今週の原油在庫と見通し(つらつら分析2019年11月21日)

 

図1 原油時間足チャート (出展元 サクソバンク証券

昨日の原油相場は火曜日朝方に発表されたAPI在庫統計で原油在庫が595万バレル増加、ガソリン在庫が335万バレル増加、留出油在庫が219万バレル減少したことを受けて売り優勢で始まったが、下値は固くアジア時間は小幅な値動きとなり欧州時間に入ると上昇に転じた。昨日24時30分に発表されたEIAの在庫統計では原油の在庫の増加が予想(約150万バレル増)を下回ったことを受けて57.00ドルを超えた。その後、米中間の第1弾の合意署名が来年に延期される可能性が報道されたこともあり一時下落したが、結局、在庫増加が予想を下回ったことで上昇して引けた(図1)。筆者は報道の後に下げを確認して売りでエントリーを行ったが、底値でエントリーする結果となり非常に残念な結果となった。

EIA週間原油統計    前週    今週    
原油(万バレル)+221+137
ガソリン(万バレル)+186+275
留出油(万バレル)-247-97
クッシング在庫-122-229

それでは、今日もEIAの週間レポートの中身を簡単に見て分析しておきたい。また原油の生産と輸出入から触れていこう。

今週  前週  4週平均前年同時期
原油生産(万バレル/日)1280128012701155
原油輸入(万バレル/日)597575612755
原油輸出(万バレル/日)302263284196

アメリカ国内の原油生産は日量1280万バレル(前週+0万バレル、前年比+125万バレル)と史上最高量となっている。原油輸入は日量597万バレル(前週比-22万バレル、前年比-158万バレル)と減少した。一方の原油輸出は増加して日量302万バレル(前週+39万バレル、前年比+106万バレル)と300万バレル台となった。今週の原油のアメリカ国内向け供給量(生産量+輸入量-輸出量)は前週比で日量17万バレル、週で約120万バレルの減少となった。

今週(4週平均)    前週(4週平均)  前年度同時期(4週平均)  
原油投入量(万バレル/日)160215881652
製油所稼働率87.786.690.6
ガソリン生産(万バレル/日)  101110121004
留出油生産(万バレル/日)   500491503

次にガソリンや留出油の生産は、4週平均では製油所稼働率が平年に比べて約3%低くなっているが、今週の稼働率は89.5%と先週の87.8%を上回り、原油処理量は日量で14.2万バレル(週当たり約100万バレル)増加した。

今週  前週  4週平均前年同時期
ガソリン供給(万バレル/日)919932936918
ジェット燃料供給(万バレル/日)165175176172
留出油供給(万バレル/日)432453435427

次に石油製品の供給量は、日量でガソリンが13万バレル減少、ジェット燃料が10万バレルの減少、留出油が21万バレルの減少となった。

今週  前週  4週平均前年同時期
ガソリン輸出(万バレル/日)88818488
ジェット燃料輸出(万バレル/日)21221922
留出油輸出(万バレル/日)125109108104

一方の石油製品の輸出は、ガソリンが日量88万バレル(前週比+7万バレル、前年比+0万バレル)、ジェット燃料の輸出は日量21万バレル(前週比+7万バレル、前年比-1万バレル)。留出油は日量125万バレル(前週比+16万バレル、前年比+21万バレル)となっていて、留出油の輸出が拡大し週で約100万バレル増加した。

次に原油と精製物の在庫の推移について触れておきたい。

原油在庫(図2)は最近の1か月半は増加傾向で、ガソリン在庫(図3)は過去5年平均より多めだが増加に転じ、留出油の在庫(図4)は5年平均の下限を割り込み今週も取り崩しが続いている。先週金曜日にベーカー・ヒューズ社が発表している稼働中の原油採掘リグ数は先週674基(先週比10基減少)とさらに減ったが、原油生産量は増加傾向にある。

以上をまとめると、原油在庫については、生産の増加で供給が増えているが、製油所の稼働率が回復してきていることで製油所投入量が週約100万バレル増加した他、輸出の増加と輸入の減少から週約120万バレル分の需要が増加したため、合計で220万バレル分原油需要が少なくとも増えている。次にガソリン供給は週100万バレル程減少していて、在庫の増加と合わせて冬を迎えてガソリン需要が減少していることを示していると考えられる。留出油については生産量は増えた一方で供給が週100万バレル以上減少しているが、輸出が前週より約100万バレル増加してなお需要が供給を上回っており、在庫減となっていると考えられる。

次にCTFCの発表する最近5週間の建玉についてみておきたい。

    総建玉    大口投機家
買玉    
大口投機家
売玉    
差引    大口当業者
買玉    
大口当業者
売玉    
差引    
10/152,136,717536,406179,522356,884785,4491,149,906-364,457
10/222,081,290548,951182,779366,172761,2071,128,177-366,970
10/292,045,914552,242168,895383,347746,0981,130,275-384,177
11/52,083,893565,026158,886406,140738,8931,144,839-405,946
11/122,151,499539,082114,485424,597771,4121,196,163-424,751
図5 2019NY原油建玉数(出展元 CFTC)
図6 2019NY建玉数前週比(出展元 CFTC)
図7 2019NY原油建玉買い越し数(出展元 CFTC)

図5は先週までの2019年中の原油建玉数の推移、図6は建玉数前週比、図7は買い越し数となる。大口投機家が買玉を25,944枚減らし、売玉を44,401枚減らしたことで買い越しが424,597枚と増加している。

図8 予想産油量(出展元 EIA)

今日は最後にEIAの発表した原油生産量見通しついて触れておきたい。アメリカの2019年の産油量見通しは10月の発表から日量3万バレル上方に修正され、2019年の平均生産量は日量1230万バレルと修正された。図8の赤線が修正後の産油量となる。また、2020年の産油量見通しも日量11.9万バレル上方修正されて、2019年の産油量に比べると2020年の産油量は前日のコラムで紹介した通り日量100万バレル増加して日量1330万バレルとなると予想されている。次にこの100万バレルの内訳をみていこう。

図9 産油地での生産量推移(出展元 EIA)

図9の左側はアメリカの原油生産量のここ2年間の推移と予測を産油地別に積算したものである。右側は2019年比で2020年の原油生産量予測をこれも産油地別に示した図となっている。アメリカ国内の産油地の中で最も伸びが予想されているのはテキサス州のパーミアン地域で2019年は前年比で日量91.5万バレルの増産となる予測で、2020年は更に日量80.9万バレルを増産する予定。次にメキシコ湾でも今年だけで13.8万バレル、来年は日量11.6万バレル増産を見込む。3番手はアメリカ北部のバッケン地域で今年の増産量は日量15.2万バレル、来年は日量9.6万バレルの増産となる見込み。
11月13日に発表されたIEA(国際エネルギー機関)のWorld Energy Outlook 2019では2020年以降5年間の原油需要の伸びは毎年日量100万バレル程度という推計を出している。アメリカ以外の産油国の生産量が全く同一に維持されると考えても、来年の需給バランスは増産分でカバーされるため今年と同程度と考えることができる。実際にはアメリカ以外の産油国が増産する分を考えれば、原油が余る状況になるため、米中交渉の妥結によって世界経済が加速し原油需要が大幅増加するというような場合や突発的な事態を除けば、中長期的には下落の方向に向かうのではないかと考える。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。