/15   6/8     前年同時期    
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)2.1772.1742.1292.0982.0362.743
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン)   2.5712.5632.5212.4952.4343.117
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン)2.8212.8122.7732.7452.6863.366
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン)2.4372.4302.4252.4032.3963.055
表6 石油製品全国価格 (出展元 EIA)
今後の見通し

今週のEIA統計では、原油生産は横ばいとなり、3月以来の原油安による生産減少に歯止めが掛かった。製油所の稼働率が上昇したことで原油処理量が伸びたが、原油輸入量が急増しており、原油在庫増加の要因となった。ガソリンは市場への供給量増加が生産量増加を上回った他、先週とは逆にガソリン輸入が減り、輸出が増加したことでガソリン在庫が減少した。ガソリンの市場への供給は増加したが、小売りのガソリン価格はわずかに上昇し、ガソリン需要は回復していると思われる。留出油の生産量は増加となった上、市場への供給量が大幅に減少したことで在庫が増加した。供給が大幅に減少したことは需要が増えていないことを意味していると思われる。石油製品全体では出荷量が日量1812万バレルと前週の1735万バレルを大きく上回ったが、原油輸入の急増のため、在庫量は前週に比べて約1000万バレル多い21億1700万バレルと在庫記録更新が続いている。
アメリカにおける新型コロナウイルスの感染者が300万人を超えるなど全国的に感染が拡大していることで需要減や原油在庫の増加が起きているにもかかわらず、現在の需給ではなく今後の需要回復期待のみが先行した原油価格の高止まりが続いている。金融緩和によってバブルが生じていると言えるのではないか。確かに目先のガソリン需要には回復の兆しが見られるが、この先、都市封鎖の再開などがあれば、即減少に転じて、アメリカ国内の原油需要回復は困難だと考えられる。原油在庫は再び増加に転じており、石油製品の在庫も史上最大水準を更新し続けている。今週は、オクラホマ州クッシングの原油在庫が9週間ぶりに増加に転じたが、再び原油の買い手がいなくなったことを表しているのではないか。クッシングの在庫については来週も注目したい。この状況の中で、産油国で構成されるOPECプラスが来週15日にJMMCを開き8月の減産幅の協議が行われると思われる。原油が高止まりしていることで、8月も7月と同じ減産幅が維持される可能性は低いとの観測が広がっている。減産幅が当初予定の日量770万バレルへ減少するとの報が、在庫過剰と合わせて、原油バブルの崩壊の引き金を引くかもしれない。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。