
昨日の原油相場は欧州時間に入った頃に、米中通商協議の合意は近いとの報道があり、直後に57.00ドル付近まで上昇した。立会時間に入ると買いの勢いが強くなり24時頃に58.00ドルを突破、日本時間24時30分にEIAが発表する原油在庫統計で原油在庫が減少したことや株高、OPECの総会とOPECプラスの会合での減産拡大期待などを材料に58.50ドル付近まで上昇して引けた。筆者は原油は57.50ドルか58.00ドルで反転すると予想したものの、結局58.50ドルまで上昇したことで、損失を出してしまった。
火曜日の日本時間明け方に発表されたAPI在庫統計では原油在庫372万バレル減、ガソリン在庫293万バレル増、留出油在庫79万バレル増、クッシング原油在庫29万バレル減だった。
今週もEIAの週間報告の中身を見ていきたい。以下の表と図は昨日のEIAの週間原油在庫統計の結果と在庫の推移をグラフにしたものとなる。
EIA週間原油統計 | 前週 | 今週 |
原油(万バレル) | +157 | -485 |
ガソリン(万バレル) | +513 | +338 |
留出油(万バレル) | +72 | +306 |
クッシング在庫(万バレル) | -9 | -30 |
図2 原油在庫(出典元 EIA) 図3 ガソリン在庫(出典元 EIA) 図4 留出油在庫(出典元 EIA)
今週の原油在庫(図2)は減少した。原油生産が引き続き過去最高水準にあるものの、製油所の稼働率が上昇したことで原油消費が増加したことが要因。ガソリン在庫(図3)や留出油の在庫(図4)は今週どちらも生成量が増えたため増加した。これら在庫変動の理由はEIAの週間レポートから分析しておきたい。
下の表は原油の生産と輸出入の今週と前週、直近4週間の平均と前年同時期を比較したものである。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
原油生産(万バレル/日) | 1290 | 1290 | 1285 | 1170 |
原油輸入(万バレル/日) | 598 | 619 | 597 | 721 |
原油輸出(万バレル/日) | 313 | 348 | 306 | 320 |
アメリカ国内の原油生産は今週も日量1290万バレル(前週+0万バレル、前年比+120万バレル)と史上最高量を維持した。原油輸入は日量598万バレル(前週比-21万バレル、前年比-123万バレル)とやや減少した。原油輸出は日量313万バレル(前週-35万バレル、前年比-7万バレル)と3週連続で300万バレル台となった。
4週平均で見た原油投入量と、製油所稼働率、ガソリン生産と留出油生産を見たものが下の表となる。
今週(4週平均) | 前週(4週平均) | 前年度同時期(4週平均) | |
原油投入量(万バレル/日) | 1637 | 1611 | 1708 |
製油所稼働率 | 89.6 | 88.1 | 93.5 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 1005 | 1008 | 998 |
留出油生産(万バレル/日) | 512 | 502 | 530 |
今週(過去4週平均)のアメリカ製油所への原油投入量は日量1637万バレルで前週の日量1611万バレルから増加し稼働率も上がってきたものの、全年同時期に比べて少ない投入量となっている。
下の表は今週1週間の製油所への原油投入量、稼働率、ガソリンと留出油の生産量についてまとめたものとなる。
今週(週平均) | 前週(週平均) | |
原油投入量(万バレル/日) | 1679 | 1633 |
製油所稼働率 | 91.9% | 89.3% |
ガソリン生産(万バレル/日) | 994 | 1006 |
留出油生産(万バレル/日) | 526 | 507 |
今週の製油所稼働率は91.9%と前週の89.3%とに比べて上がり90%台に乗った。 原油処理量は日量で1679万バレル(前週比日量46万バレル増加)へ増加した。ガソリンの生産は日量990万バレルと減少、留出油の生産は日量530万バレルと増加だった。
供給側のデータとしてガソリンとジェット燃料、留出油などの石油製品供給の表から見ていこう。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
ガソリン供給(万バレル/日) | 903 | 920 | 918 | 887 |
ジェット燃料供給(万バレル/日) | 195 | 187 | 181 | 183 |
留出油供給(万バレル/日) | 355 | 439 | 420 | 427 |
石油製品供給は、日量でガソリンが17万バレル減少、ジェット燃料が8万バレルの増加、留出油が84万バレルの増加となった。
下の表は石油製品の輸出についてまとめたものとなる。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 87 | 93 | 87 | 92 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 16 | 19 | 22 | 19 |
留出油輸出(万バレル/日) | 141 | 81 | 114 | 134 |
石油製品の輸出は、ガソリンが日量87万バレル(前週比-6万バレル、前年比–5万バレル)、ジェット燃料の輸出は日量16万バレル(前週比-3万バレル、前年比-3万バレル)。留出油は日量141万バレル(前週比+60万バレル、前年比+7万バレル)となっていて、留出油の輸出が週で420万バレル増加した。
以上から原油在庫に対する生産・供給・輸出入の影響をまとめたものが下の表となる。
原油 | ガソリン | 留出油 | ||
原油生産増減(万バレル/日) | +0 | 製油所生産量(万バレル/日) | +990 | +526 |
製油所投入量増減(万バレル/日) | -46 | 供給量(万バレル/日) | -903 | -355 |
輸出入量増減(万バレル/日) | -14 | 輸出入量増減 (万バレル/日) | -48 | -60 |
小計(万バレル/日) | -60 | +39 | +111 | |
週換算(万バレル/週) | -420 | +272 | +777 |
原油在庫は製油所への投入量が増えたことが減少する要因となった。ガソリン在庫は供給量が日量903万バレルに対して生産が日量990万バレルとなったため在庫が増加した。留出油在庫は輸出量は増えたものの生産量が日量526万バレルと増加したことと供給量が前週の日量439万バレルから約80万バレル減少し、355万バレルとなったため在庫が増加している。今回の週間在庫増減の理由は以上で説明することができると考えられる。
次にCTFCの発表する最近5週間の建玉について紹介する。
総建玉 | 大口投機家 買玉 | 大口投機家 売玉 | 差引 | 大口当業者 買玉 | 大口当業者 売玉 | 差引 | |
10/29 | 2,045,914 | 552,242 | 168,895 | 383,347 | 746,098 | 1,130,275 | -384,177 |
11/5 | 2,083,893 | 565,026 | 158,886 | 406,140 | 738,893 | 1,144,839 | -405,946 |
11/12 | 2,151,499 | 539,082 | 114,485 | 424,597 | 771,412 | 1,196,163 | -424,751 |
11/19 | 2,123,596 | 541,420 | 111,445 | 429,975 | 739,984 | 1,181,128 | -441,144 |
11/26 | 1,187,168 | 553,737 | 82,801 | 470,936 | 750,667 | 1,225,443 | -474,776 |



