エネルギー速報:EIA週間原油統計(つらつら分析8月27日)

 

ダイジェスト
EIA週間統計の総評

今週発表のEIA週間原油統計では原油在庫が468万バレル減少と5週間連続の減少となった。原油在庫は急落した4月末の水準を下回っている。原油生産量は横ばいで、輸出入は255万バレルの輸入超過となったが、今週輸出が100万バレル以上の増加となった。戦略備蓄が4週間連続で取り崩されている。石油製品ではガソリン在庫が458万バレルの減少、留出油在庫は138万バレルの増加となった。原油と全ての石油製品を合わせた在庫量は20億8500バレルと前週比で約1000万バレルの減少となった。一方でオクラホマ州クッシングの原油在庫は27万バレル減少と2週間連続の減少となった。

原油と石油製品の在庫

原油在庫が468万バレルと5週間連続の減少となり、SPRを除く在庫は5億780万バレルと4月17日の水準まで在庫が減少している。ガソリン在庫は458万バレルの減少、留出油在庫は138万バレルの増加となった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は27万バレル減と2週間連続の減少となっている。

API統計 EIA統計  EIA統計前週  EIA統計2週前  EIA統計3週前  
原油(万バレル)452減468減163減451減737減
ガソリン(万バレル)639減458減332減72減41増
留出油(万バレル)226増138増15増232減159増
クッシング在庫(万バレル)65減27減60減133増53増
表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれ図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。5週間連続で原油在庫の減少が続いている。

図1 原油在庫推移(出展元 EIA)
図2 ガソリン在庫推移(出展元 EIA)
図3 留出油在庫推移(出展元 EIA)
原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)

今週の原油生産量は日量1080万バレルで前週から10万バレル増加した。最盛期(1310万バレル)に比べて230万バレル少ない。今週の輸出は前週と比べて1日当たり約123万バレル増加した336万バレルに、輸入は先週より18万バレル増加して591万バレルとなった。輸入の内訳は日量でカナダ産345万バレル(前週335万バレル)、サウジアラビア産31万バレル(前週43万バレル)、メキシコ産57万バレル(前週64万バレル)、イラク産19万バレル(前週0万バレル)、コロンビア産14万バレル(前週27万バレル)、エクアドル産39万バレル(前週27万バレル)、ナイジェリア産16万バレル(前週6万バレル)、ブラジル産6万バレル(前週6万バレル)等で今週はカナダや南米、アフリカからの輸入が増加し、中東やメキシコからの輸入が減少した。輸出入では日量255万バレルの輸入超過で輸出が増加したことから前週比105万バレル減少となっている。
今週、Adjustmentが43万バレルと前週の-42万バレルから85万バレルの増加となった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられる。今週はAdjustmentで在庫をかさましする形となった。

原油生産と輸出入今週   前週   2週前   3週前   4週平均  前年同時期  
原油生産(万バレル/日)108010701070110010871230
戦略備蓄増加(万バレル/日)-25-38-32-0.1-230
原油輸入(万バレル/日)591573562601562721
原油輸出(万バレル/日)336213314281282280
Adjustment(万バレル/日)43-4251-601920
表2 原油生産と戦略備蓄、輸出入 (出展元 EIA)
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率

製油所の稼働率が1.1%上昇した82.0%となり、製油所への原油投入量は日量約23万バレル増加した1471万バレルとなった。前年の95.2%に比べると稼働率は大幅に低いが8月が終わる前に増加に転じた。前週と比較してガソリン生産量は日量約11万バレル増加した951万バレル、ジェット燃料の生産は約12万バレル減少した90万バレル、留出油の生産量は約38万バレルと増加した512万バレルとなった。留出油の生産が前年並みまで大幅に増加している。

製油所稼働率等今週   前週   2週前  3週前  4週平均 前年度同時期   
原油投入量(万バレル/日)147114481465146314621740
製油所稼働率(%)82.080.981.079.680.995.2
ガソリン生産(万バレル/日)  9519409609309451066
ジェット燃料生産(万バレル/日)90102938593191
留出油生産(万バレル/日)   512474478490489519
表3 石油製品生産量 (出展元 EIA)
石油製品供給(日量、需要)

石油製品の供給(需要)では前週と比較してガソリン供給が日量53万バレルと大幅に増加した916万バレル、ジェット燃料の供給は16万バレル増加した114万バレル。留出油の供給は前週と比べて70万バレル増加した395万バレルとなった。

