今週の原油在庫と見通し(つらつら分析2019年11月29日)

 

図1 原油時間足チャート (出展元 サクソバンク証券

昨日の原油相場は一昨日にトランプ・アメリカ大統領が署名し香港人権法案が成立したことで、アメリカと中国の間で対立が高まり、経済が減速するとの懸念から開始直後に原油が売られた(図1矢印)。昨日は原油は下落すると予想したものの、欧州時間以降に買戻しがあったため余り利益を出せなかった。
火曜日に発表されたAPI在庫統計では原油在庫363万バレル増、ガソリン在庫437万バレル増、留出油在庫66万バレル減、クッシング原油在庫51万バレル減だった。

EIA週間原油統計    前週    今週    
原油(万バレル)+137+157
ガソリン(万バレル)+275+513
留出油(万バレル)-97+72
クッシング在庫-229-9

それでは、今日も水曜日発表のEIAの週間レポートの中身を見て分析しておきたい。まず原油の生産と輸出入から触れていこう。

今週  前週  4週平均前年同時期
原油生産(万バレル/日)1290128012771076
原油輸入(万バレル/日)619597599789
原油輸出(万バレル/日)348302287169

アメリカ国内の原油生産は日量1290万バレル(前週+10万バレル、前年比+114万バレル)と史上最高量となっている。原油輸入は日量619万バレル(前週比+22万バレル、前年比-170万バレル)と増加した。一方の原油輸出も増加して日量348万バレル(前週+39万バレル、前年比+179万バレル)と前週に続いて300万バレル台となった。

今週(4週平均)    前週(4週平均)  前年度同時期(4週平均)  
原油投入量(万バレル/日)161116021681
製油所稼働率88.187.792.1
ガソリン生産(万バレル/日)  10081011999
留出油生産(万バレル/日)   502500515

今週のアメリカ製油所への原油投入量は日量1611万バレルで前週の日量1602万バレルと増加(週当たり約60万バレル)したものの、前年同時期に比べて低い水準にとどまっている。今週の稼働率は89.3%と前週の89.5%と比べて横ばいとなり原油処理量は日量で10.1万バレル(週当たり約70万バレル)減少した。ガソリンや留出油の生産は横ばいだった。

今週 前週  4週平均前年同時期
ガソリン供給(万バレル/日)920919921916
ジェット燃料供給(万バレル/日)187165130176
留出油供給(万バレル/日)439432417440

次に石油製品の供給量は、日量でガソリンが1万バレル増加、ジェット燃料が12万バレルの増加、留出油が7万バレルの増加となった。

今週 前週  4週平均前年同時期
ガソリン輸出(万バレル/日)938891106
ジェット燃料輸出(万バレル/日)19211919
留出油輸出(万バレル/日)81125103171

一方の石油製品の輸出は、ガソリンが日量93万バレル(前週比+5万バレル、前年比-13万バレル)、ジェット燃料の輸出は日量19万バレル(前週比-2万バレル、前年比-0万バレル)。留出油は日量81万バレル(前週比-44万バレル、前年比+90万バレル)となっていて、留出油の輸出が減少し週で約200万バレル減少した。

次に原油と精製物の在庫の推移について触れておきたい。

原油在庫(図2)は増加傾向が続いており、ガソリン在庫(図3)は過去5年平均の上限に近づいている、留出油の在庫(図4)は今週は増加したものの、なお5年平均の下限に近い。今週水曜日にベーカー・ヒューズ社が前倒して発表した稼働中の原油採掘リグ数は先週668基(先週比3基減少)と10月26日以来減少が続いているが、原油生産量は増加傾向にある。

以上をまとめると、原油在庫については下表のように国内供給が14万バレル増加しており、先週の増加分137万バレルを今週の増加分157万バレルから差し引いた増加分20万バレルとオーダーで一致する。

        週あたりの増減(万バレル)  
原油生産増加+70
製油所投入量減少+63
輸入増加+154
輸出増加-273
合計+14


次にガソリン供給は週920万バレルと横ばいだったが在庫が増加したため、ガソリン需要は減少しているといえる。留出油については生産量・供給量と増加した他、輸出が前週より約200万バレル減少したため在庫が増えたと考えられる。

次にCTFCの発表する最近5週間の建玉についてみておきたい。

    総建玉    大口投機家
買玉    
大口投機家
売玉    
差引    大口当業者
買玉    
大口当業者
売玉    
差引    
10/222,081,290548,951182,779366,172761,2071,128,177-366,970
10/292,045,914552,242168,895383,347746,0981,130,275-384,177
11/52,083,893565,026158,886406,140738,8931,144,839-405,946
11/122,151,499539,082114,485424,597771,4121,196,163-424,751
11/192,123,596541,420111,445429,975739,9841,181,128-441,144
図5 2019NY原油建玉数(出展元 CFTC)
図6 2019NY建玉数前週比(出展元 CFTC)
図7 2019NY原油建玉買い越し数(出展元 CFTC)

図5は先週までの2019年中の原油建玉数の推移、図6は建玉数前週比、図7は買い越し数となる。大口投機家が買玉を増やし、売玉を減らしたことで買い越しが429,975枚と増加している。

最後に今日はアメリカの製油所での消費量と原油生産量について見て終わりにしたい。図8がアメリカの製油所での原油処理量を示している。図中の2018年(青)と2019年(赤)を比較してみよう。3月までは2019年の処理量が上回っていたが、3月以降原油処理量は一度も前年の値を超えていない。

U.S. crude oil refinery inputs graph
図8 アメリカ製油所稼働量(出展元 EIA)

次にアメリカの原油生産量推移を示している図9を見てみると、2018年(赤線)に比べて2019年(青線)は高い位置にあり、およそ日量200万バレル原油生産が多くなっている。

U.S. crude oil production graph
図9 アメリカ原油生産量(出展元 EIA)

まとめると、図9が原油生産量の増加を示しているにも関わらず、図8は原油の処理量=需要が増えていないことを示し、原油が余っているのだと考えられる。国内の原油消費の多くを占めているガソリン在庫が図3で示すように5年平均の上限に近づいていることがそれを裏付けている。ただし、需要が増えていないといっても、ガソリン需要の減少とガソリン消費の効率化の間の区別がつかないため、原因については何も言えないが、今後の中長期的な流れとして、原油在庫・ガソリン在庫がともに従来より速いスピードで積みあがることがありうるのではないだろうか。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。