図5は先週までの2019年中の原油建玉数の推移、図6は建玉数前週比、図7は買い越し数となる。大口投機家(ファンド)が買玉を1万2000枚ほど増やし、売玉を3万枚近く減らしたことで買い越しが約47万0000枚と増加している。ファンドは買いとみているようだ。
今後の見通しについては日本時間で今日の夜のOPECの総会で協調減産が拡大されるかがどうかがポイントになり、総会の結果が発表されるまでは様子見の展開となるだろう。昨日の市場では協調減産幅の拡大観測が広がり期待感から上げ相場となった。筆者は協調減産幅増加が市場予想(日量40万バレル増?)より大きいサプライズによる上げがあると考えているが、今夜の発表がサプライズのない予想通りの協調減産幅増加の場合は利益確定売りが出て下げるのではないだろうか。そうではなく今日の総会の決定が日量120万バレルの協調減産幅維持での協調減産期間延長決定や会議自体の延期など中途半端な場合は、大きな下げが予測され、OPECプラスの会合の開かれる明日も同様に下げ相場となると筆者は考えている。
最後にアメリカの石油の純輸出国化について触れておきたい。図7のように今年9月、アメリカの石油製品の総輸出が総輸入を上回り、純輸出国となった。

すでに昨年11月に原油については純輸出国に転換していたが、今回原油に加えて図9で示すようにガソリン、ジェット燃料、留出油などの石油製品を含めた形で純輸出国へ転換した。これは1949年以来70年ぶりのこととなる。

2020年も原油の生産量の増加が見込まれており、輸入原油より相対的に安価な国内原料を使用できるアメリカ製石油製品の輸出が来年以降も伸びていくのではないだろうか。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。