図1 原油時間足チャート (出展元 サクソバンク証券) 図2 EIA週間原油統計 (出展元 EIA)
昨日の原油相場は立会時間開始後はダウの上昇などに合わせて上昇していたが、23時30分にEIAの週間原油統計が発表された直後から急落した(図1)。早朝に発表されたAPIの統計(前週比で原油在庫340万バレル減、ガソリン在庫40万バレル減、留出油180万バレル増)は影響が少なかったが。夜のEIAの統計(前週比で原油在庫270万バレル減、ガソリン在庫30万バレル増、留出油260万バレル増)となった。図2が今年8月までの原油在庫推移と例年との比較となる。今日はEIAの週間レポートの中身を簡単に見て分析しておきたい。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
原油生産(万バレル/日) | 1230 | 1230 | 1227 | 1090 |
原油輸入(万バレル/日) | 722 | 771 | 719 | 805 |
原油輸出(万バレル/日) | 280 | 268 | 248 | 148 |
アメリカ国内の原油生産は日量1230万バレル(前週+0バレル、前年比+140万バレル)で、原油輸入は日量722万バレル(前週比-49万バレル、前年比-83万バレル)だった。一方の原油輸出は増加しており日量280万バレル(前週+12万バレル、前年比+132万バレル)となっている。このあたりの変化は小さく急落する要因とはならないと考えられる。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
ガソリン生産(万バレル/日) | 963 | 993 | 969 | 955 |
ジェット燃料生産(万バレル/日) | 191 | 201 | 191 | 184 |
留出油生産(万バレル/日) | 376 | 385 | 385 | 391 |
次に石油製品の生産は、夏の需要期を迎えてガソリンの生産は日量963万バレル(前週比-30万バレル、前年比+8万バレル)。次に灯油に相当するジェット燃料の生産は日量191万バレル(前週比-20万バレル、前年比+7万バレル)、軽油相当の留出油は日量376万バレル(前週比-3万バレル、前年比-15万バレル)となっている。
今週 | 前週 | 4週平均 | 前年同時期 | |
ガソリン輸出(万バレル/日) | 67 | 45 | 68 | 67 |
ジェット燃料輸出(万バレル/日) | 29 | 26 | 23 | 12 |
留出油輸出(万バレル/日) | 142 | 162 | 150 | 120 |
石油製品の輸出はガソリンが日量67万バレル(前週比+22万バレル、前年比+0万バレル)、ジェット燃料の輸出は日量29万バレル(前週比+3万バレル、前年比+17万バレル)。留出油は日量142万バレル(前週比+20万バレル、前年比+22万バレル)となっている。
EIA週間原油統計 | 予想 | 結果 |
原油(万バレル) | +190 | +273 |
ガソリン(万バレル) | +20 | +31 |
留出油(万バレル) | +30 | +261 |
以上をまとめると、原油生産は維持されており大きな変化はない。一方でガソリンと留出油に関しては興味深い事象がみえている。ガソリン、留出油ともに生産は減少しており、特にガソリンは輸出量も減少している。更に時期的に夏場のドライブシーズンというガソリン需要期はまだ2週間残っているにもかかわらず、ガソリンの在庫が増加したという事実は、季節的な傾向に大きく反している。これは需要期の消費増加とベースの消費減少が相殺し、需要期の終わりを待たずにガソリン消費がピークを迎えてしまっていることを意味するのかもしれない。留出油も同様に生産が減っている以上に在庫が増えている。原油需要減衰リスクを意識せざるを得ない状況となっており、来週のガソリン在庫情報には特に注意を要する 。
次に建玉の方からも見てみよう。以下の表はCFTC発表のNY原油のここ5週間の建玉数の明細となる。
総建玉 | 大口投機家 買玉 | 大口投機家 売玉 | 差引 | 大口当業者 買玉 | 大口当業者 売玉 | 差引 | |
7/16 | 2,089,629 | 545,484 | 121,722 | 423,762 | 718,705 | 1,150,,251 | -431,546 |
7/23 | 2,056,492 | 537,940 | 140,089 | 397,851 | 710,726 | 1,108,214 | -397,488 |
7/30 | 2,069,072 | 540,238 | 152,947 | 387,291 | 732,821 | 1,119,888 | -387,067 |
8/6 | 2,070,210 | 540,924 | 165,283 | 375,641 | 760,794 | 1,134,883 | -374,089 |
8/13 | 2,059,135 | 547,040 | 164,896 | 382,144 | 715,157 | 1,086,691 | -371,534 |

図3は2019年の原油建玉数の推移となっており、年初からファンドの買玉は売玉を上回る状況が続いている。直近では若干売玉が増えている傾向にあり、建玉面からみると今後、原油相場は下落する可能性があると考えらえる。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。