目次
ダイジェスト(クロッププログレスレポートと天気予報)
- 大豆の農作業が進展し、開花率は92%(平年89%)、着サヤ率は75%(平年68%)と平年より進展が早い
- 大豆の作柄予測では豊作以上(Good、Excellent)が74%(前年は54%)となり、前週比で1%改善、大豊作(Excellent)率が前週比で2%上昇
- コーンのシルキング(受粉)率は97%(平年95%)、ドウ(粒形成)率は59%(平年52%)、デント(粒乾燥)率は11%(平年12%)
- コーンの作柄予測は豊作以上(Good、Excellent)が71%(前年は57%)と前週から1% 悪化したが、大豊作(Excellent)の率が1%上昇
- コーンベルトの気温は2週間後まで平年以下となるがそれ以後は平年以上となる見込み。今後2週間の降水量はコーンベルトの各地で平年以下から平年並みまでまちまち。3週間後以降は平年並みの雨が降る見込み。
クロッププログレスレポートによるアメリカの作付状況
8月10日にUSDAより発表された最新のクロッププログレスレポートに基づいて、2020/2021年シーズンの大豆とコーンの作付進捗状況について紹介する。8月9日の時点での大豆の開花率と着サヤ率、コーンのシルキング率とドウ率は以下の通り。なお、コーンのシルキング期は受粉、ドウ期は粒の形成が始まったことを意味しており、ドウ期が終了し粒の成熟が進むデント期へ入った。
今週 | 前週 | 前年同時期 | 平年(5年平均) | ||
大豆作付率 | 終了 | ||||
大豆発芽率 | 終了 | ||||
大豆開花率 | 92% | 85% | 79% | 89% | |
大豆着サヤ率 | 75% | 59% | 49% | 68% | |
コーン作付率 | 終了 | ||||
コーン発芽率 | 終了 | ||||
コーンシルキング率 | 97% | 92% | 87% | 95% | |
コーンドウ率 | 59% | 39% | 34% | 52% | |
コーンデント率 | 11% | データなし | 6% | 12% |
大豆の農作業は順調に進展し、開花率は平年(89%)より進んだ92%となり終わりが近づいている。着サヤ率は平年(68%)に比べて75%とこちらも進んだ。
コーンはシルキング(受粉)率が平年(95%)に対し97%となりほぼ終了した。ドウ率は平年(52%)に対して59%となった。今週からドウ期の次のステージであるデント率の公開が始まった。デント率は11%と平年(12%)並みとなっている。州別のより詳細な農作業の進捗データはこちら。
今期の作柄予想
表2は大豆の作柄予想で、豊作以上(Good、Excellent)の割合は74%と前週から1%改善しその中でも大豊作(Excellent)の割合は2%上昇した。前年の54%を大きく上回っている。今週もコーンベルトで大豆の生育に適した天候が続いたために改善したと考えられる。
Very Poor | Poor | Fair | Good | Excellent | |
3週前 | 2 | 5 | 24 | 54 | 15 |
2週前 | 1 | 5 | 22 | 57 | 15 |
前週 | 1 | 5 | 21 | 58 | 15 |
今週 | 1 | 4 | 21 | 57 | 17 |
前年 | 3 | 10 | 33 | 46 | 8 |
表3はコーンの作柄予想で、豊作以上(Good、Excellent)割合は71%で前週から1%悪化した。ただし、大豊作(Excellent)の割合が1%上昇した。依然として前年の57%を大きく上回っている。今週のコーンベルトの天候の改善が作柄改善に寄与したと思われるが、雨の少なかった一部で乾燥が起きている可能性がある。
Very Poor | Poor | Fair | Good | Excellent | |
3週前 | 2 | 6 | 23 | 52 | 17 |
2週前 | 2 | 5 | 21 | 55 | 17 |
前週 | 2 | 5 | 21 | 55 | 17 |
今週 | 2 | 6 | 21 | 53 | 18 |
前年 | 3 | 10 | 30 | 47 | 10 |
コーンベルトの天候予報
図1は直近2週間の気温予報(図1左)と8月下旬から9月上旬の気温予報(図1右)となる。2週間後のコーンベルトは五大湖の南側を中心に平年以下となる予報となっていて、3週間後の予報では、コーンベルトでは全体的に平年より気温が高くなる見通しとなっている。(3か月間の中期予報は今週末に更新の予定)
左:直近2週間の気温予報、右:8月下旬から9月上旬の気温予報
降水量予報
図2は降水量予報で、直近2週間の予報(図2左)ではコーンベルトの東側では平年並みの降水量、西側では平年並みから平年以下と地域によってまちまちとなっている。3週間後の予報(8月下旬から9月上旬、図2右)ではコーンベルトのほとんどの地域では平年並みの降水量となっている。
左:直近2週間の降水量予報、右:8月下旬から9月上旬の降水量予報
土壌水分量
Very Short(欠乏) | Short(不足) | Adequate(十分) | Surplus(過剰) | |
アイオワ州 | 22 | 39 | 38 | 1 |
イリノイ州 | 1 | 21 | 65 | 12 |
ネブラスカ州 | 15 | 25 | 58 | 2 |
ミネソタ州 | 3 | 14 | 73 | 10 |
48州平均 | 13 | 27 | 55 | 5 |
Very Short(欠乏) | Short(不足) | Adequate(十分) | Surplus(過剰) | |
アイオワ州 | 16 | 37 | 46 | 1 |
イリノイ州 | 1 | 16 | 73 | 10 |
ネブラスカ州 | 15 | 25 | 59 | 1 |
ミネソタ州 | 2 | 10 | 79 | 9 |
48州平均 | 11 | 26 | 58 | 5 |
コーンベルトの内、コーンや大豆の生産量の多い代表的な4州の畑の土壌中水分のフィールド調査結果についてまとめた表が表4と表5となる。表4は地表の、表5は土中の水分量を示しているが、コーンベルト東側のイリノイ州とミネソタ州では8割近くの畑に十分な水分が存在している。一方でコーンベルト西側ではネブラスカ州はそれほどでもないが、アイオワ州では乾燥が進んでいる。
まとめ
一部には乾燥による作柄悪化もあるが、全体的には農作物に適した天気が農作物の生育を促進している。大豆では開花の92%、着サヤの75%が終了。コーンはシルキング期(受粉期)が97%が終了、ドウ期(粒形成期)も59%終了し、次のデント期(粒固化期)に入った。今週より公開された情報ではコーンのデント率は11%だった。
今後の天気予報によれば、今後2週間の気温はコーンベルトは南側を中心に平年より低くなる。降水量は場所によってまちまちだが平年並みから平年以下となる見込み。ただし、既に水分の多く必要な時期は過ぎている畑が多く、影響は最低限と考えられる。今月下旬以降の予報ではコーンベルト各地で平年より気温が高く、平年並みの降水がある予報となっている。よって、このままの天候が続けば大豊作が予想される。
作柄予想は大豆畑の74%、同じくコーン畑の71%で豊作以上(Good、Excellent)の作柄予想となり、大豆は豊作以上の率が1%改善したのに加えて大豊作(Excellent)の率が2%上昇した。一方のコーンは豊作以上の率が1%悪化したものの大豊作(Excellent)の率が1%上昇した。今週は需給報告が予定されているため、それまでは穀物相場は様子見の展開となることが予想される。
最後に繰り返しになるが、大豆の開花期とコーンのシルキング期は9割以上とほぼ終了しており、水分が多く必要な時期は過ぎつつある。今後はむしろ雨の降りすぎという観点で天気予報に注意したい。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。