穀物速報:光盤キャンペーンと中国の食糧不足懸念の浮上(つらつらコラム8月26日)

ダイジェスト
突然の光盤キャンペーン

中国では習近平国家主席の指示で食品破棄の問題に取り組む光盤(皿を空にする)キャンペーンを始めた。もともと中国では大勢で大量に食べる習慣があり、レストランでは人数N+1品の料理とスープを注文すると言われているが、これをN-1にしようというキャンペーンとのことである。
中国の大都市圏のレストランでは食べ残しが年間1800万トンに上り、食料費だけで2000億人民元に上るという推計や、大学の食堂で提供される食事の3分の1は破棄されるなどの情報があるが、様々な数字があり正確な数字は分からない。ただ食べ残しが多いのは事実のようだ。
それはさておき、この食べ残しの習慣は長年の悪癖ともいえるものだが、なぜ今になってキャンペーンなのかに疑問符が付く。勘繰った見方をすれば、これは食料破棄の問題ではなく、今後の食糧不足に備えるための問題提起なのではないかと考えられる。実際、2020年には災害が多発しており、食糧生産に打撃があると考えられる。現在発生中の災害の内、主なものを列挙すると次の通り。

長江流域の洪水

中国では6月初旬から2か月近くにわたって豪雨が続き、特に中国南部の長江流域で大洪水が発生している。長江下流域の湖北省、湖南省、安徽省、江西省、江蘇省では中国の24%に当たるおよそ1.5億トンの穀物を生産している。新華社通信が7月19日の時点で災害対策を担当する応急管理部への取材で発表したところでは農地の被災面積は247.8万ヘクタールに及んでいる。これは日本の岩手県と青森県の合わせた面積に相当する。一方で中国全体の農地は1億1606万ヘクタールとのことで、247.8万ヘクタールは全体の2%余り過ぎないと報道されている。ただし、7月以降も長江の水位は低下せず、8月下旬になっても洪水は続いているため状況はさらに悪化していると考えられる。

干ばつ

中国南部では大雨が続いているが、中国東北部では春先から干ばつが続いている中国の穀物生産の20%を占める東北部の黒竜江省、吉林省、遼寧省の3省では降水量が春先から少なく、6月にはやや戻したものの平年比で3割減、7月に入ってからは平年比で9割減となりほとんど雨が降っていない。遼寧省では1951年以来で最小の降水量となったと報じられており、同省のコーンは生産量が前年比で7割減となったと言われている。加えて干ばつ中の6月に雨が降ったためバッタが大量発生しており、干ばつとバッタの食害のダブルパンチとなっている。この他、小麦の主要産地である河南省でも干ばつ被害が出ており、小麦の生産量が減少することが予想されている。

バッタの被害

このコラムでも以前紹介した通り、ラオス国境に近い広西チワン族自治区や雲南省、中国南部の湖北省、湖南省ではイネ科の植物を食べ荒らすバッタ(黄色角竹バッタなど)が大発生しており、こちらも被害が発生している。

中国政府の動き

災害が続く中人民日報は、今年の夏の穀物生産量は前年比0.9%増となり、過去最大となる1.4億トン余りの豊作になると報道した。この発表が正しければ食糧は全く不足しないことになるが、実際には中国は世界各地から農作物の輸入を拡大している。
例を挙げれば、7月26日の中国の税関統計によるとブラジルから大豆を6月だけで1051万トン輸入している。5月比で18.6%、前年同月比で91.0%の増加となり、ブラジル通貨レアルの下落や新型コロナウイルスによる物流停滞リスクを嫌ったブラジルの生産者が輸出を進めていることを考えても記録的な量となっている。
また、米中間は通商問題や香港問題で対立が激化していると言われているが、7月上旬にはUSDA発表で中国はアメリカから豚肉、コーン、木綿、大豆、米、ソルガム等総額320億ドルに及ぶ農産物を購入している、7月14日には176.2万トンのコーンを買い付けるなど、表向きは1月の通商合意の履行のためとしているが、7月下旬以降、昨日までの間にほぼ毎日大豆やコーンなどを購入し続けている。

今後の見通し

長江流域では依然として豪雨が続いているため洪水被害が拡大しており、三峡ダムに流入する水量が8月20日に過去最大を記録する等、水害は収まる見込みが立っていない。実際にどれだけの農作物の被害が出るかは推定するしかないが、過去、1998年の大洪水(今回より規模は下回る)の際には夏の穀物生産量は11%低下したとの報道があった。今回も同規模の損失が出るとすれば、中国の穀物(コーン、米、小麦、大豆、コウリャンなど)生産量はおよそ6.6億トンであるから、約6000万トンの生産低下が発生する可能性があると考えている。中国国内の価格が上昇しているという報道もある中で、穀物の内もともと85%以上を輸入頼る大豆に加えて、コーンや米、小麦などの輸入が今後増加する可能性がある。8月に入ってからの穀物相場の上昇は、基本的にはUSDAの需給報告に対する下振れの生産量予測という実需に起因しているが、その陰に洪水による農作物被害を受けている中国による農産物の大量購入(表向きには貿易摩擦解消を謳っている)もある。中国の食糧不安が解決するまで、コーン相場はしばらく堅調に推移するのではないかと筆者は考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。