
今週の原油相場について振り返ると、月曜日に中国がオバマ政権時代のアメリカの相殺関税についてWTOに制裁を訴えたことが判明したため、日付が変わるころにかけて0.50ドル以上下落した。火曜日は米中貿易協議の部分合意の進展期待から大きく買われて1.50ドル以上の上昇となった。朝方29時30分にAPIが週の在庫報告で、前週比で原油在庫220万バレル増、ガソリン在庫230万バレル減、留出油280万バレル減が発表されたことでやや下落傾向となった。水曜日23時30分のEIA週間原油統計では前週比で原油在庫169万バレル減、ガソリン在庫220万バレル減、留出油271万バレル減となり、2.50ドル近く上昇した。原油在庫の減少と精製物の在庫が減少したことが支援材料だった(図1)。また、EIAの週間レポートの内容ではアメリカのNet輸出入量(原油や石油製品すべてを合計した量)が輸出超過となっていることが特筆される。筆者は月曜日の下落傾向が続くと予想していたため、売りポジションを立てていたが、昨日の上昇でロスカットされてしまった。他の取引のプラス分がほぼ飛んでしまい、残念な取引となってしまった。
それでは、今日もEIAの週間レポートの中身を簡単に見て分析しておきたい。また精製物の在庫について触れておこう。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
原油生産(万バレル/日) | 1260 | 1260 | 1255 | 1102 |
原油輸入(万バレル/日) | 585 | 629 | 616 | 766 |
原油輸出(万バレル/日) | 368 | 324 | 330 | 206 |
アメリカ国内の原油生産は日量1260万バレル(前週+0万バレル、前年比+158万バレル)で前週から横ばいとなっている。原油輸入も日量585万バレル(前週比-31万バレル、前年比-181万バレル)となった。イランの原油輸送問題で中国の海運会社(COSCOなど)への制裁で該当タンカーが忌避されて運賃が高騰していることが要因。一方の原油輸出は若干増加して日量368万バレル(前週+44万バレル、前年比+162万バレル)となっている。今週の原油のアメリカ国内向け供給量(生産量+輸入量-輸出量)、日量で前週比88万バレル減少だった。
今週(4週平均) | 前週(4週平均) | 前々週(4週平均) | |
原油投入量(万バレル/日) | 1574 | 1590 | 1635 |
製油所稼働率 | 85.1 | 86.2 | 89.3 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 1006 | 1009 | 1003 |
留出油生産(万バレル/日) | 477 | 483 | 495 |
次にガソリンや留出油の生産だが、製油所がメンテナンスから復帰したことで、稼働率が今週は85.2%となっており、先週の83.1%を上回った。今後の生産増加が予想される。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
ガソリン供給(万バレル/日) | 959 | 935 | 938 | 932 |
ジェット燃料供給(万バレル/日) | 208 | 161 | 180 | 176 |
留出油供給(万バレル/日) | 407 | 436 | 410 | 400 |
次に石油製品の供給量は、日量でガソリンが24万バレル増加し、一方でジェット燃料と留出油はそれぞれ、47万バレル増加、29万バレル減少となった。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 62 | 78 | 78 | 96 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 16 | 24 | 21 | 19 |
留出油輸出(万バレル/日) | 120 | 106 | 124 | 144 |
一方の石油製品の輸出は、ガソリンが日量62万バレル(前週比-16万バレル、前年比-34万バレル)、ジェット燃料の輸出は日量16万バレル(前週比-8万バレル、前年比-3万バレル)。留出油は日量120万バレル(前週比+14万バレル、前年比-24万バレル)となっていて大きな変化はない。
EIA週間原油統計 | 結果 | 予想 |
原油(万バレル) | -169 | +223 |
ガソリン(万バレル) | -310 | -226 |
留出油(万バレル) | -271 | -278 |
次に原油と精製物の在庫の推移について触れておきたい。



原油在庫(図2)やガソリン在庫(図3)は過去5年平均より多めで推移している。一方で留出油の在庫(図4)は5年平均の下限を今週も割り込んだ。在庫が不足していると言ってよい水準が続いている。以上をまとめると、原油生産は頭打ちとなっている、製油所がメンテナンスから復帰し製油所の稼働率が85.2%と回復してきたことで、来週の石油精製物の量は増加するのではないだろうか。
次にCTFCの発表するここ5週間の建玉についてみておきたい。
総建玉 | 大口投機家 買玉 | 大口投機家 売玉 | 差引 | 大口当業者 買玉 | 大口当業者 売玉 | 差引 | |
9/17 | 2,073,041 | 530,357 | 103,252 | 427,105 | 726,980 | 1,167,263 | -440,283 |
9/24 | 2,048,088 | 528,493 | 104,331 | 424,162 | 740,041 | 1,180,295 | -440,254 |
10/1 | 2,085,676 | 514,829 | 125,510 | 389,319 | 783,419 | 1,185,396 | -401,977 |
10/8 | 2,105,717 | 520,283 | 165,198 | 355,085 | 793,152 | 1,156,661 | -363,509 |
10/15 | 2,136,717 | 536,406 | 179,522 | 356,884 | 785,449 | 1,149,906 | -364,457 |



図5は2019年の原油建玉数の推移、図6は建玉数前週比、図7は買越し数となる。表によると大口投機家の買玉がここ2週間増加している。一方で売玉も2週間増加しており、買越しの増加は1799となっている。
最後に今後の見通しに簡単に触れておきたい。シリア内部のクルド人地域へのトルコの攻撃は金曜日からの停戦は終了したが、その後概ね平穏が続いている。アメリカの対トルコ制裁は解除されており、トランプ・アメリカ大統領はトルコのエルドゥアン大統領と会談する意向があると報じられている。また、OPECプラスの減産が年末の総会から拡大する可能性が報じられている。今週の米中間の貿易協議への楽観視もあり、今日以降上昇基調が続く可能性がある。また、流動性も低下していて大きな値動きとなることが予想されるので注意を払いたい。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。