エネルギー速報:EIA週間原油統計(つらつら分析8月13日)

 

ダイジェスト
EIA週間統計の総評

今週発表のEIA週間原油統計では原油在庫が451万バレルと3週間連続の減少となった。原油在庫は急落した4月末の水準を下回った。この他原油生産量が日量30万バレル減少した1070万バレルとなり大きな減少となった。石油製品ではガソリン在庫が72万バレル、留出油在庫が232万バレルの減少となり、原油と全ての石油製品を合わせた在庫量は21億バレルと前週比で800万バレルの減少となった。一方でオクラホマ州クッシングの原油在庫は133万バレル増と増加が続いている。

原油と石油製品の在庫

原油在庫が451万バレルと3週間連続の減少で、SPRを除く在庫は5億1400万バレルとなり、4月17日の水準まで在庫が減少している。ガソリン在庫が72万バレル、留出油在庫が232万バレルの減少となった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は133万バレル増と6週間連続の増加となっている。

API統計 EIA統計  EIA統計前週  EIA統計2週前  EIA統計3週前  
原油(万バレル)440減451減737減1061減489増
ガソリン(万バレル)131減72減41増65増180減
留出油(万バレル)295減232減159増50増107増
クッシング在庫(万バレル)107増133増53増130増137増
表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれ図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。原油の在庫が減少し今年4月の在庫水準を下回っている。

図1 原油在庫推移(出展元 EIA)
図2 ガソリン在庫推移(出展元 EIA)
図3 留出油在庫推移(出展元 EIA)
原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)

今週の原油生産量は日量1070万バレルとなり前週比で30万バレル減少となった。生産量の内訳ではアラスカの生産量は横ばいだったが、アラスカ以外で日量30万バレル減少の減産となった。この量は最盛期(1310万バレル)に比べて240万バレルの減少となった。今週の輸出は前週と比べて1日当たり約33万バレル増加した314万バレルに、輸入は先週より38万バレル減少して562万バレルとなった。輸入の内訳は日量でカナダ産343万バレル(前週378万バレル)、サウジアラビア産29万バレル(前週19万バレル)、メキシコ産58万バレル(前週53万バレル)、イラク産35万バレル(前週4万バレル)、コロンビア産10万バレル(前週28万バレル)、ナイジェリア産4万バレル(前週10万バレル)、ブラジル産0万バレル(前週10万バレル)等でサウジアラビア産、メキシコ産、イラク産等が増加しカナダやコロンビアからの輸入が減少した。輸出入では日量248万バレルの輸入超過となっている。
今週、Adjustmentが前週の-60万バレルに比べて111万バレルの増加となり51万バレルとなった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられる。今週の統計は前週と反対に供給が増える形で不確実性が大きくなった。

原油生産と輸出入今週   前週   2週前   3週前   4週平均  前年同時期  
原油生産(万バレル/日)107011001110111010971230
戦略備蓄増加(万バレル/日)000000
原油輸入(万バレル/日)562601514594568771
原油輸出(万バレル/日)314281321299304268
Adjustment(万バレル/日)51-604852019
表2 原油生産と戦略備蓄、輸出入 (出展元 EIA)
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率

製油所の稼働率が1.4%上がった81.0%となり新型コロナウイルスの感染拡大で稼働率が減少した4月以来最も高い値となった。製油所への原油投入量は日量約2万バレル増加し1465万バレルとなった。前年の94.8%に比べると稼働率は大幅に低い。前週と比較してガソリン生産量は日量約30万バレル増加した960万バレル、ジェット燃料の生産は約8万バレル減少した93万バレル、留出油の生産量は約12万バレル減少した478万バレルとなった。

製油所稼働率等今週   前週   2週前  3週前  4週平均 前年度同時期   
原油投入量(万バレル/日)146514631459142014521730
製油所稼働率(%)81.079.679.577.979.594.8
ガソリン生産(万バレル/日)  9609309159079101041
ジェット燃料生産(万バレル/日)9385928689198
留出油生産(万バレル/日)   478490478476481507
表3 石油製品生産量 (出展元 EIA)
石油製品供給(日量、需要)

