目次
ダイジェスト
- 原油在庫は163万バレル減少
- 原油生産量は日量1070万バレルで20万バレルの減少、アラスカの生産が5.4万バレルの減少となった。
- 需給調整分(Adjustment、後述)は93万バレル
- 輸出入は輸出が16万バレル増加、輸入が43万バレルの増加、214万バレルの輸入超過ではあるが、輸入減少が在庫減少の一因となった
- ガソリンの在庫は402万バレル減少
- 要因は輸入量の減少と輸出量の増加
- ガソリン生産量は50万バレル増加、供給量は4万バレル増加
- ガソリン輸入量は13万バレル減少、輸出量は24万バレル増加
- 留出油在庫は336万バレル減少
- 要因は供給量の増加
- 留出油の生産量は7万バレル増加、供給量が115万バレル大幅増加
- 留出油の輸入量は2万バレル増加、輸出量は9万バレル減少
- 原油と石油製品を合わせた在庫量は20億6660万バレル(前週比800万バレル減少)
- オクラホマ州クッシング在庫は0.4万バレル増加
EIA週間統計の総評
今週発表のEIA週間原油統計では原油在庫は163万バレル減少となった。原油生産量は20万バレルの減少となった。アラスカの生産が5.4万バレル落ち込んだ。原油の輸出入は214万バレルの輸入超過となったが、前週と比べて輸入が16万バレルの増加、輸出が43万バレルの減少となった。戦略備蓄(SPR)は8.3万バレル放出が行われている。石油製品ではガソリン在庫が402万バレルの減少、留出油在庫は336万バレルの減少となった。原油と全ての石油製品を合わせた在庫量は20億6660バレルと前週比で約800万バレルの増加となった。一方でオクラホマ州クッシングの原油在庫は0.4万バレル増加とほぼ横ばいとなった。
原油と石油製品の在庫
原油在庫が163万バレルと減少が続き、SPRを除く在庫は4億9600万バレルと久しぶりに前週より増加している。ガソリン在庫は402万バレルの減少、留出油在庫は336万バレルの減少となった。オクラホマ州クッシングの原油在庫は0.4万バレル増と増加に転じた。
API統計 | EIA統計 | EIA統計前週 | EIA統計2週前 | EIA統計3週前 | |
原油(万バレル) | 952 減 | 163減 | 438減 | 203増 | 936減 |
ガソリン(万バレル) | 376 増 | 402減 | 38減 | 295減 | 432減 |
留出油(万バレル) | 112減 | 336減 | 346増 | 167減 | 167減 |
クッシング在庫(万バレル) | 79減 | 0.4増 | 7減 | 183増 | 11増 |
図1は原油在庫の過去2年分の推移、図2はガソリン在庫の過去2年分の推移、図3は留出油在庫の過去2年分の推移となる。それぞれ図は今年の在庫推移(青線)と過去5年間の在庫レンジ(灰色)とを比較している。今週は留出油在庫も減少となった。



原油生産と輸出入、戦略備蓄(日量)
今週の原油生産量は日量1070万バレルだった。ハリケーン「ベータ」の接近による生産減の影響はなく、アラスカの産油量が54万バレル減少したことが要因となった。最盛期(1310万バレル)に比べて240万バレル少ない状態。今週の原油輸入は前週と比べて1日当たり16万バレル減少した516万バレルに、輸出は先週より43万バレル増加して302万バレルとなった。輸入の内訳は日量でカナダ産293万バレル(前週305万バレル)、サウジアラビア産30万バレル(前週33万バレル)、メキシコ産80万バレル(前週36万バレル)、イラク産0万バレル(前週15万バレル)、コロンビア産35万バレル(前週28万バレル)、エクアドル産25万バレル(前週29万バレル)、ナイジェリア産3万バレル(前週7万バレル)等で今週はメキシコやコロンビアからの輸入が増加し、カナダやイラクからの輸入が減少した。輸出入は日量256万バレルの輸入超過で今週は輸出入が共に減少したが超過幅は前週比16万バレルの増加となった。今週、Adjustmentが17万バレルとなり前週の-75万バレルから93万バレルの増加となった。Adjustmentは需要と供給それぞれの不確実性(計算のずれなど)のつじつまを合わせて相殺するために需給の計算に加えられる。今週はAdjustmentで在庫を増加させる形となった。
