天然ガスの見通し(つらつら分析2020年1月10日)

図1 天然ガス時間足チャート (出展元 サクソバンク証券
昨日の相場の振り返り

昨日の天然ガス相場はアジア時間前半から買いが入って日本時間15時頃に2.160ドル付近まで上昇したが、15時を過ぎると売りが入って一時2.100ドル付近まで下落した。その後、買い戻されて2.130ドル付近まで上昇した。24時30分にEIA(アメリカエネルギー省情報局)が発表した天然ガス在庫は各社の在庫予想(53から54Bcf減)に対して44Bcf減と在庫の減少が予想を大きく下回った。発表直後に売りが入って再び2.100ドルを割り込んだ(図1矢印)が、1月下旬には冷え込みが強くなるとの天気予報を材料として買いが入って、取引終了時間まで上昇し、2.159ドルと上昇して引けた。

来週以降の気温予報による需要予想と今週の相場予想

最初に、来週以降の暖房用需要を考えるため天気予報を見ておこう。下側の図2Aは6から10日後の平均気温予報、2Bは8から14日後の平均気温予報のGIF画像となる。予報によれば1月下旬にはアメリカの北側で平年より寒くなり、南側は平年より暖かくなる。人口が多くガスの消費量の多いアメリカ東部で気温が平年より下がり冷え込むため、暖房用需要が多少伸びることが予想されるので、天然ガス相場が上昇することが予想されるが、売り圧力が強いため、今週と同様に2.110ドルから2.170ドルのレンジ相場だった今週の動きを続ける場合もありうると筆者は考えている。

図2A 6-10日後(2020/1/5-2020/1/15)気温予報(出展元 NOAA)
図2B 8-14日後(2020/1/7-2020/1/19)気温予報(出展元 NOAA)
天然ガス在庫報告

次に今週のEIAの天然ガス在庫報告と週間報告の中身を見ていこう。

図3 天然ガス在庫推移(出展元 EIA)
*Lower48はアメリカ50州の内アラスカ・ハワイを除く48州のことを指す。

図3はアメリカ48州の天然ガス在庫量の2017年末からの推移を見たもので、現在の在庫(3148Bcf)量は過去5年間平均の中央値(黒灰線)付近となっている。

地域別在庫増減表    2020年1/3在庫(Bcf) 前週との差(Bcf)12/27在庫(Bcf)前週との差(Bcf)12/20在庫(Bcf)
東部756-15771-25796
中西部885-20905-18923
山岳地帯166-7173-4177
太平洋岸244-7251-9260
南部109741093-11094
 海岸部323103134309
 内陸部774-6780-6786
全体3148-443192-583250

過去3週間の在庫量の変動見たものが上の表で、特にアメリカ東部と南部で需要が少なく在庫が減らなかったことがわかる。

需要と供給の内訳
天然ガス需給今週(1/2-1/8)    前週(12/26-1/1)     前年同時期    
Marketed Production(Bcf/日)108.8109.297.9
天然ガス生産(Bcf/日)95.996.387.0
天然ガス輸入(Bcf/日)4.43.45.7
天然ガス供給(Bcf/日)100.499.892.9

上の表は週間報告から天然ガスの供給量についてまとめたもの。生産量は約96Bcfと過去最大に近い量を維持している。

天然ガス
セクター別需要
今週(1/2-1/8)    前週(12/26-1/1)    前年同時期    
消費合計(Bcf/日)93.584.891.5
発電用(Bcf/日)27.224.523.9
工業用(Bcf/日)24.724.225.8
住宅用(Bcf/日)41.636.041.8
パイプライン輸出(Bcf/日)5.14.34.6
パイプラインでの消費やロス(Bcf/日)7.37.16.8
LNG輸出(Bcf/日)8.28.15.0
天然ガス需要(Bcf/日)114.1104.3107.8

次に需要について各セクター別にまとめたものが上の表となる。前週と比べて住宅用や発電量の需要が増加した。今回の在庫報告に反映するのは中央の前週分となるが、住宅用の需要や発電用需要が少なくなっていることがわかる。

需要と気温との相関について
図4A 発電用需要(出展元 EIA)
図4B 住宅・商業用需要(出展元 EIA)

上の2枚の図はそれぞれ発電用(図4A)と住宅・商業用(図4B)天然ガス需要の日ごとの変化を見たものであり、以下のような傾向がみられる。

図5 平均気温と平年からのずれ(出展元 EIA)
*Lower48はアメリカ50州の内アラスカ・ハワイを除く48州のことを指す。

次に天然ガス需要と気温との相関を見てみよう。図5は地域別の平均気温と平年からの気温のずれを示している。1月3日までは全国的に平均より暖かい日が続いた。1月4日以降はアメリカ東部や南部を中心に暖かい日が続いており、アメリカ西側の太平洋岸や山岳部を中心に冷え込んでいる。

まとめると統計に集計される1月3日まで全国的に暖かく穏やかな気温となったため住宅・商業用需要は低調だった。加えて、発電用需要も低かったことで週間在庫減少量が少なくなった。

輸出需要
図6 天然ガス輸出需要(出展元 EIA)

図6は輸出用需要の変化を見たもので、2018年/2019年では約5Bcf/日の水準だったが、2019年/2020年の輸出は8-10Bcfの間で推移している。

まとめ(今週の相場予想と来週の在庫予想)

来週の相場を天気予報から予想する。翌々週の天気予報はアメリカの北側で気温が平年より低下し、逆にアメリカの南側で気温が平年より上昇する見込み。天然ガス消費の多いアメリカ東部で平年以下に気温低下する予報となったため、来週の天然ガスの暖房用需要は増加すると思われるが、売りの圧力も強いと考えられる。筆者は来週の天然ガス相場は今週と同様に2.110ドルから2.170ドルの間のレンジを上下するレンジ相場になると予想する。
今週の天然ガス在庫は平年以上の気温となる地域が広がったため、暖房用需要が伸び悩み、在庫取り崩し量は各社の予想よりも少なくなった。来週の在庫統計には1月3日以降の需要が反映される。住宅・商業用の暖房需要、発電用の需要が両方とも増加傾向にある。来週の在庫の取り崩しは今週より増加すると考えられる。

過去5年間の天然ガス生産、輸出、電力用需要

2019年の生産量と輸出量、電力需要について情報が公開されていたので紹介する。

まず、2019年の天然ガスの生産は過去最大を更新し、1年間の平均で日量90Bcfを超えた。パーミヤン盆地での生産を制約していた輸送用パイプライン容量が今年増設されたため、生産量が増加した。

次に、天然ガスの輸出量だが、新しいLNGの輸出基地が複数稼働した影響で日量12Bcfを超えている。このコラムでも紹介したがキャメロン(5月)、フリーポート(9月、12月)、エルバ島(12月)と年末にかけて新しい基地が稼働したため、年末には輸出量が日量14Bcfを超えた。今後も輸出の増加が予想される。

最後に電力用需要だが、2019年は日量30Bcfを超える過去最高値を記録した。過去最大量の電力消費を背景に発電業者が、天然ガス発電所や再生可能エネルギー発電所を増設したことが影響している。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。