エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の在庫見通し(つらつらコラム8月7日)

ダイジェスト
週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

昨日、EIAが発表した天然ガス在庫量(7月25日から7月31日までの在庫増減)は平年同時期に比べ15.1%(前週比-0.2%)多くなっている。先週までは夏の熱波の影響で発電用需要が高まっていたが、今週は平年と比べて暑さは続くものの電力需要は減退し、天然ガス在庫の増加スピードは加速している。在庫の増加量は33Bcfで平年の在庫増加量である33Bcfと一致しており、既に過去5年で最大級の在庫量となっている。昨日の天然ガス市場は3日間で0.400ドル上昇した後の高値警戒感と在庫の増加を嫌気して下落した。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)

地域別の天然ガス在庫の増減を見てみよう。表1はアメリカの地域別在庫の内訳で南部の沿岸部とカルフォルニアで天然ガス在庫の減少が続いている。現在の在庫量は3274Bcfで平年と比べて429Bcf、前年と比べて626Bcf多い。今後の在庫増加が平年並みの週33Bcf増だとした場合の10月31日時点の在庫予想は先週の予想と同じ4152Bcfとなった。この量はアメリカの天然ガス貯蔵施設の設計容量(4693Bcf)の88.4%、有効容量(4261Bcf)の97.4%に相当するため、10月末に飽和状態になる可能性が高くなっている。

天然ガス需要と供給

次に天然ガスの需給を見てみよう。表2は7月30日から8月5日までの天然ガス供給側の内訳となる。生産量は日量88.6Bcfと前週の89.2Bcfと比べて0.6Bcfの減少となった。輸入ではカナダからの輸入が0.4Bcfの増加で、供給量全体は0.2Bcfの減少だった。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は表2と同じ期間(7月30日から8月5日)の部門別の天然ガス需要となる。まず、一日当たりの総需要量は85.3Bcfとなり前週比で4.2Bcfの減少となった。発電用需要が40.1Bcfと前週比で4.2Bcf減となり、発電用需要のピークを超えたと考えられる。工業用は20.7Bcfと前週比で0.4Bcfの増加、住宅用・商業用は8.2Bcfと前週比で0.8Bcfの減少だった。輸出需要では、メキシコ向けのパイプライン輸出が5.7Bcfと前週比で0.1Bcfの増加、LNG輸出は3.8Bcfと0.6Bcfの増加だった。LNGの輸出は2週間前の水準を回復したが、量的には前年実績の7割ほどに留まっている。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2は7月28時点のベーカー・ヒューズ社が発表した原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)となる。リグ数の合計は251基と前週比で横ばいとなった。

図2 原油・天然ガス採掘用稼働リグ数推移(出展元 EIA)

表4は原油と天然ガスの稼働中リグ数の前週からの変化の一覧となる。7月28日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が1基減った180基、天然ガス採掘用が1基増えた69基、その他(表には未記入)2基の合計251基だった。直近の天然ガス採掘用リグ数、原油採掘用リグ数はそれぞれほぼ横ばいとなっている。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数の前週比比較と前年比比較(出展元 EIA)
今後の見通し

今週の在庫統計では天然ガスの生産量は微減となったが、7月30日時点の在庫が33Bcfと各社予想の30Bcfを上回ったことが示されると、3日で大きく上昇していた天然ガス相場に高値警戒感が加わって下落した。
最新の天然ガス在庫統計では、冷房用の電力需要増加が減少に転じて全体の需要が減少した。アメリカの夏の気温のピークは過ぎており、今後は図3に示すように平年より気温が高いと言っても電力用需要は次第に減少すると予想される。

図3 6月から9月の発電用天然ガス需要推移(出展元 EIA)

輸出用需要は低迷が続いている。LNG輸出は前週比で0.6Bcf増の3.8Bcfとなったが、最盛期(今年初め)の3分の1程度の水準となっている。一方で、原油価格の上昇により、アメリカ国内の原油・天然ガス採掘用リグ数の減少が止まり、シェールオイル・ガスの生産の増加が始まっている。すぐには生産増加の効果は見えないが生産減少が止まったことで、新型コロナウイルスの感染拡大による需要減も合わせると、今後在庫増加のペースが上がり、夏の在庫増加期の終わり(例年10月末)には在庫が史上最高量に達すると考えられる。現在は金融緩和の資金が流れ込んでいることで天然ガス価格の上昇が起きているが、10月31日までのどこかで天然ガス在庫の増加を材料にした大幅下落が始まると考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。