エネルギー速報:天然ガス在庫統計と今後の在庫見通し(つらつらコラム9月18日)

ダイジェスト
週間天然ガス在庫
図1 天然ガス在庫量(青線)と5年平均(黒線)、変動幅(灰色)との比較(出展元 EIA)

昨日、EIAが発表した天然ガス在庫量(9月4日から9月11日までの在庫増減)は前週より89Bcf増加(市場予想は76Bcf増、5年平均は77Bcf増)した3614Bcfとなった。在庫は平年の同時期に比べ13.2%多い状態となり、過去5年の同時期で最大の在庫量となっている。アメリカ国内の天然ガス供給量は概ね92Bcf程度と 国内需要と輸出需要を加えたよりも10Bcf以上多い状態が続いており、在庫増加の要因となっているが、予想を上回る電力需要の低下が在庫の増加ペースの加速に結び付いている。
今週の天然ガス生産は前週より1.4Bcf減少した。需要面では電力用需要が32.8Bcfと前週より2.2Bcf減少するなど国内需要が減少したが、LNGの輸出が2.4Bcf拡大したことで補われ需要全体は81.1Bcfと前週より横ばいとなった。
昨日の天然ガス市場は今後の気温低下による需要減少や予想を上回る大きな在庫増を材料に前月3日以来およそ1か月半ぶりに終値が2.000ドルを割り込んだ。ハリケーン「サリー」による生産減は影響しなかった。

表1 地域別天然ガス在庫量(出展元EIA)

表1はアメリカの地域別在庫の内訳で、熱波が続いているアメリカ西海岸(PacificやMountain)では在庫量の増加は小幅だったが、それ以外の地域では20Bcf以上在庫が増加している。在庫量の合計は3614Bcfで平年と比べて421Bcf、前年と比べて535Bcf多くなっている。今後の在庫増加が平年並み(77Bcf)の増加とした場合に来月10月31日時点の在庫予想は先週より若干増加した4144Bcfとなった。この量はアメリカの天然ガス貯蔵施設の設計容量(4693Bcf)の88.3%、有効容量(4261Bcf)の97.3%に相当する。

天然ガス需要と供給

次に天然ガスの需給を見てみよう。表2は9月10日から9月16日までの天然ガスの供給内訳となる。天然ガスの生産量は日量87.7Bcfと前週の89.1Bcfと比べて1.4Bcfの減少となった。カナダからの輸入は3.9Bcfと0.3Bcfの増加となり、供給量全体では前週比で1.1Bcfの減少となった。

表2 部門別天然ガス供給量(出展元EIA)

表3は表2と同じ期間(9月10日から9月16日)の天然ガスの部門別需要の表となる。一日当たりの総需要量は61.8Bcfとなり前週比で1.9Bcfの減少となった。発電用需要が32.8Bcfと前週比で2.2Bcfの減少、工業用は20.8Bcfと前週から0.1Bcfの微増、住宅用・商業用は8.3Bcfと前週から0.2Bcfの微増となった。輸出需要では、メキシコ向けのパイプライン輸出が0.3Bcf前週より減少した5.7Bcf、LNG輸出は前週から2.4Bcfの大幅増加となる7.0Bcfだった。

表3 部門別天然ガス需要量(出展元EIA)
採掘用リグ稼働数

図2はベーカー・ヒューズ社が毎週金曜日に発表する原油・天然ガス採掘用リグ数の推移(色はリグの採掘方法の違い)で最新の9月1日の情報までを見たもので、リグ数の合計は254基と前週比で2基減少した。

図2 原油・天然ガス採掘用稼働リグ数推移(出展元 EIA)

表4は採掘用リグの稼働数を原油と天然ガスに分けたものとなる。9月8日の時点のリグ数は、前週に比べて原油採掘用が1基減少した180基、天然ガス採掘用も1基減少した71基となり、どちらの用途でもない3基を加えて合計254基だった。原油採掘用リグ数は185基付近、天然ガス採掘用リグ数は70基付近で推移している。

表4 原油採掘リグ数と天然ガス採掘リグ数の前週比比較と前年比比較(出展元 EIA)
今後の見通し

今週の在庫統計では天然ガスの生産量(9月10日から16日)は1.4Bcfの減少となった。EIAのレポートによれば、メキシコ湾上の天然ガス生産がハリケーン「ローラ」の接近で閉鎖されたことが要因となっている。9月11日時点の在庫は前週比で89Bcf増加と各社予想の76Bcf増を上回った。平年と比べて西海岸に記録的な熱波が到達するなど、冷房用需要の増加が天然ガス需要を支えてきたが、夏の終わるとともに在庫増加のペースが再度上がってきている。
レポートされた9月10日から16日の期間の天然ガス需要では、東海岸からメキシコ湾にかけての気温低下で冷房用需要が2.2Bcfの大幅減少となった。一方で、輸出用のLNGの需要が今週2.4Bcfの大幅増となり、前年を上回る7.0Bcfに達した。メキシコ向けのパイプライン輸出は0.3Bcfの減少した5.7Bcfとなった。国内需要の減少を輸出需要が補った形で、天然ガス需要全体は前週から横ばいだった。ただ、筆者はこのLNGの輸出の急増は、ハリケーンのメキシコ湾への連続した襲来で輸出施設が影響を受けた反動による一時的な増加ではないかと考えている(例えば、主要輸出先である欧州のガスの在庫率は93%台となっており、大量の需要があるとは考えにくい)。
冷房用電力需要は、アメリカのカリフォルニア州など太平洋側では熱波が続いていることで需要が維持されているが、他の地域では需要が減少しており、前月と比べると約10Bcf縮小している。天然ガスの生産量については前週より減少したものの、前月と同水準となっており、横ばいの状態となっている。来週はハリケーン「サリー」の接近で今週前半に行われたメキシコ湾上などの生産施設閉鎖による減産が、統計に表れてくると思われる。ただしこれも一時的なもので、原油採掘用リグ、天然ガス採掘用リグの数に大きな動きはないため、ハリケーンの通過後は天然ガスの生産は元の水準まで回復する可能性が極めて高い。天然ガス在庫は平年と同じ在庫増加ペースなら10月末に貯蔵施設の97%、今週のペース(平年+10Bcf)なら10月末に貯蔵施設はほぼ100%となることが予想される。昨日2.000ドルを割り込んだ天然ガス価格はこの在庫問題から1ドル台前半へ向けてより一層下落するのではないかと考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。