エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の在庫見通し(つらつらコラム8月14日)

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週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

昨日、EIAが発表した天然ガス在庫量(8月1日から8月7日までの在庫増減)は前週より58Bcf増加(予想は54Bcf増)した3232Bcfとなり、平年の同時期に比べ15.3%(前週比+0.2%)多くなっている。今週も平年と比べて暑い日々が続くものの、電力需要は更に減退し、天然ガス在庫の増加スピードが加速している。在庫の増加量は58Bcfで平年の在庫増加量である54Bcfを上回り、過去5年で最大の在庫量となった。ただ、昨日の天然ガス市場は統計発表後には在庫の増加を懸念して一時下げたが、暑さが下旬まで続き冷房用需要が増加するとの見方から上昇している。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)

地域別の天然ガス在庫の増減を見てみよう。表1はアメリカの地域別在庫の内訳となる。アメリカ西海岸や南部での気温低下による需要減少があり、全ての地域で在庫が増加となった。在庫量の合計は3332Bcfで平年と比べて443Bcf、前年と比べて608Bcf多くなっている。今後の在庫増加が平年並みの増加だとした場合の10月31日時点の在庫予想は先週より若干増加した4166Bcfとなった。この量はアメリカの天然ガス貯蔵施設の設計容量(4693Bcf)の88.7%、有効容量(4261Bcf)の97.7%に相当する。有効容量の残りは2.3%しかなく、10月末に飽和状態になる可能性は極めて高い。

天然ガス需要と供給

次に天然ガスの需給を見てみよう。表2は8月6日から8月12日までの天然ガス供給の内訳となる。天然ガスの生産量は日量89.6Bcfと前週の88.6Bcfと比べて1.0Bcfの増加となった。輸入ではカナダからの輸入が0.1Bcfの微増となり、供給量全体は1.2Bcfの増加となった。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は表2と同じ期間(8月6日から8月12日)の部門別天然ガス需要の表となる。一日当たりの総需要量は86.2Bcfとなり前週比で0.9Bcfの増加となった。発電用需要は40.5Bcfと前週比で0.4Bcfの小幅な増加となった。工業用は20.5Bcfと前週比で0.2Bcfの減少、住宅用・商業用は8.4Bcfと前週比で0.2Bcfの増加となり大きな差はなかった。輸出需要では、メキシコ向けのパイプライン輸出が5.6Bcfと前週比で0.1Bcfの減少、LNG輸出は4.4Bcfと0.6Bcfの増加だった。LNGの輸出は6月末以来初めて4.0Bcfを上回り、需要の増加を牽引した。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2はベーカー・ヒューズ社が毎週発表している原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)で8月4日の情報までが反映されている。リグ数の合計は247基と前週比で4基の減少となった。

図2 原油・天然ガス採掘用稼働リグ数推移(出展元 EIA)

表4は原油と天然ガスの稼働中リグ数の前週からの変化の一覧となる。8月4日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が4基減った176基、天然ガス採掘用には変化がなく、どちらの用途でもない2基を加えて合計247基だった。原油採掘用リグ数が微減している。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数の前週比比較と前年比比較(出展元 EIA)
今後の見通し

今週の在庫統計では天然ガスの生産量は1.0Bcfの増加となった。8月5日時点の在庫は前週比で58Bcf増加と各社予想の54Bcfを上回ったことで、天然ガス相場は一旦下げたものの、依然として冷房用需要が増加するとの見方を材料とする買いが強く、結局引けにかけて上昇している。
発表された8月6日から12日にかけての天然ガス需要では冷房用需要増加は横ばいといえる状態となっているが、輸出用のLNGの需要が高まりを見せ6月以来初めて4.0Bcfを上回った。既に、アメリカの夏の気温のピークは過ぎており、電力用需要は次第に減少すると予想される。生産量については、現在ガス田の一部が夏のメンテナンス期間にあると伝えられており、メンテナンスの終了次第、生産量は7月の水準まで回復に向かう見込み。
在庫が過去最大量まで増加する中にあっても、LNGの輸出期待から天然ガス生産に対する見方は強気と報道されている。実際貨物のキャンセル量が減少していることはそれを裏付けているように見えるが、国内需要の減少によって欧州や日本など主要輸入国の貯蔵施設は一杯といって良い状況にあり、6月末にはLNGタンカーを貯蔵施設として使用しているという情報も見られた。唯一中国のみが、LNGを旺盛に輸入しており、日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となっている。中国以外の国々で輸入が本格的に再開されるには需要期となる冬を待つ必要があるが、既に抱えている大量の在庫を考えると、年内にはそれほどLNG輸入が増えることはないのではないかと筆者は考えている。生産の上昇と輸出の減退はアメリカ国内の在庫増加に響くため、10月31日が近づくと過剰在庫の問題が取引材料としてにわかに浮上してくるのではないだろうか。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。