原油生産と輸出入 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年同時期 |
原油生産(万バレル/日) | 1070 | 1090 | 1000 | 970 | 1032 | 1250 |
戦略備蓄増加(万バレル/日) | -11 | -30 | -4 | -13 | -16 | 0 |
原油輸入(万バレル/日) | 516 | 500 | 543 | 490 | 512 | 637 |
原油輸出(万バレル/日) | 302 | 259 | 294 | 300 | 289 | 298 |
Adjustment(万バレル/日) | 17 | -75 | 54 | 51 | 17 | 96 |
*Adjustmentの-はマイナス補正を意味している
石油製品生産量(日量)と製油所稼働率
製油所の稼働率が1.0%低下した74.8%となり、製油所への原油投入量は日量約11万バレル減少した1337万バレルとなった。前年の89.8%に比べると稼働率は15%と大幅に低い。ハリケーンの接近で月の初めに稼働率が約10%下がったが、約4%しか回復していないまま稼働率は低下に転じた。前週と比較してガソリン生産量は日量約50万バレル増加した931万バレル、ジェット燃料の生産は約3万バレル減少した78万バレル、留出油の生産量は7万バレル増加した447万バレルとなった。
製油所稼働率等 | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年度同時期 |
原油投入量(万バレル/日) | 1337 | 1348 | 1277 | 1386 | 1337 | 1651 |
製油所稼働率(%) | 74.8 | 75.8 | 71.8 | 76.7 | 74.8 | 89.8 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 931 | 881 | 893 | 953 | 915 | 1024 |
ジェット燃料生産(万バレル/日) | 78 | 81 | 66 | 85 | 77 | 177 |
留出油生産(万バレル/日) | 447 | 440 | 439 | 477 | 451 | 500 |
石油製品供給(日量、需要)
石油製品の供給(需要)では前週と比較してガソリン供給が日量4万バレルと小幅に増加した851万バレル、ジェット燃料の供給は1万バレル微減した93万バレル。留出油の供給は前週と比べて115万バレルと大幅増加し395万バレルとなった。
石油製品供給(日量) | 今週 | 前週 | 2週前 | 3週前 | 4週平均 | 前年同時期 |
ガソリン供給(万バレル/日) | 851 | 847 | 839 | 878 | 854 | 934 |
ジェット燃料供給(万バレル/日) | 93 | 94 | 86 | 94 | 92 | 150 |
留出油供給(万バレル/日) | 395 | 280 | 371 | 391 | 360 | 389 |
石油製品需給(日量)
前週と比べて製油所の稼働率は1.0%低下し、原油消費量は日量11万バレルの減少となった。石油製品ではガソリンの生産量が前週比で50万バレルの増加、供給量は4万バレルの増加となった。輸入は13万バレル減少で輸出が24万バレル増加した。供給と輸出の増加によりガソリン在庫が減少している。留出油の生産量は7万バレルの増加、供給量は115万バレルの大幅増加となった。輸入が2万バレルの増加、輸出は9万バレルの減少となり、供給量の大幅増加が在庫減少の要因となった。ジェット燃料の生産量は3万バレルの減少、供給量は1万バレルの減少となった。供給(需要)は前年の3割程度にとどまる。石油製品全体の供給(需要)量は日量1843万バレルと、前週の1702万バレルに比べて約141万バレルの増加となり、全ての石油製品在庫に原油在庫を加えた全石油在庫は20億6660万バレルと前週から約800万バレルの減少となった。
石油製品価格
