エネルギー速報:EIA週間原油統計(つらつら分析9月17日)

 

ダイジェスト
EIA週間統計の総評

今週発表のEIA週間原油統計では原油在庫は438万バレル減少となった。原油生産量は90万バレルの増加となり、2週間前の水準を上回っている。原油の輸出入は240万バレルの輸入超過となったが、前週と比べて輸入が40万バレルの減少、輸出が35万バレルの減少となった。戦略備蓄(SPR)は少しずつ放出が行われている。石油製品ではガソリン在庫が38万バレルの減少、留出油在庫は346万バレルの増加となった。原油と全ての石油製品を合わせた在庫量は20億7480バレルと前週比で約200万バレルの増加となった。一方でオクラホマ州クッシングの原油在庫は7万バレル減少となった。

原油と石油製品の在庫

原油在庫が438万バレルと減少に転じ、SPRを除く在庫は4億9600万バレルと久しぶりに前週より増加している。ガソリン在庫は38万バレルの減少、留出油在庫は346万バレルの増加となった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は7万バレル減と減少に転じた。

API統計 EIA統計  EIA統計前週  EIA統計2週前  EIA統計3週前  
原油(万バレル)952
438減203増936減468減
ガソリン(万バレル)376
38減295減432減458減
留出油(万バレル)112減346増167減167減138増
クッシング在庫(万バレル)79減7減183増11増27減
表1 原油・石油製品在庫 (出展元 EIA)

図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれ図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。前週は原油在庫の減少が一旦止まったが、今週再び減少となった。

Stock price graphs
図1 原油在庫推移(出展元 EIA)
Stock price graphs
図2 ガソリン在庫推移(出展元 EIA)
Stock price graphs
図3 留出油在庫推移(出展元 EIA)
原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)

今週の原油生産量は日量1090万バレルでハリケーンの接近による生産減の影響が見られた前週から90万バレル増加した。最盛期(1310万バレル)に比べて220万バレル少ない状態。今週の原油輸入は前週と比べて1日当たり40万バレル減少した500万バレルに、輸出は先週より34万バレル増加して259万バレルとなった。輸入の内訳は日量でカナダ産305万バレル(前週322万バレル)、サウジアラビア産33万バレル(前週10万バレル)、メキシコ産36万バレル(前週89万バレル)、イラク産15万バレル(前週23万バレル)、コロンビア産28万バレル(前週14万バレル)、エクアドル産29万バレル(前週4万バレル)、ナイジェリア産7万バレル(前週13万バレル)、ブラジル産0万バレル(前週7万バレル)等で今週はサウジアラビアやコロンビア、エクアドルからの輸入が増加し、カナダやメキシコからの輸入が減少した。輸出入は日量240万バレルの輸入超過で今週は輸出入が共に減少したが超過幅は前週比6万バレル減となった。今週、Adjustmentが-75万バレルとなり前週の54万バレルから130万バレルの減少となった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられる。今週はAdjustmentで在庫を目減りさせる形となった。

原油生産と輸出入今週   前週   2週前   3週前   4週平均  前年同時期  
原油生産(万バレル/日)10901000970108010351240
戦略備蓄増加(万バレル/日)-30-4-13-25-190
原油輸入(万バレル/日)500543490591604705
原油輸出(万バレル/日)259294300336316317
Adjustment(万バレル/日)75545143658
表2 原油生産と戦略備蓄、輸出入 (出展元 EIA)
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率

製油所の稼働率が4.1%上昇した75.8%となり、製油所への原油投入量は日量約70万バレル増加した1348万バレルとなった。前年の91.2%に比べると稼働率は大幅に低い。ハリケーンの接近で2週間で稼働率が約10%下がったが、約4%しか回復していない。前週と比較してガソリン生産量は日量約10万バレル減少した881万バレル、ジェット燃料の生産は約14万バレル増加した81万バレル、留出油の生産量は横ばいで440万バレルとなった。

製油所稼働率等今週   前週   2週前  3週前  4週平均 前年度同時期   
原油投入量(万バレル/日)134812771386147114621740
製油所稼働率(%)75.871.876.782.080.995.2
ガソリン生産(万バレル/日)  881893953951920945
ジェット燃料生産(万バレル/日)8166859080184
留出油生産(万バレル/日)   440439477512467510
表3 石油製品生産量 (出展元 EIA)
石油製品供給(日量、需要)

