図1 原油時間足チャート (出展元 サクソバンク証券)

今週の原油在庫統計は8日29時30分発表のAPIの統計(前週比で原油在庫413万バレル増、ガソリン在庫594万バレル減、留出油398万バレル減)が発表されて下落傾向となった。10日23時30分にEIAの週間原油統計が発表となり、内容は前週比で原油在庫292万バレル増、ガソリン在庫121万バレル減、留出油394万バレル減と今週はAPIとEIAの在庫統計の方向性が一致した。図2は今年10月までの原油在庫推移と例年との比較で原油在庫は前年と同水準となっている。昨日の原油相場は米中間の貿易協議の楽観視から立会時間開始頃は上昇していたが、原油在庫増加となったことで、一時的に下落した。その後はトルコがシリア北部に攻撃を加えたとのニュースから中東情勢の悪化懸念が広がり上昇した。明け方にかけては再度在庫増が材料視されて下落して引けた。反省としては、トルコのニュースは承知していたが、原油相場への影響までは読み切れず、売りポジションがストップロスに掛かってしまった。
それでは、今日もEIAの週間レポートの中身を簡単に見て分析しておきたい。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
原油生産(万バレル/日) | 1260 | 1240 | 1247 | 1110 |
原油輸入(万バレル/日) | 624 | 629 | 648 | 739 |
原油輸出(万バレル/日) | 340 | 286 | 310 | 287 |
アメリカ国内の原油生産は日量1260万バレル(前週+20万バレル、前年比+150万バレル)で久方ぶりに1240万バレルから増加した。原油輸入は日量624万バレル(前週比-5万バレル、前年比-115万バレル)だった。一方の原油輸出は若干増加して日量340万バレル(前週+56万バレル、前年比+53万バレル)となっている。原油のアメリカ国内向け供給量は生産量と輸入量から輸出量を差し引くと、日量で前週より41万バレル減少している。
今週 | 前週 | 前々週 | |
ガソリン生産(万バレル/日) | 922 | 930 | 917 |
留出油生産(万バレル/日) | 393 | 388 | 423 |
次にガソリンの生産だが、需要期が終了し製油所がメンテナンスに入って稼働率が落ちてきている(前週比-0.7%)ため、減少している。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
ガソリン供給(万バレル/日) | 946 | 913 | 922 | 907 |
ジェット燃料供給(万バレル/日) | 177 | 176 | 173 | 158 |
留出油供給(万バレル/日) | 403 | 396 | 393 | 462 |
次に石油製品の供給量は、日量でガソリンが33万バレル増加し、一方でジェット燃料と留出油はそれぞれ、1万バレル増加、7万バレル増加となった。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 79 | 92 | 80 | 102 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 23 | 21 | 21 | 20 |
留出油輸出(万バレル/日) | 145 | 124 | 141 | 96 |
一方の石油製品の輸出は、ガソリンが日量79万バレル(前週比-13万バレル、前年比-23万バレル)、ジェット燃料の輸出は日量23万バレル(前週比+2万バレル、前年比+3万バレル)。留出油は日量145万バレル(前週比+21万バレル、前年比+49万バレル)となっていて大きな変化はない。
EIA週間原油統計 | 予想 | 結果 |
原油(万バレル) | +141 | +292 |
ガソリン(万バレル) | -25 | -121 |
留出油(万バレル) | -211 | -394 |
以上をまとめると、原油生産量は過去最大を更新した他、ガソリンの消費はいまだ旺盛ということができる。
次に建玉の方からも見てみよう。以下の表はCFTC(アメリカ合衆国先物取引委員会)発表のNY原油のここ5週間の建玉数の明細となる。
総建玉 | 大口投機家 買玉 | 大口投機家 売玉 | 差引 | 大口当業者 買玉 | 大口当業者 売玉 | 差引 | |
9/3 | 2,082,415 | 508,940 | 124,783 | 384,157 | 748,832 | 1,130,951 | -382,119 |
9/10 | 2,080,994 | 527,579 | 99,374 | 428,205 | 716,210 | 1,140,398 | -424,188 |
9/17 | 2,073,041 | 530,357 | 103,252 | 427,105 | 726,980 | 1,167,263 | -440,283 |
9/24 | 2,048,088 | 528,493 | 104,331 | 424,162 | 740,041 | 1,180,295 | -440,254 |
10/1 | 2,085,676 | 514,829 | 125,510 | 389,319 | 783,419 | 1,185,396 | -401,977 |



図3は2019年の原油建玉数の推移、図4は建玉数前週比、図5は買い越し数となる。ファンドの買い越し数は買玉が約2%減少し、売玉が約20%増えた。
最後に今後の見通しに簡単に触れておきたい。産油国でないシリア内部のクルド人占領地域へのトルコの攻撃が中東へのリスクを増加するとあるが、クルド人は広範囲(トルコ、シリア、イラク、イラン)に居住しており、その中にはイラク第2の産油地帯であるキルクークなども含まれている。イラクの政情自体も反政府デモが激化するなど悪化しているため、もしこれらがクルド人の独立運動などに影響することがあれば、イラクの原油供給能力(日量450万)が減少する可能性があり価格の上昇につながるだろう。ただ、それでも週内は米中間の閣僚級協議の難航から原油需要の落ち込み見通しが注目されている状況となっている。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。