シェールエネルギーの生産効率と生産見通し(つらつら分析2019年12月31日)

今日の論点:
生産効率向上による生産量増加と採掘リグ数減少の問題点

2019年はシェール由来の原油・天然ガスの生産が大幅に増加した。生産量は増加しているが採掘リグの数が減少しており、生産効率の向上が生産量の増加を支えている。今日は生産効率とリグ数減少が示す問題点の観点から今後の見通しについて分析しておきたい。
図1は今日の図表中に登場するアメリカのシェールエネルギー(原油・ガス)の主要産地を地図上で示したもの。

図1 シェールエネルギーの主要産地(出典 EIA)

図2は2020年以降の予想を含む原油生産量の推移。2019年は生産量は順調に増加した。2020年以後もシェール原油の増産が続くが、2017年や2018年に比べて速度が鈍化していることが分かる。

monthly U.S. crude oil production by region
図2 原油生産量の推移(出典元 EIA)

図3はシェールガスの生産量推移を見たものでこちらも2017年以降に大幅に増加しており2019年も順調に伸びていることが分かる。

https://www.eia.gov/naturalgas/weekly/img/201911_monthly_dry_shale.png
図3 天然ガスの生産量の推移(出典元 EIA)

図2と3で見るように2019年はシェール原油・ガスの増産が続いた。

リグ数の減少と生産効率の向上

生産効率を見るためにまず採掘用のリグの数を見てみよう。原油や天然ガスの価格低迷は採掘用リグの数を減少させてきている。下表は原油用リグ数と天然ガス用稼働中の採掘用リグ数の増減をまとめたもので2019年12月のリグ数は昨年とに比べて原油で約-23%、天然ガスで-34%と大きく減少している。

表1 採掘用リグ数の推移(出典元 EIA)
*下段は 天然ガス採掘用リグの構成

次の図4は産地の内シェールエネルギーの先進地域であるテキサス州のパーミヤンでの新しく掘られた井戸の生産量を見たもの。左の原油の赤線と右図の天然ガスの青線が新しく掘られた井戸の生産量を示している。この生産量の上昇は生産効率が上昇していることを示している。一方で黒線は採掘用リグ数の推移を見たもので、パーミヤンでも減少していることが分かる。

図4 パーミヤンにおける新規井戸の生産量(出典元 EIA)

図5はパーミヤンでの原油と天然ガスの全体生産量を見たもので、リグ数は減っているが生産量が増加し続けていることが分かる。

図5 パーミヤンにおける原油・天然ガス生産量推移(出典元 EIA)

まとめるとシェールエネルギーの産地では掘削用リグの数を減らして設備投資を抑えつつ既存のリグに高効率の新しい採掘井戸を掘ることで生産量を維持しているということができる。

DUC数(採掘されたが生産されていない井戸)の減少

次の表はDrilled but uncompleted well(DUC)についてまとめたもの。DUCとは掘削されたが生産のための仕上げ作業が行われていない井戸のことで、生産用井戸のストックを意味しており、生産余力がどれだけあるかを示している。

表2 最近のDUC`数の推移(出典元 EIA)

従来型油田・ガス田と異なり、シェール原油・ガスの場合は一つの井戸当たりの寿命は短いと言われている。図6は主な生産地域での原油生産井戸の寿命を示している。長くても5年で井戸が枯れるということを示しており、井戸数の減少分を新しい井戸の採掘で補う必要があることを示している。

average oil production per well in selected DPR regions, as explained in the article text
図6 原油採掘用井戸の生産量の時間推移(出典元 EIA)

リグ数の減少と共に新しい井戸の採掘数も減少しており、DUC数の減少は将来的な生産余力・増産能力の減少を示している。

まとめ

シェールエネルギーはアメリカの原油・天然ガスの生産量を爆発的に増やして、アメリカをエネルギーの純輸出国に転換させることに大きく寄与した。ただし、生産量の増加と輸出拡大は原油・天然ガス価格の低迷を招いていおり、新規投資が減少するという結果も招いている。現在の所は生産効率を高めることで生産量を維持しているが、限界は存在する。年単位の話になるが、現時点の採掘用リグへの投資抑制の影響が徐々に表れてきて、シェール原油・ガスの生産増加が頭打ち、あるいは減少が起きるのではないかと筆者は考えている。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。