エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の在庫見通し(つらつらコラム8月28日)

ダイジェスト
週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

昨日、EIAが発表した天然ガス在庫量(8月15日から8月21日までの在庫増減)は前週より45Bcf増加(市場予想は45Bcf増)した3420Bcfとなった。在庫は平年の同時期に比べ14.7%(前週比-0.4%)多い状態。今週も電力需要が41.7Bcfと0.6Bcf増加したことが需要を牽引している。在庫の増加量は45Bcfで平年の在庫増加量である49Bcfよりやや少なかったが、過去5年で最大の在庫量となっている。昨日の天然ガス市場は需要拡大やハリケーンによる生産量の減少を材料に2.700ドル付近まで上昇しており、統計発表には大きく左右されなかった。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)

表1はアメリカの地域別在庫の内訳で、今週も引き続き熱波が続いているアメリカ西海岸では在庫量が減少した。在庫量の合計は3420Bcfで平年と比べて438Bcf、前年と比べて580Bcf多くなっている。今後の在庫増加が平年並み(49Bcf)の増加だとした場合に2か月後の10月31日時点の在庫予想は先週より若干増加した4161Bcfとなった。この量はアメリカの天然ガス貯蔵施設の設計容量(4693Bcf)の88.7%、有効容量(4261Bcf)の97.7%に相当する。

天然ガス需要と供給

次に天然ガスの需給を見てみよう。表2は8月20日から8月26日までの天然ガスの供給内訳となる。天然ガスの生産量は日量88.6Bcfと前週の89.5Bcfと比べてほ0.9Bcfの減少となった。輸入ではカナダからの輸入が5.4Bcfと0.5Bcfの増加となり、供給量全体では前週比で0.5Bcfの減少となった。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は表2と同じ期間(8月20日から8月26日)の部門別天然ガス需要の表となる。一日当たりの総需要量は70.8Bcfとなり前週比で0.5Bcfの増加となった。発電用需要が41.7Bcfと前週比で0.6Bcfの増加、工業用は20.7Bcf、住宅用・商業用は8.4Bcfと前週から横ばいとなった。輸出需要では、メキシコ向けのパイプライン輸出が0.5Bcf前週より増加した6.1Bcf、LNG輸出が4.2Bcfと今週も4.0Bcfを上回ったが前週より0.5Bcfの減少となった。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2はベーカー・ヒューズ社が毎週金曜日に発表する原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)で最新の8月18日の情報までが見たもので、リグ数の合計は254基と前週比で10基増加との久方ぶりの大きな増加幅となった。

図2 原油・天然ガス採掘用稼働リグ数推移(出展元 EIA)

表4は採掘用リグの稼働数を原油と天然ガスに分けたものとなる。8月18日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が11基増加した183基、天然ガス採掘用は1基減った69基となり、どちらの用途でもない2基を加えて合計254基だった。原油採掘用リグ数が大幅増となり、天然ガス採掘用リグ数は微減し70前後で推移している。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数の前週比比較と前年比比較(出展元 EIA)
今後の見通し

今週の在庫統計では天然ガスの生産量は0.9Bcfの減少となったEIAのレポートによれば、メキシコ湾上の天然ガス生産がハリケーンの接近で閉鎖されたことが要因。8月19日時点の在庫は前週比で45Bcf増加と各社予想の45Bcfと一致した。平年と比べて在庫量の増加が減少しているが、西海岸に記録的な熱波が到達するなどで冷房用需要が0.6Bcf増加していること前述の生産の減少が要因となっている。
発表された8月20日から26日の期間の天然ガス需要では冷房用需要が0.6Bcf増加した。一方で、先週まで冷房用と並んで需要を牽引していた輸出用のLNGの需要は4.2Bcfと、先週に引き続き4.0Bcfを上回ったものの0.5Bcfの減少となった。代わりにメキシコ向けのパイプライン輸出が0.5Bcfの増加となり、輸出需要全体では前週の水準を維持している。アメリカの夏の気温のピークは過ぎているものの、カリフォルニア州では前週にデスバレーで54.4℃を記録する等、熱波により電力需要が拡大しており、熱波が去るまでは電力用需要は現在の水準の維持か微減にとどまると予想される。ガスの生産量については、ハリケーン接近で今週行われた減産が来週の統計にも表れるため、来週は生産量に一次的な減少が掛かると予想している。一方で、原油採掘用リグの大幅増加が統計に現れるなど、原油高による原油生産拡大の動きが明らかになって来ている。今回増加した原油採掘用リグは主にパーミヤン盆地に存在しており、パーミヤン盆地の油田はガスを付随して生産するため、今後天然ガスの生産が増加していく可能性が極めて高い。加えて、9月中旬までの気温予報では沿岸部の気温は平年以上となる傾向が続くが、それ以外地域の気温は低下する予報となっている。過剰在庫の問題が生じるまでのラグが次第に短くなって来ていると考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。