石油製品の供給(需要)では前週と比較してガソリン供給が日量8万バレル増加した847万バレル、ジェット燃料の供給は8万バレル増加した94万バレル。留出油の供給は前週と比べて91万バレルと大幅減少した280万バレルとなった。

石油製品供給(日量)今週  前週  2週前  3週前  4週平均  前年同時期  
ガソリン供給(万バレル/日)847839878916870893
ジェット燃料供給(万バレル/日)94869411497190
留出油供給(万バレル/日)280371391395360385
表4 石油製品供給(需要)量 (出展元 EIA)
石油製品需給(日量)

前週と比べて製油所の稼働率は4.1%上昇し、原油消費量は日量71万バレルの大幅増加となった。石油製品ではガソリンの生産量が前週比で12万バレル減少、供給量は8万バレルの増加となった。輸入は2万バレル増加とほぼ横ばいだったが、輸出が20万バレル減少した。供給の増加によりガソリン在庫は減少している。留出油は生産量はほぼ横ばいで供給量は89万バレルの大幅減少となった。輸入が48万バレルの減少、輸出は13万バレルの減少となり、輸出入が相殺したものの供給量の減少が在庫増加に作用した。ジェット燃料の生産量は15万バレルの増加、供給量は8万バレルの増加となったが前年の4割程度にとどまる。石油製品全体の供給(需要)量は日量1702万バレルと、前週の1867万バレルに比べて約165万バレルの減少となり、全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は20億7480万バレルと前週から約200万バレルの増加となった。

石油製品価格

表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となる。ガソリンの市中への供給量は増加したが、ガソリン卸売価格は約6セント、ディーゼル燃料は供給増加により、卸売価格は前週から約5セントの下落となった。

スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し)9/119/48/288/21  8/14    前年同時期  
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)1.1551.2211.2841.2711.2341.679
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)1.0371.0881.1641.2031.2241.796
原油(ドル/バレル)37.3339.6642.9642.3242.0554.41
表5 石油製品受渡価格 (出展元 EIA)

表6は石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計したものとなる。ガソリン価格は2-3セントの値下がり、ディーゼル燃料価格は1セントの値下がりだった。

小売価格9/149/78/318/24   8/17   前年同時期    
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)2.1832.2112.2222.1822.1662.624
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン)   2.6002.6242.6292.5952.5773.010
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン)2.8512.8722.8772.8422.8293.266
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン)2.4222.4352.4412.4262.4273.011
表6 石油製品全国価格 (出展元 EIA)
今後の見通し

今週のEIAの統計ではアメリカの原油生産は90万バレルの増加となった。前週にハリケーンの連続した接近で、メキシコ湾岸の生産施設が閉鎖された影響が見えていたが、急速に回復した。一方で需要側では製油所の稼働率が4.1%の増加となり、原油の消費量が日量71万バレル増加となったが、ハリケーンの影響による稼働率低下が計10%だったのに対して約4%と穏やかに回復している。原油の輸出入は240万バレルの輸入超過ではあるが、前週比で35万バレル輸出が減少したのに対して輸入も40万バレル減少したため原油在庫の減少要因となった。石油製品についてはガソリンは生産量の減少と供給量の増加による在庫減、留出油は供給源により在庫が増加している。前週より石油製品の出荷は日量246万バレル増加し、全ての石油製品と原油を合わせた在庫量は、20億7480万バレルと前週比で200万バレルの増加となった。市中のガソリン、ディーゼル燃料の価格を見ると双方とも小幅に下落している。
今週の原油在庫の減少は輸出入の減少が要因だった。アメリカ国内の石油製品の供給量(市中の需要)は今週減少となったが、8月頃から日量1700万バレルから1900万バレルのレンジ、供給の増加と減少が1週間おきに起きるサイクルになっている。今週、ハリケーンの通過で製油所の稼働率は増加したものの、需要の回復は追いついていない。来週の統計は現在上陸しているハリケーン「サリー」の影響が需要と生産双方に出てくると考えられる。

今週の原油相場はハリケーン「サリー」の影響が見えるが、10%に及ぶ大幅上昇となっており不可解な値動きが続いている。今日行われるJMMCでは10月のOPECプラスの減産量が決定する。サプライズはないと考えられるが速報に注目したい。世界需給を考えると新型コロナウイルスの感染再拡大で需要の下方修正と在庫のだぶつきが続いている。その一方で、アメリカの原油生産が急速に回復しているように見えるため、これから北半球の冬に向かって原油需要が減少していく中で、相場の大幅下落が起きる可能性が高まっていると考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。