目次
ダイジェスト
- 大豆、コーン共に内容にサプライズはなし
以下2020年/2021年シーズンについて - 大豆の予想生産量が増加したことで大豆は下落
- 輸出は据え置き
- コーンの生産が減少したが市場予想の範囲内
- 生産量と期末在庫が引き下げ
- エタノール用需要、輸出は据え置き
- 金曜日に出た降雨予報でコーンベルトの乾燥による作柄悪化懸念が後退し、大豆、コーン共に下落
総評
日本時間10日25時にUSDAより7月の穀物需給報告が発表された。今回の報告では今月の作付面積報告での作付面積の変化に伴うコーンと大豆の生産量と期末在庫の修正が注目材料だったと思われる。しかし、いずれも予想の範囲内で既に相場に織り込み済みの結果だったため影響は小さかった。これまで、コーンベルトの乾燥予報による作柄悪化懸念で相場は上昇していたが、一転、降雨予報となったことで懸念が後退し大きく下落した。
需給-大豆-
まず大豆からみていこう。表1が大豆の2019/2020年シーズン(旧穀)の需給予想と2020/2021年シーズン(新穀)の需給見通しとなる。
2019/2020年シーズン 予想(6月時点) | 2019/2020年シーズン 予想(7月時点) | 2020/2021年シーズン 予想(6月時点) | 2020/2021年シーズン 予想(7月時点) | |
作付面積(万エーカー) | 7610 | 7610 | 8350 | 8380 |
収穫面積(万エーカー) | 7500 | 7500 | 8280 | 8300 |
単収(ブッシェル/エーカー) | 47.4 | 47.4 | 49.8 | 49.8 |
期初在庫(億ブッシェル) | 9.09 | 9.09 | 5.85 | 6.20 |
生産量(億ブッシェル) | 35.52 | 35.52 | 41.25 | 41.35 |
輸入(億ブッシェル) | 0.15 | 0.15 | 0.15 | 0.15 |
供給合計(億ブッシェル) | 44.76 | 44.76 | 47.25 | 47.70 |
消費合計(億ブッシェル) | 38.91 | 38.57 | 43.30 | 43.45 |
内圧砕(油)(億ブッシェル) | 21.40 | 21.55 | 21.45 | 21.60 |
内輸出(億ブッシェル) | 16.50 | 16.50 | 20.50 | 20.50 |
期末在庫(億ブッシェル) | 5.85 | 6.20 | 3.95 | 4.25 |
在庫率(%) | 15.0% | 17.4% | 9.1% | 10.2% |
平均価格(セント/ブッシェル) | 850 | 855 | 820 | 850 |
*2019/2020年の内、作付面積、収穫面積、単収、期初在庫は実測値
すでに収穫の終わっている2019/2020年シーズン(旧穀)の供給側は6月の報告から全項目で据え置きとなった。6月と比較して需要側では、油脂用が21.40億ブッシェルから0.15億ブッシェル引き上げられた21.55億ブッシェルとなったが、需要全体では38.91億ブッシェルから0.34億ブッシェル引き下げられた38.57億ブッシェルとなった。需要減少により期末在庫は6月の報告の5.85億ブッシェルから0.35億ブッシェル増加した6.20億ブッシェルとなった。
2020/2021年シーズン(新穀)では、期初在庫が2019/2020年シーズン(旧穀)の上方修正された期末在庫を引き継ぐため6.20億ブッシェルとなる。供給側では作付面積の増加によって生産量が6月の41.25億ブッシェルから0.10億ブッシェル引き上げられた41.35億ブッシェルとなった他は6月から据え置かれた。一方、需要側では油脂用需要が21.45億ブッシェルから0.15億ブッシェル引き上げられて21.60億ブッシェルとなった以外、輸出等は据え置きだった。結果、期初在庫の増加が最大の要因となり、期末在庫は6月の3.95億ブッシェルから0.30億ブッシェル引き上げられた4.25億ブッシェルとなった。
需給-コーン-
表2がコーンの2019/2020年シーズン(新穀)の需給予想と2020/2021年シーズン(旧穀)の需給見通しとなる。
2019/2020年シーズン 予想(6月時点) | 2019/2020年シーズン 予想(7月時点) | 2020/2021年シーズン 見通し6月時点) | 2020/2021年シーズン 見通し(6月時点) | |
作付面積(万エーカー) | 8970 | 8970 | 9700 | 9200 |
収穫面積(万エーカー) | 8130 | 8130 | 8960 | 8400 |
単収(ブッシェル/エーカー) | 167.4 | 167.4 | 178.5 | 178.5 |
期初在庫(億ブッシェル) | 22.21 | 22.21 | 21.03 | 22.48 |
生産量(億ブッシェル) | 136.17 | 136.17 | 159.95 | 150.00 |
輸入(億ブッシェル) | 0.04 | 0.04 | 0.02 | 0.02 |
供給合計(億ブッシェル) | 158.83 | 158.88 | 181.23 | 172.73 |
