今週の原油在庫と見通し(つらつら分析2020年3月19日)

18年ぶりの安値

昨日の原油相場は新型コロナウイルスの感染者が20万人を超え、世界中で移動が制限されるのに及んで、原油やガソリンの需要が減退するとの見方が強いのに加えて、サウジアラビアとロシア、UAEが原油の増産で需給バランスが崩れるとの見方から売りが膨らみ一時6ドル以上下落して2002年2月以来の安値を付けた。2002年は2001年の同時多発テロ直後の高騰の後の航空需要の落ち込みや、産油国のアメリカ支援表明で一時的に下落した期間に当たる。

EIA週間報告(原油生産と需給、価格)

今週もEIAの週間報告の中身を見ていきたい。今週は積み増しが計画されているアメリカの戦略備蓄(SPR)についても引用してみた。以下の表と図は昨日のEIAの週間原油在庫統計の結果と在庫の推移をグラフにしたものとなる。

表1 EIA週間原油統計(出展元 EIA)

EIA週間原油統計    今週(3/19)    
原油(万バレル)195増
ガソリン(万バレル)618減
留出油(万バレル)294減
クッシング在庫(万バレル)56増

今週の原油在庫(図1)は輸出が増えたため増加幅が減少したと思われる。ガソリン在庫(図2)や留出油の在庫(図3)は製油所稼働率が低下し、供給量に比べて精製量が減ったために減少している。

下の表は原油の生産と輸出入の今週と前週、直近4週間の平均と前年同時期を比較したものである。

表2 原油生産量と輸出入量(出展元 EIA)

原油生産と輸出入今週 前週  4週平均前年同時期
原油生産(万バレル/日)1310130013051160
原油輸入(万バレル/日)653641635693
原油輸出(万バレル/日)437341390339

アメリカの原油生産は日量1310万バレルと過去最大レベルに増大している。原油輸入は日量653万バレルと前週と比べても4週平均から見ても横ばいとなっている。原油輸出は日量437万バレルと今週は増加傾向にある。

製油所への原油投入量と、製油所稼働率、ガソリン生産と留出油生産を4週平均で見たものが下の表となる。

表3 石油製品の生産量(出展元 EIA)

製油所稼働率等(4週平均) 今週(4週平均)     前週(4週平均)    前年度同時期(4週平均)  
原油投入量(万バレル/日)158015901602
製油所稼働率86.987.687.8
ガソリン生産(万バレル/日)  987975976
留出油生産(万バレル/日)   472476487

今週(過去4週平均)のアメリカ製油所への原油投入量は日量1580万バレル、稼働率86.9%と過去と比べて横ばいとなっている。

次に供給側のデータを見ていこう。ガソリンとジェット燃料、留出油などの石油製品の供給量をまとめると以下の表となる。

表4 石油製品の供給量(出展元 EIA)

石油精製物今週 前週 4週平均前年同時期
ガソリン供給(万バレル/日)969944934940
ジェット燃料供給(万バレル/日)173156161179
留出油供給(万バレル/日)401439411470

石油製品の1日当たりの供給は横ばいとなっているが、ガソリンに関しては増加傾向にある。この量はドライブシーズンの供給量に近くなっている。ガソリンはアメリカの多くの地方では生活必需品であり、原油価格の低下に応じたガソリン価格の低下と非常時に備えた買いだめが進行していると考えられる。

下の表は石油製品のここ3週間の価格についてスポット価格と参考のために原油価格をまとめたものとなる。

表5 石油製品のスポット価格(出展元 EIA)

スポット価格(ニューヨーク港渡し)今週 前週 2週間前
レギュラーガソリン価格(ドル/ガロン)0.9291.3831.833
ディーゼル燃料(ドル/ガロン)1.1751.4051.963
原油(ドル/バレル)31.7241.1458.51

原油価格の下落に伴って石油製品の価格も低下しており、特にレギュラーガソリンについては2週間前の半額近い価格となっている。

戦略在庫(SPR)

表6 アメリカの戦略備蓄(出展元 EIA)

今週 前週 前年同時期
戦略備蓄(百万バレル)635635649

アメリカの戦略備蓄は6億3500万バレルと前年より減少している。これは戦略備蓄の販売プログラムで払下げ販売されていることが影響している。

まとめと今後の見通し

今週のEIAの石油統計では原油精製量の低下と生産量の増加によって原油在庫量は増大している。一方の石油精製物に関しては新型コロナウイルスのアメリカでの感染拡大に伴ってガソリンの供給量が増大しており、依然として堅調な水準を維持している。今後は18日にカナダ国境が封鎖されたのと同様に州間の移動が禁じられるような事態が想定されるが、アメリカのほとんどの地域では最低限の外出や輸送にガソリンあるいはディーゼル燃料が必須であり、大幅に需要が落ち込むとは考えにくい。一方の輸出は廉売を行うサウジアラビアなどの産油国との価格競争のため減少が考えられる。今後の原油価格の下落に対しトランプ政権は戦略備蓄の積み増しを計画しているが、未だに備蓄が通常より増加している気配はない。ただし、DOE(アメリカエネルギー省)によれば戦略備蓄の最大容量は7億1350万バレルとなっており、現在6億3500万バレルが既に埋まっている状況となっている。8000万バレルの余裕しかなく、これはアメリカの今週の輸出量がすべて備蓄に回ったとすると約20日分となる。すべてが備蓄に回るとは限らないがが、ほとんど原油価格の下支えには影響はないと考えてよいだろう。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。