今週の原油在庫と見通し(つらつら分析2019年12月12日)

図1 原油時間足チャート (出展元 サクソバンク証券

今週火曜日の日本時間明け方に発表されたAPI在庫統計では原油在庫141万バレル増、ガソリン在庫492万バレル増、留出油在庫324万バレル増、クッシング原油在庫353万バレル減だった。

昨日の原油相場はアジア時間から欧州時間にかけては59.00ドルを挟んで小幅な値動きとなった。EIAの原油統計が発表されると予想では280万バレル減少予測に対して82万バレルの増加となったことで、原油余りの懸念から約1ドル下落した。その後買い戻されて下げ幅を削って小幅な下落となった。筆者は下落の際の決済の好機を逃してしまい、高値近くのエントリーだったため損失は出ていないが残念な結果となった。

今週もEIAの週間報告の中身を見ていきたい。以下の表と図は昨日のEIAの週間原油在庫統計の結果と在庫の推移をグラフにしたものとなる。

EIA週間原油統計    前週    今週
原油(万バレル)-485+82
ガソリン(万バレル)+338+540
留出油(万バレル)+306+411
クッシング在庫(万バレル)-30-339

今週の原油在庫(図2)は原油生産は増加しておらず、製油所の稼働率が上昇しているが増加した。ガソリン在庫(図3)や留出油の在庫(図4)は製油所稼働率から今週どちらも精製量が増えたため増加したといえる。これら在庫変動の理由をEIAの週間レポートから分析しておきたい。

下の表は原油の生産と輸出入の今週と前週、直近4週間の平均と前年同時期を比較したものである。

今週 前週  4週平均前年同時期
原油生産(万バレル/日)1280129012851167
原油輸入(万バレル/日)688598625758
原油輸出(万バレル/日)340313326247

アメリカ国内の原油生産は今週も日量1280万バレル(前週-10万バレル、前年比+113万バレル)とやや減少した。原油輸入は日量688万バレル(前週比+90万バレル、前年比-160万バレル)と増加した。原油輸出は日量340万バレル(前週+27万バレル、前年比+93万バレル)と4週連続で300万バレル台となった。

4週平均で見た原油投入量と、製油所稼働率、ガソリン生産と留出油生産を見たものが下の表となる。

今週(4週平均)    前週(4週平均)    前年度同時期(4週平均)  
原油投入量(万バレル/日)165416371733
製油所稼働率90.389.694.8
ガソリン生産(万バレル/日)  99510051008
留出油生産(万バレル/日)   517512544

今週(過去4週平均)のアメリカ製油所への原油投入量は日量1654万バレルで前週の日量1637万バレルから増加し稼働率も高止まりしているが、全年同時期に比べて少ない原油投入量となっている。

下の表は今週1週間の製油所への原油投入量、稼働率、ガソリンと留出油の生産量についてまとめたものとなる。

今週(週平均)     前週(週平均)    
原油投入量(万バレル/日)    16591679
製油所稼働率    90.6%91.9%
ガソリン生産(万バレル/日)     975994
留出油生産(万バレル/日)       522526

今週の製油所稼働率は90.6%と前週の91.6%と90%台を維持した。 原油処理量は日量で1659万バレル(前週比日量20万バレル減少)へと減少した。ガソリンの生産は日量975万バレルへ減少、留出油の生産は日量511万バレルとほぼ横ばいだった。

次に供給側のデータを見ていこう。ガソリンとジェット燃料、留出油などの石油製品供給量をまとめると以下の表となる。

今週前週 4週平均前年同時期
ガソリン供給(万バレル/日)888903907907
ジェット燃料供給(万バレル/日)158195176172
留出油供給(万バレル/日)373355400408

石油製品の1日当たりの供給はガソリンが15万バレル減少、ジェット燃料が37万バレルの増加、留出油が18万バレルの増加となった。

下の表は石油製品の輸出についてまとめたものとなる。

今週 前週 4週平均前年同時期
ガソリン輸出(万バレル/日)918790106
ジェット燃料輸出(万バレル/日)14362020
留出油輸出(万バレル/日)107141113140

石油製品の輸出は、ガソリンが日量91万バレル(前週比+4万バレル、前年比-4万バレル)、ジェット燃料の輸出は日量14万バレル(前週比-22万バレル、前年比-6万バレル)。留出油は日量107万バレル(前週比-34万バレル、前年比-23万バレル)となり、留出油の輸出が週で238万バレル減少した。

以上から原油在庫に対する生産・供給・輸出入の影響をまとめたものが下の表となる。

       原油  ガソリン  留出油  
原油生産増減(万バレル/日)-10製油所生産量(万バレル/日) +975+522
製油所投入量増減(万バレル/日)-20供給量(万バレル/日)888373
輸出入量増減(万バレル/日)+63輸出入量増減 (万バレル/日)-11+34
小計(万バレル/日)+33+76+183
週換算(万バレル/週)+231+272+1671

原油在庫は輸入が増加したことが原油在庫が増加する要因となった。ガソリン在庫は供給量日量888万バレルに対して生産が日量975万バレルとなったため在庫が増加した。留出油在庫は供給量が日量18万バレル増加したが、輸出量が日量34万バレル減少したため増加が続いている、今回の週間在庫増減の理由は以上で説明することができると考えられる。

次にCTFCの発表する最近5週間の建玉について紹介する。

    総建玉    大口投機家
買玉    
大口投機家
売玉    
差引    大口当業者
買玉    
大口当業者
売玉    
差引    
11/52,083,893565,026158,886406,140738,8931,144,839-405,946
11/122,151,499539,082114,485424,597771,4121,196,163-424,751
11/192,123,596541,420111,445429,975739,9841,181,128-441,144
11/262,187,168553,73782,801470,936750,6671,225,443-474,776
12/32,163,757531,120103,085428,035769,4531,207,163-437,710
図5 2019NY原油建玉数(出展元 CFTC)
図6 2019NY建玉数前週比(出展元 CFTC)
図7 2019NY原油建玉買い越し数(出展元 CFTC)

図5は先週までの2019年中の原油建玉数の推移、図6は建玉数前週比、図7は買越し数となる。大口投機家(ファンド)が買玉を約2万2000枚ほど減らし、売玉を約2万枚増やしたことで買越しが約4万2000枚減少している。ファンドは売りとみているようだ。

今後の見通しだが、先週のOPECプラスの会合では、筆者の予想通り協調減産増加幅は市場予想(日量40万バレル増?)より大きい日量50万バレルとなったが、サウジアラビアの自主減産は予想していなかった。原油価格は59.00ドル近傍で高止まりしている。まず最初のポイントは12月15日に期限の迫る対中関税の発動期限で、予定通り発動されれば世界経済の先行き懸念から下落が始まり50.00ドルを割り込むことが予想される。一方で、これ以上相場を上げる材料には乏しいため、合意が成立しても60.00ドルの大台を超えるかは疑問だと筆者は思っている。

筆者の予想を補足するわけではないが、EIAの最新のエネルギー短観から原油価格の長期予想を乗せておきたい。図8に短観の予想(水色)を示すが、1バレル当たり60.00ドルを超えない予想になっている。その理由は図9に示す通り来年度前半(2020年Q1、Q2)の世界の燃料(大部分が原油だがプロパンなどが入っている)生産(水色)に対して、消費(茶色)が伸び悩み在庫(下段のバー)が増加することを挙げている。

West Texas Intermediate (WTI) crude oil price
図8WTI原油価格予想(出展元 EIA)
World liquid fuels production and consumption balance
図9 燃料生産と消費量実績と予想(出展元 EIA)

※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。