表5はニューヨーク港渡しの石油製品の価格となる。ガソリン・ディーゼル燃料の市中への供給量は共に増加したが、ガソリン卸売価格は約13セント、ディーゼル燃料の卸売価格は前週から約9セントの上昇となった。
スポット卸売価格(ニューヨーク港渡し) | 9/18 | 9/11 | 9/4 | 8/28 | 8/21 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン) | 1.288 | 1.155 | 1.221 | 1.284 | 1.271 | 1.789 |
ディーゼル燃料(ドル/ガロン) | 1.171 | 1.037 | 1.088 | 1.164 | 1.203 | 2.000 |
原油(ドル/バレル) | 41.09 | 37.33 | 39.66 | 42.96 | 42.32 | 57.92 |
表6は石油製品の小売価格の全国平均を週ごとに集計したものとなる。ガソリン価格は1-2セントの値下がり、ディーゼル燃料価格は約1セントの値下がりだった。
小売価格 | 9/21 | 9/14 | 9/7 | 8/31 | 8/24 | 前年同時期 |
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン) | 2.168 | 2.183 | 2.211 | 2.222 | 2.182 | 2.654 |
中間グレードガソリン価格(ドル/ガロン) | 2.582 | 2.600 | 2.624 | 2.629 | 2.595 | 3.048 |
プレミアムガソリン価格(ドル/ガロン) | 2.836 | 2.851 | 2.872 | 2.877 | 2.842 | 3.296 |
ディーゼル燃料価格(ドル/ガロン) | 2.404 | 2.422 | 2.435 | 2.441 | 2.426 | 3.081 |
今後の見通し
今週のEIAの統計ではアメリカの原油生産は20万バレルの減少となった。ハリケーン関連でメキシコ湾岸の生産施設が閉鎖されたことが要因ではなく、アラスカの原油生産が5.4万バレルの減少となったことも要因となった。一方で需要側では製油所の稼働率が1.0%の減少となり、原油の消費量が日量11万バレル減少となったが、ハリケーンの影響によって10%低下した稼働率が回復しないまま減少に転じている。原油の輸出入は214万バレルの輸入超過ではあるが、前週比で16万バレル輸入が減少したのに対して輸出が43万バレル減少となり原油在庫の主要要因となった。個々の石油製品ガソリンについては輸入量の減少と輸出量の増加、供給の増加による在庫減、留出油は供給の大幅増加により在庫が減少している。前週より石油製品の出荷は日量141万バレル増加し、全ての石油製品と原油を合わせた在庫量は、20億6660万バレルと前週比で800万バレルの減少となった。市中のガソリン、ディーゼル燃料の価格を見ると双方とも供給が増加し小幅に下落している。
今週の原油在庫の減少は生産の減少と輸出増加、輸入減少が要因だった。アメリカ国内の石油製品の供給量(市中の需要)は今週ディーゼル燃料が大幅に増加する等、増加となったが、8月頃から日量1700万バレルから1900万バレルのレンジ、供給の増加と減少が1週間おきに起きるサイクルが今週も続いている。今週、製油所の稼働率は減少となり、前回のハリケーンの連続接近で低下した稼働率が回復する前に需要減から稼働率が低下に転じている。
今週の原油相場は欧州における新型コロナウイルスの感染再拡大でロックダウンが再開し原油需要の先行きが悪化したこと、リビアの内戦が停止し原油の輸出が再開されて原油の供給量が増加するとの見通しから3営業日連続で下落が続いている。世界需給を考えると、需要の下方修正と在庫のだぶつきが続いている中で、これまで0に近かったリビアの輸出が再開される影響は大きいと考えられる。加えて、アメリカのシェールオイルの生産が今週も回復している。需給バランスが崩れる方向に進んでいるため、在庫増を要因とした相場の大幅下落が起きる可能性が引き続き高まっていると考えている。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。