今週の原油の見通し(つらつらコラム2019年7月8日)

図1 2018年1月以降の原油価格(週足)(出展元 Investing.com)

先週1日2日にウィーンで行われたOPECの総会は、今後の生産方針については日量120万バレルの協調減産を9か月継続するとの結果になった。通常OPECは年2回の総会を行うため、生産方針については6か月単位を基本としており、9か月の減産継続はその意味で異例ではあったが、減産量が据え置かれたことで、特に目新しさはなかった、そのため、2日の原油相場はそれまでに発表されていた各国の経済指標に弱気材料が多いことと、アメリカと中国の貿易戦争が休戦したとはいえ長期化する中、景気減速にともなう需要減への懸念から減産のインパクトは相殺され、むしろ下落することになった。
需給の数字を見てみよう。OPECの生産量は減産の効果で日量3000万バレルを割り込む水準まで下落しているが、アメリカの生産量増加が記録的なペースで増加しており、EIAの生産量見通しでは2019年は2018年に比べて日量145万バレル増加の1245万バレルとなる。また、非OPEC諸国の増産量が日量180万バレル増加する。世界需要が日量140万バレル増加(総量は日量約1億バレル)と予測されているなかで、アメリカの存在感の大きさ、逆に言えばOPECの影が薄くなってきたこと、日量120万バレルの協調減産が原油価格に大きく影響しない数字であることが、分かる数字である。
今週の注目ポイントはやはりイラン情勢となる。先週水曜日に、濃縮ウランの貯蔵量が2015年の合意で定められた量である300kgを突破、木曜日にイランのタンカーが英海軍によってジブラルタルで拿捕、日曜日のイランのウラン濃縮の再開でこれも合意で定められたウラン濃縮率3.67%を上回り、核合意履行が有名無実化している。既に核開発が再開された状態であり、これまでのアメリカとの間だけでなく、核開発に反対している他の安保理常任理事国諸国との対立も懸念される。今後、国連制裁再開などの続報があるかに注意したい。
繰り返しになるがイランの原油生産量(日量120万バレル)自体は協調減産量と同じであり大きな問題ではない。イランの扼す幅2kmしかないホルムズ海峡を通過している日量1700万バレルの原油(全世界需要の6分の1)、0.30bcmのLNG(全世界輸送量の3分の1)の輸送が受ける影響が大きく、既に貨物への保険料率は平常の20倍(イラク戦争時は40倍)まで上昇している 。その意味では既に戦争状態が始まっているのである。

※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。