石油製品供給(日量)今週  前週  2週前  3週前  4週平均  前年同時期  
ガソリン供給(万バレル/日)916863888861882989
ジェット燃料供給(万バレル/日)1149898101103185
留出油供給(万バレル/日)395325386370362532
表4 石油製品供給(需要)量 (出展元 EIA)
石油製品需給(日量)

前週と比べて製油所の稼働率は1.1%上昇し、原油消費量は日量23万バレルの増加となった。石油製品ではガソリンの生産量が前週比で11万バレル増加、供給量は53万バレルの大幅増加となった。輸入は1万バレル減少とほぼ横ばいだったが、輸出が18万バレル減少した。供給の増加によりガソリン在庫は減少している。留出油は生産量が38万バレルの増加で、供給量も87万バレルの大幅増加となった。輸入が8万バレルの増加、輸出は42万バレルの減少となり輸出入は在庫増加に作用し生産増加と合わせて留出油は在庫増加となった。ジェット燃料の生産量は12万バレルの減少だったが、供給量は16万バレルの増加となり日量100万バレルを超えて前年の4割程度まで回復してきている。石油製品全体の供給(需要)量は日量1961万バレルと、前週の1715万バレルに比べて約246万バレルの大幅な増加となり、全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は21億8500万バレルと前週から約1000万バレルの減少となった。

石油製品価格

表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となる。ガソリンの市中への供給量は増加したが、ガソリン卸売価格は約3セント上昇した。ディーゼル燃料は供給増加により、卸売価格は前週から約2セントの下落となった。

スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し)8/21  8/14    8/7   7/31   7/24   前年同時期  
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)1.2711.2341.1821.1471.2451.679
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)1.2031.2241.2141.2151.2621.796
原油(ドル/バレル)42.3242.0541.1640.1041.2354.41
表5 石油製品受渡価格 (出展元 EIA)

表6は石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計したものとなる。ガソリン価格は2セントの値上がり、ディーゼル燃料価格は今週もほとんど横ばいだった。

小売価格8/24   8/17   8/10   8/3    7/27   前年同時期    
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)2.1822.1662.1662.1762.1752.624
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン)   2.5952.5772.5782.5872.5823.010
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン)2.8422.8292.8262.8342.8383.266
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン)2.4262.4272.4282.4242.4273.011
表6 石油製品全国価格 (出展元 EIA)
今後の見通し

今週のEIAの統計ではアメリカの原油生産は10万バレルの増加となった。需要側では製油所の稼働率が1.1%の増加となり、原油の消費量が日量23万バレル増加した。原油の輸出入は255万バレルの輸入超過となったが前週比で100万バレル以上輸出が増加した。輸出の増加が主因で原油在庫が減少しているが、原油の輸出先は先日タンカーを仮予約したと伝えられた中国の可能性があると考えている。石油製品についてはガソリンは供給量の増加による在庫減で、留出油は輸出減と生産増加により在庫が増加している。前週より石油製品の出荷が日量246万バレル増加し、全ての石油製品と原油を合わせた在庫量は、20億8500万バレルと前週比で1000万バレルの減少となった。市中のガソリン、ディーゼル燃料の価格を見るとディーゼル燃料は横ばい、ガソリン価格は小幅に上昇しているが、不足しているような状況にはないと考えられる。
今週の原油在庫の減少も輸出主導だった。アメリカ国内の石油製品の供給量(市中の需要)は増加しているが、日量1700万バレルから1900万バレルのレンジに収まっており、供給の増加と減少が1週間おきに起きるサイクルになっている。今週、製油所の稼働率は増加したもののこれは一時的なもので、今後は冬に向かって消費が減っていくと思われる。

今週はOPECプラス関連では大きなニュースはなかったが、先週末にリビア内戦で停戦が成立した。内戦前のリビアは日量150万バレル以上、昨年でも120万バレルの原油を生産していた。カダフィ政権の崩壊以後も内戦が続いているが、特に今年は戦闘が激しかったことで、日量10万バレルを割り込むこともあるなど原油輸出が大きく落ち込んでいた。今後内戦が本当に鎮静化すれば、市場に約100万バレルの原油が供給されることとなり、今後の需給の均衡が更に遅くなることが想定される。また、アメリカ国内の油田も増産に傾いており、年末に向けて原油需給の不透明性が増していると考えられる。ベーカー・ヒューズ社発表の原油採掘用リグ数も増加(先週末で11基増加)が始まっており、今週は実際に生産増加が起きていることが統計で確かめられた。筆者は今後生産増加を切っ掛けとした原油価格の下落がやはり起きるのではないかと考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。