消費合計(億ブッシェル) | 137.80 | 136.35 | 148.00 | 146.25 |
内輸出(億ブッシェル) | 17.75 | 17.75 | 21.50 | 21.50 |
内工業・種子・食品用(億ブッシェル) | 63.05 | 62.60 | 66.00 | 66.25 |
内エタノール用(億ブッシェル) | 49.00 | 48.50 | 52.00 | 52.00 |
内飼料用(億ブッシェル) | 57.00 | 56.00 | 60.50 | 58.50 |
期末在庫(億ブッシェル) | 21.03 | 22.48 | 33.23 | 26.48 |
在庫率(%) | 15.3% | 16.5% | 23.4% | 17.6% |
平均価格(セント/ブッシェル) | 360 | 360 | 320 | 335 |
*2019/2020年の内、作付面積、収穫面積、単収、期初在庫は実測値
2019/2020年シーズン(旧穀)の供給側は6月の報告から全項目で据え置きとなった。需要側は6月と比較して飼料用が57.00億ブッシェルから1億ブッシェル減少した56.00億ブッシェル、エタノール用が49.00億ブッシェルから0.50億ブッシェル減少した48.50億ブッシェル、食品用が63.05億ブッシェルから0.45億ブッシェル減少した62.60億ブッシェルとなった。需要全体は6月の137.80億ブッシェルから1.45億ブッシェル減少した136.35億ブッシェルとなった。需要が減少した分、期末在庫が増加した。期末在庫は6月の21.03億ブッシェルから1.45億ブッシェル増加した22.48億ブッシェルとなった。
2019/2020年シーズン(旧穀)の期末在庫の増加を引き継ぎ、2020/2021年シーズン(新穀)は22.48億ブッシェルの期初在庫で始まる。供給側は、6月の報告から作付面積が500万エーカー引き下げられたことで、収穫予想が159.95億ブッシェルから9.95億ブッシェル減少した150.00億ブッシェルとなる見込み。需要側では、飼料用需要が60.50億ブッシェルから2.00億ブッシェル引き下げられた58.50億ブッシェルとなったことと、食品・種子用が66.00億ブッシェルから66.25億ブッシェルへ引き上げられたこと2点のみの修正だった。新型コロナウイルスの流行は拡大しているがエタノール用の需要や輸出は6月から据え置きとなる強気の見通しとなった。期末在庫は収穫予想の減少から6月予想の33.23億ブッシェルに対して、6.75億ブッシェル減少の26.48億ブッシェルへ引き下げられた。
世界需給
今回の世界需給についてのダイジェストはこちら。
大豆
2020年/2021年シーズンの大豆の世界生産量は3億6252万トンで、前シーズンを約2500万トン上回る予想となっている。主要国ではアメリカが約1500万トン、アルゼンチンが約350万トン、ブラジルが約500万トン増加する。需要側では世界全体の消費量が前シーズンの3億4841万トンから3億6356万トンへ約1500万トン引き上げられた。内、中国の消費量が約700万トン増加する。
コーン
コーンの世界生産量は2020年/2021年シーズンの予想は11億6321万トンと前シーズン推定11億1355万トンから約5000万トンの増加となる見込み。内訳はアメリカが3600万トン増、ブラジルが600万トン増、ロシアが100万トン増など。世界需要は11億6351万トンで前シーズンの推定11億2172万トンから約4200万トンの増加となる見込み。需要面ではアメリカの国内消費が約1600万トンと大幅に増加する予想となっており、内訳ではエタノール需要の増加が主因となっている。
今後の見通し
2020年/2021年シーズンに今月の作付面積報告が反映されたことで、コーンは生産量・期末在庫が引き下げられた。一方、大豆はコーンとは逆に生産量・期末在庫が引き上げられたが、どちらも予想の範囲内でコーン、大豆ともにサプライズがなかったため影響は小さかった。金曜日のコーンベルトの降雨予報はこれまでの乾燥による作柄懸念を後退させ、コーン相場、大豆相場ともに大きく下げた。
筆者は、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中でのコーンのエタノール需要の据え置きと、米中の対立が高まる中での大豆の輸出需要の据え置きは強気な内容だと考えている。
世界需給については次の通り。アメリカの単収が前シーズンより大幅に改善する見込みであることから、今シーズンのアメリカのコーンの生産量は約3600万トン、大豆の生産量は約1500万トン増加する見込み。これに対する海外の主要産地では、ブラジル産の大豆が約500万トン、コーンが約600万トン増加、アルゼンチン産の大豆が約350万トン増加する見込みで、アメリカの輸出にとって今年も強力なライバルとなり、コーンと大豆の価格低迷につながりそうだ。
今後は、生育中の天気・雨量によって作柄が左右されるため、天気情報と毎週発表されるクロッププログレスレポートの内容に注意したい。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。