石油製品の供給(需要)では前週と比較してガソリン供給が日量27万バレル増加した888万バレル、ジェット燃料の供給は3万バレル減少した98万バレル、留出油の供給は前週と比べて16万バレル増加し386万バレルとなった。

石油製品供給(日量)今週  前週  2週前  3週前  4週平均  前年同時期  
ガソリン供給(万バレル/日)888861880855871993
ジェット燃料供給(万バレル/日)98101102107102201
留出油供給(万バレル/日)386370363322374495
表4 石油製品供給(需要)量 (出展元 EIA)
石油製品需給(日量)

前週と比べて製油所の稼働率が1%以上上昇したが、原油消費量は日量2万バレルの微増にとどまった。石油製品ではガソリンの生産量が前週比で30万バレル増加、供給量は27万バレルの増加となった。輸入も37万バレルの増加となったことで精製物としてのガソリン在庫は増加している。これは発表と矛盾しているが、EIAが発表するガソリン在庫にはアメリカでの販売時にガソリンに添加物として加えられているエタノールの在庫などが含まれている。今週はこれら添加物の在庫が減少したことで、発表されたガソリン在庫は減少となった。留出油は生産量が前週比12万バレル減少し、供給量が16万バレルの増加だったことに加えて、輸入が17万バレル増加したのに対し、輸出が輸入を上回る29万バレル増加したことで在庫減少となった。ジェット燃料の生産量は8万バレルの増加で、供給量は3万バレルの減少となっている。依然として、ジェット燃料の需要は低く前年の半分程度となっている。石油製品全体の供給(需要)量は日量1936万バレルと、前週の1791万バレルに比べて約145万バレルの大幅な増加となった。原油を始めガソリン等主要な石油製品の在庫が減少となり、全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は21億000万バレルと前週から約800万バレルの減少となった。

石油製品価格

表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となる。ガソリンの市中への供給量は減少したがガソリン卸売価格は上昇、ディーゼル燃料は供給が増加し、卸売価格は前週からほぼ横ばいとなった。

スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し)8/7   7/31   7/24   7/17   7/10   前年同時期  
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)1.1821.1471.2451.1971.2441.679
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)1.2141.2151.2621.2241.2381.796
原油(ドル/バレル)41.1640.1041.2340.5540.5654.41
表5 石油製品受渡価格 (出展元 EIA)

表6は石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計したものとなる。ガソリン価格は1セント程の小幅な下落、ディーゼル燃料価格は1セント以下の小幅な上昇となった。

小売価格8/10   8/3    7/27   7/20   7/13   前年同時期    
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)2.1662.1762.1752.1862.1952.624
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン)   2.5782.5872.5822.5842.5893.010
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン)2.8262.8342.8382.8362.8423.266
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン)2.4282.4242.4272.4332.4383.011
表6 石油製品全国価格 (出展元 EIA)
今後の見通し

今週のEIAの統計ではアメリカの原油生産が30万バレルの減少となった一方で、製油所の稼働率の向上で、原油の消費量がやや増加した。原油輸出は前週と比べて1日当たり約33万バレル増加した314万バレルに、原油輸入は先週より38万バレル減少して562万バレルとなった。石油製品についてはガソリン、留出油共に在庫減となった。ただし、ガソリンについては添加物の在庫減によるもので、ガソリンそのものの消費が増加したとは言えない。全ての石油製品と原油を合わせた在庫量は21億バレルと前週比で800万バレルの減少となった。市中のガソリン、ディーゼル燃料の価格はほぼ横ばいで、不足しているような状況にはないと考えられる。

アメリカの新型コロナウイルス感染者は500万人を超えた。新規の患者数の増加こそピークを超えているが、経済活動の制限の結果であり、再度の経済再開の動きがあれば、患者数が増加に転じる可能性は否定できない。一方で、行楽シーズンも後3週間余りとなり、夏の原油の需要期も間もなく終了する。それに応じて今後は製油所の稼働率が下がっていくと考えられ、再度原油在庫は増加に転じると考えられる。また、クッシング在庫は6週連続の増加となっており、需要の先行きは暗いのではないだろうか。一方で、今週はアメリカの原油生産が日量30万バレルと大きく減少した。この流れが今後も続くかどうかには注目される。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。