EIAの原油価格予測(つらつら分析1月17日)

 

EIAによる2020年から2021年の原油価格予測

今週EIA(アメリカエネルギー省情報局)が2020年から2021年にかけての原油価格の予測を発表した。2020年の平均価格は59ドル、2021年は62ドルと予想されている。今日はその予想の内容を紹介し、筆者の考えも述べておきたい。

昨年前半からの原油価格の推移

図1はEIAによる2019年の原油価格[WTI原油(青線)と北海ブレント原油(黒線)]と2020年から2021年までの原油価格の予測を示している。2019年初頭はイランやベネズエラへのアメリカの制裁発動の影響で原油価格が上昇していたが4月以降は下落に転じていた。その後、2019年6月以降に原油価格が下げ止まったが、これは中東地域での緊張が高まったためだった。タンカーへの襲撃、ドローンによる製油施設攻撃未遂などがあったが、もっとも大きな事件は9月にサウジアラビアの輸出用原油処理施設がドローンによる攻撃を受けたことだった。施設が損傷を被りおよそ600万バレル/日の原油が輸出できなくなり、当時54ドル付近だった原油価格は一時的に62ドルまで高騰した。これらの事件による原油輸出に対する影響は長続きせず、原油価格もすぐに落ち着きを取り戻したが、下落傾向にあった原油価格は中東での地政学的リスクが高まったことに支援されて下げ止まっている。EIAの2020年の予測は年平均1バレル59ドルとなっているが、2020年の第1四半期は中東地域の地政学的リスクによるプレミアムが引き続き価格を上昇させるとEIAは予測している。この傾向は4月以降には弱まり、一旦供給過剰によって下落する。2020年後半以降は需要の増加が原油価格を押し上げて2021年の平均価格は1バレル62ドルとなると予測している。次は需給予測について見てみる。

Figure 1. West Texas Intermediate and Brent crude oil prices
図1 WTI原油と北海ブレント原油の価格予想(出展元 EIA)

*この予想が作られた後、2020年の1月のアメリカの空爆とイランの報復攻撃が行われた事件によって原油価格の上昇が起きた。

原油の世界需要と原油生産

図2の上側はEIAの予測する今後2年間の原油を含む液体燃料の生産量と需要予測を比較した図で、下側は燃料在庫の増減予測を示している。現時点で2020年3月まではOPEC+が日量170万バレルの減産を行うが、これは非OPEC加盟国のアメリカ、ノルウェー、ブラジル、カナダなどの生産が2020年中に日量約260万バレル増加(内アメリカは日量約110万バレル)することで相殺される。2020年の第2四半期には生産(図2 production)が増加することで需要(図2 consumption)とのギャップが広がり、在庫が増加することによって原油価格が下落する。図2からは2020年第2四半期の1日当たりの在庫増加量は100万バレルと予測されている。EIAは2020年後半からは世界経済の拡大から原油需要が高まると予測している。

Figure 2. World liquid fuels production and consumption balance
図2 世界の原油需給と在庫増減の予測(出展元 EIA)
筆者の予想

今週、米中間の通商合意が成立し、一時的とはいえ米中間の緊張が緩まった。交渉は第2弾の合意に移るが、順調な合意によりアメリカ経済と2019年は落ち込んでいた中国経済が活性化するならば原油消費が増加する。現在日量1800万バレルのアメリカや日量1300万バレルの中国の原油消費量が仮に1%(中国の成長率の2018年と2019年の差が1%)増えるだけでも日量約30万バレルの需要増加となり、今年中に予想されている世界の原油の増産量や在庫の増加量(日量約100万バレル)と比べても大きな値となる。EIAは来年と予測しているが、筆者は現在の状況ならEIAの予測より早く今年後半には1バレル62ドル付近に達するのではないかと考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。