エネルギー速報:8月のEIAエネルギー短観(つらつらコラム8月12日)

ダイジェスト
米国のエネルギー消費見通し

新型コロナウイルスの感染拡大対策として経済活動の減少が発生した後、緩和と再開の取り組みを始めたが、感染の再拡大により再度の経済活動規制が入った。これにより2020年後半のエネルギー消費には不確実性が高くなっている。最新の経済予測では2020年の第2四半期までにアメリカの国内総生産は5.2%減少するが、第3四半期以降には回復期に入ると予測されている。この予測に基づけば、エネルギー消費も拡大し価格が上昇すると予想される。それではエネルギー短観の原油と天然ガスについての予想について見ていこう。

原油
価格
図1 WTI原油価格の予想(出展 EIA)

図1はWTI原油の価格推移と予想を示している。7月のWTI原油価格は1バレル当たりおよそ40ドルで、6月より3ドル高く、原油価格が落ち込んだ4月と比べて20ドル以上上昇した。2020年後半の原油価格は積み上がった原油在庫と、原油生産余力によって価格が維持されて1バレル40ドルで推移するが、2021年には需要の拡大から年平均で46ドルに達するとEIAは予想している。

図2 世界原油生産、需要、在庫増減の予想(出展 EIA)

図2は世界全体の原油の需要(緑線)と供給(青線)、需給の差となる在庫増減の推移と今後の予想を示している。世界の原油在庫は新型コロナウイルスの感染拡大による需要の急減で今年の前半は1日当たり640万バレルの割合で増加したが、年後半には生産の減少と需要の回復によって1日420万バレルの割合で在庫が減少すると予想する。2021年中頃には1日当たり80万バレルの在庫減少となり、ほぼ需給が釣り合うと予想する。

需要

2020年7月の世界の原油の推定需要は日量9340万バレルで、前年同時期に比べて910万バレルの減少となっている。ただ、最も需要落ち込みの大きかった2020年の第2四半期は前年比で1580万バレルの減少だったため、需要は回復しつつあると言える。
2020年全体の世界の平均原油需要は日量9310万バレルと前年の10120万バレルから810万バレルの減少となると予想する。また、2021年には需要の回復で年平均10010万バレルまで回復すると予想している。
米国では2020年第3四半期に前年比で180万バレル少ない日量1890万バレルの消費を見込んでいる。2021年には需要の回復で平均2000万バレルの消費となるが、この数字は2020年の平均より160万バレル多いが、2019年の実績に比べると40万バレル少ない値となる。

供給

2020年の第2四半期の全世界の原油生産量は日量9180万バレルと前年比で860万バレルの減少となった。この減少はOPECプラスの自主減産と原油価格低下による生産減少を反映している。今後は、第3四半期に9040万バレルまで減少した後、2021年には9940万バレルまで回復する見通し。
アメリカ国内では2020年の原油生産量は日量1130万バレル、2021年には1110万バレルと予想している。この数字は実際の生産削減が前回の予想より大きかったことを反映して、前回予想より37万バレル少ない値となっている。

天然ガス
価格
図3 天然ガス価格の予想(出展 EIA)

図3は天然ガス価格の推移と予想を示している。7月のヘンリーハブのスポット価格は1MMbtu当たり1.77ドルだった。EIAは今後の需要の回復で2020年の平均価格は2.03ドル、2021年では3.14ドルとなると予想している。

在庫

アメリカ国内の天然ガスの在庫は現在3.3Tcfで、昨年までの過去5年間の平均より15%在庫が多くなっている。今後も増加し、10月末には4.0Tcfに達する見込み。

消費

アメリカの天然ガスの消費量は平均日量82.4Bcfで2019年と比べて3%減少する。減少は産業部門の消費落ち込みや2020年が暖冬だったことを反映している。

生産

アメリカの天然ガスの生産量は2019年に平均日量92.2Bcfに達した。2020年は新型コロナウイルスによる需要減に起因する価格低下に伴う生産減で、2020年4月に82.7Bcfまで急減したが、平均88.7Bcfとなる見通しとなった。これは月間生産量が2019年11月に96.2Bcfでピークを迎えた後、急減前の2020年2月まで同水準で生産が維持されたため。今後は原油価格の上昇に対応して生産量は82.7Bcfを底に回復するが、スピードは緩やかで2021年には平均84.0Bcfに留まると予想している。

LNG輸出
図4 LNG輸出量推移(出展 EIA)

図4はアメリカのLNG輸出量の推移を示し、薄い緑が輸出能力を、濃い緑が実際の輸出量を示している。LNGの輸出に関しては2020年7月の輸出実績は一日当たり3.1Bcf、輸出施設使用率は約35%にとどまり、輸出能力が3分の1だった2018年5月と同水準まで落ち込んでいる。今後、世界需要が回復するに伴い、2020年には1日当たり平均5.5Bcf、2021年には平均7.3Bcfまで回復すると予想している。

LNG輸出の今後の見通し
図5 LNG需要推移(出展 EIA)

図5は左からアジア、欧州、世界全体のLNGの需要を示している。2020年の初めは順調な輸出で始まったが、新型コロナウイルスの感染拡大で世界のLNG消費は70%の輸入を占めるアジアや、欧州で需要が落ち込んでいる。例えば昨日の時点で欧州は貯蔵能力の88%の在庫を抱えており、冬が本格化するまではLNGの輸出が制限されると考えられる。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。