
昨日の原油相場は火曜日の日本時間朝方のAPIの在庫統計発表で原油・ガソリン・留出油と在庫が減少したことを受けて売り優勢で始まった。昨日23時30分に発表されたEIAの在庫統計は以下の表の通りとなったことを受けて日付が変わることにかけて売りが入り、54.50ドル台を割り込んだ。その後、原油需要の底堅さと株高を受けて買戻しが入って引ける展開となった(図1)。筆者も精製物在庫は減少と予想していたが、予想以上の原油在庫の増加となった。製油所の改修が終了し稼働率は上がっているものの、輸入が増加したことが原油の増加要因となったようだ。
EIA週間原油統計 | 結果 | 予想 |
原油(万バレル) | +570 | -50 |
ガソリン(万バレル) | -303 | -230 |
留出油(万バレル) | -103 | -240 |
それでは、今日もEIAの週間レポートの中身を簡単に見て分析しておきたい。また原油の生産と輸出入から触れていこう。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
原油生産(万バレル/日) | 1260 | 1260 | 1220 | 1120 |
原油輸入(万バレル/日) | 669 | 585 | 692 | 626 |
原油輸出(万バレル/日) | 332 | 368 | 341 | 291 |
アメリカ国内の原油生産は日量1260万バレル(前週+0万バレル、前年比+140万バレル)と過去最高水準を維持しつつ横ばいだった。原油輸入は日量669万バレル(前週比+84万バレル、前年比+47万バレル)と増大し原油在庫の増加要因の1つになった。一方の原油輸出は若干増加して日量332万バレル(前週-36万バレル、前年比+41万バレル)と最近は300万バレルを超える水準で推移している。今週の原油のアメリカ国内向け供給量(生産量+輸入量-輸出量)、日量で前週比で48 万バレルの増加だった。
今週(4週平均) | 前週(4週平均) | 前々週(4週平均) | |
原油投入量(万バレル/日) | 1574 | 1574 | 1631 |
製油所稼働率 | 85.4 | 85.1 | 89.0 |
ガソリン生産(万バレル/日) | 1009 | 1006 | 1013 |
留出油生産(万バレル/日) | 481 | 477 | 494 |
次にガソリンや留出油の生産だが、製油所が上昇しており今週の稼働率は87.7%と先週の85.4%を上回った。今後も石油製品の生産量増加が予想される。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
ガソリン供給(万バレル/日) | 978 | 959 | 954 | 926 |
ジェット燃料供給(万バレル/日) | 183 | 208 | 182 | 167 |
留出油供給(万バレル/日) | 426 | 407 | 418 | 442 |
次に石油製品の供給量は、日量でガソリンが29万バレル増加、ジェット燃料が25万バレルの減少、留出油が19万バレルの減少となった。夏の消費シーズンは過ぎているが、ガソリンや留出油の供給量が増大しているにもかかわらず、在庫が取り崩されていることは、燃料需要が高まっていることを意味している。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 65 | 62 | 71 | 101 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 17 | 16 | 20 | 24 |
留出油輸出(万バレル/日) | 101 | 120 | 118 | 127 |
一方の石油製品の輸出は、ガソリンが日量65万バレル(前週比+3万バレル、前年比-36万バレル)、ジェット燃料の輸出は日量17万バレル(前週比+1万バレル、前年比-7万バレル)。留出油は日量101万バレル(前週比-19万バレル、前年比-26万バレル)となっていて大きな変化はない。
次に原油と精製物の在庫の推移について触れておきたい。

図2 原油在庫(出典元 EIA) 図4 ガソリン在庫(出典元 EIA) 図4 留出油在庫(出典元 EIA)
原油在庫(図2)は増加傾向で、ガソリン在庫(図3)は過去5年平均より多めだが、平均値へ向けて減少傾向、留出油の在庫(図4)は5年平均の下限を今週も割り込んで取り崩しが続いている。金曜日にベーカー・ヒューズ社が発表している稼働中の原油採掘リグ数は先週696基(先週比17基減少)となったにもかかわらず、生産量が維持されている。
以上をまとめると、アメリカ国内の原油生産は原油価格低迷や世界経済の減速懸念から、新規投資が抑制されているものの、投資の集中と選択が行われて生産効率の上昇によって生産量維持が行われていると考えることが出来る。 一方で、製油所がメンテナンスから復帰し製油所の稼働率が87.7%と回復してきたことで、先週の予想通り石油精製物の量は増加しているが、それを上回る季節外れと言っても良い需要の高さから、石油製品の在庫取り崩しとなったといえる。
次にCTFCの発表する最近5週間の建玉についてみておきたい。
総建玉 | 大口投機家 買玉 | 大口投機家 売玉 | 差引 | 大口当業者 買玉 | 大口当業者 売玉 | 差引 | |
9/24 | 2,048,088 | 528,493 | 104,331 | 424,162 | 740,041 | 1,180,295 | -440,254 |
10/1 | 2,085,676 | 514,829 | 125,510 | 389,319 | 783,419 | 1,185,396 | -401,977 |
10/8 | 2,105,717 | 520,283 | 165,198 | 355,085 | 793,152 | 1,156,661 | -363,509 |
10/15 | 2,136,717 | 536,406 | 179,522 | 356,884 | 785,449 | 1,149,906 | -364,457 |
10/22 | 2,081,290 | 548,951 | 182,779 | 366,172 | 761,207 | 1,128,177 | -366,970 |



図5は先週までの2019年の原油建玉数の推移、図6は建玉数前週比、図7は買い越し数となる。大口投機家の買玉を約12万枚増やしたため、買い越しが366,172枚となっている。
最後に今後の見通しに簡単に触れておきたい。シリア情勢はISILの指導者バグダディが殺害されたことで、ISILとの戦い自体は沈静化に向かうと考えられるが、クルド人と周辺諸国との間の問題が後に残されている状態となっている。また、OPECプラスの減産が年末の総会から拡大する可能性が報じられていたが、ここへきてロシアが慎重派に転じており、減産が行われるかは不透明となった。順調が伝えられていた米中間の貿易協議の部分合意は、署名の場になると考えられていた11月のAPEC自体の開催が、開催国チリの騒乱で断念されるという予想外の展開となっている。アメリカ国内では原油の在庫は増加したものの、季節外れのガソリンや留出油の需要が下値を支えている他、気温の低下でヒーティングオイルの需要も増加が予想されるため、底堅い値動きをするのではないだろうか。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。