エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の在庫見通し(つらつらコラム8月21日)

ダイジェスト
週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

昨日、EIAが発表した天然ガス在庫量(8月8日から8月14日までの在庫増減)は前週より43Bcf増加(市場予想は42Bcf増)した3375Bcfとなり、平年の同時期に比べ15.1%(前週比-0.2%)多くなっている。今週も平年と比べて暑い日々が続いたが電力需要は41.2Bcfと0.7Bcfの増加となった。在庫の増加量は43Bcfで平年の在庫増加量である44Bcfとほぼ同量で過去5年で最大の在庫量となっている。昨日の天然ガス市場は統計発表後から取引終了時間まで下げとなり、ほぼ安値で引けている。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)

表1はアメリカの地域別在庫の内訳で、アメリカ西海岸や南部での需要増加でそれらの地域では在庫が減少となった。アメリカ西海岸では記録的な熱波が到来している。在庫量の合計は3375Bcfで平年と比べて442Bcf、前年と比べて595Bcf多くなっている。今後の在庫増加が平年並みの増加だとした場合の10月31日時点の在庫予想は先週より若干増加した4165Bcfとなった。この量はアメリカの天然ガス貯蔵施設の設計容量(4693Bcf)の88.7%、有効容量(4261Bcf)の97.7%に相当する。有効容量の残りは2.3%しかなく将来的に過去最大級の在庫となる予想が続いている。

天然ガス需要と供給

次に天然ガスの需給を見てみよう。表2は8月13日から8月19日までの天然ガス供給の内訳となる。天然ガスの生産量は日量89.5Bcfと前週の89.6Bcfと比べてほとんど横ばいとなる0.1Bcfの減少となった。輸入ではカナダからの輸入は4.9Bcfと横ばいとなり、供給量全体は0.2Bcfの減少となった。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は表2と同じ期間(8月13日から8月19日)の部門別天然ガス需要の表となる。一日当たりの総需要量は87.6Bcfとなり前週比で1.4Bcfの増加となった。発電用需要は41.2Bcfと前週比で0.7Bcfの増加、工業用は20.7Bcfと前週比で0.2Bcfの増加、住宅用・商業用は8.5Bcfと前週比で0.1Bcfの増加となり大きな差はなかった。輸出需要では、メキシコ向けのパイプライン輸出がは5.6Bcfと前週から横ばい、LNG輸出は4.7Bcfと0.3Bcfの増加で、今週も4.0Bcfを上回った。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2はベーカー・ヒューズ社が毎週金曜日に発表している原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)で8月11日の情報までが反映されている。リグ数の合計は243基と前週比で3基の減少となった。

図2 原油・天然ガス採掘用稼働リグ数推移(出展元 EIA)

表4は原油と天然ガスの稼働中採掘リグ数の前週からの変化の一覧となる。8月11日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が4基減った172基、天然ガス採掘用には1基増えた70基となり、どちらの用途でもない2基を加えて合計244基だった。原油採掘用リグ数は今週も微減、天然ガス採掘用リグ数は増加に転じた。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数の前週比比較と前年比比較(出展元 EIA)
今後の見通し

今週の在庫統計では天然ガスの生産量は0.1Bcfの減少と前週から横ばいとなった。8月12日時点の在庫は前週比で43Bcf増加と各社予想の42Bcfを上回ったことや、西海岸に記録的な熱波が到達するなど、前週に暑さが続いたが冷房用需要が予想ほど増加しなかったことを材料に天然ガス相場はそのまま下落し取引終了時間間際に安値を付けている。
発表された8月13日から19日の期間の天然ガス需要は冷房用需要が0.7Bcf増加した。輸出用のLNGの需要も増加が続いた4.7Bcfと先週に引き続き、4.0Bcfを上回った。今後アメリカの夏の気温のピークは過ぎており、電力用需要は次第に減少すると予想される。生産量については、ガス田が引き続き夏のメンテナンス期間にあるため、0.1Bcfの小幅減少とほぼ横ばいとなった。

前週と比べてLNGの輸出は今週も拡大し、熱波によって需要が拡大している冷房用需要と並んで天然ガス需要を牽引した。アメリカの石油・ガス調査会社リスタッドエネジーによると、今年の第3四半期の終わり、つまり来月までに4月以降、新型コロナウイルスの感染対策として行われた都市封鎖のために需要が急減し価格が暴落したために閉鎖していたシェールオイルの生産設備が再開されると報じている。5月にアメリカ国内では25の石油会社が1日当たり77.2万バレルの生産が可能な設備を閉鎖し減産を行っていた。5月以降の原油価格の上昇(需要の回復と必ずしも言えない)に伴い、6月には68.0万バレル、7月には30.6万バレルまで減産規模が減少している。このままのペースで進めは9月には日量30万バレルの生産が回復する。原油生産と同時に産出される天然ガス量も更に増加すると予想される。9月から10月にかけては増加する生産と減少する冷房用需要に対して、LNG輸出がどこまで維持できるかが、価格維持の鍵となると考えているが、先週も述べた通り、世界各地には大量の原油・天然ガス在庫が積み上がっている。加えて、設備の問題からLNGの輸出能力には限り(これまでの最大量は日量10Bcf程度なので残り6Bcf程度)があり、量的に到底冷房用需要の落ち込みをカバーできないことから、筆者は間違いなく過剰在庫の問題が生じて価格は維持できないと考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。