エネルギー速報:リビア産原油の輸出再開と今後の見通し(つらつらコラム9月30日)

 

ダイジェスト
リビアの原油生産の再開

前週のコラムでお伝えしたように、リビア国内で年初から激化していた内戦が停戦、選挙が行われると決定したことに伴い、これまで生産設備や輸出設備の占拠によってフォースマジュールを宣言していたリビア産原油の輸出が再開される。まず最新の状況を説明すると、下の地図がリビアの原油関連施設を示している。ブルームバーグの報道によれば、これまで稼働していたのはAl Jurf(輸出容量日量4万バレル)、Bouri(日量4.5万バレル)の2港からの日量約9万バレルだったが、Hariga(日量11万バレル)、Berga(日量6万バレル)の2港が再開され、更に24日には3港目のZueitina(日量7万バレル)が再開された。設備の上からは最大約33万バレルの輸出が可能になったと考えられる。先週の時点で既にタンカーによる積み出しが確認されており、これにより少なくとも日量約25万バレルの輸出が行われている。また輸出港の再開後、Waha油田とSamah油田が生産を再開した上、輸出のため増産に移っている模様。

図1 リビア国内の油田、輸出港、パイプライン(出展元 ブルームバーグ)


未だリビアの原油輸出港の内、Zawiya(日量23万バレル)、Mellita(日量16万バレル)、Es Sider(日量34万バレル)、Ras Lanuf(日量22万バレル)など4港、同国最大のSarir油田、Sharara油田やEl Feel油田は未だ閉鎖されているが、順次再開され、JPモルガンやゴールドマンサックスの予想によると年内には日量50万バレル、来年3月までには日量100万バレルまで回復すると見込まれる。

OPECの減産削減以後、来年までの需給見通し

OPECプラスは今年4月より日量960万バレルの減産を行ってきたが、8月には770万バレルへ減産量を削減した。新型コロナウイルスの感染が収まり年末にかけて原油需要が戻るとの予想に基づいた削減と考えられる。当初の予想では、需給の安定は6月中に起きると予想されていたが、実際の需要回復のペースは遅く、未だ需給が平衡したかどうか確認できていない。従って、現状の原油市場ではこのリビアの生産増加分を吸収することが出来ないとの見方がある。これは世界の原油在庫が日量50万から100万バレル積み上がり続け、今年春と同じ状況(陸上のタンクに保管が出来なくなりタンカーが手配される)が将来再び到来する可能性があることを意味している。一方、需要回復に楽観的で、年末までに約2.5億から3億バレルの在庫が減るとの見方も存在し、商品取引大手企業の間でも意見が分かれているという。
IEAやOPECの報告を読むと、需要は改善しているが当初の予想を下回り続けており、在庫が溢れる可能性の方が高いように読める。既に市場関係者の間ではOPECが来年1月に予定している更に200万バレルの減産枠を縮小する計画は実行不可能だとの予想が広がっているようだ。加えて、アメリカの原油生産量が底を打ち拡大傾向にあることや、新型コロナウイルスの感染拡大で欧州ではロックダウンが再開されていることから原油需要の伸びが期待できなくなっており、現在の原油価格では、需給バランスがこれ以上回復することは難しいと考えられる。
最後に、現在選挙戦が行われているアメリカ大統領選挙の行方によっては最後のとどめが刺される可能性が出てきている。トランプ政権はイランとベネズエラに対して強力な制裁を行っており、世界有数の埋蔵量と輸出量を持つ両国の輸出が激減している状態が続いてきた。仮に大統領が変わり政策が転換されると、2019年の初めの実績を元にすれば、両国合わせて日量約300万バレル程の原油が市場に向けて溢れることになる。これらのことを考えると、これから来年にかけていつ何時、原油価格が暴落するか分からない状況がしばらくは続きそうだ。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。