天然ガスの中長期見通し(つらつらコラム2019年11月4日)

図1 天然ガス日足 (出展元 サクソバンク証券

先週の天然ガス相場は、翌週以降の気温は下落するとの見通しから上昇基調となり、4月以来となる7か月ぶりの高値を付けた。在庫が5年平均より少ない量で推移する中でも低価格が続いていたが、ようやく相場が上向くと考えられる。天然ガスの価格要因は図2の変動に見られるように基本的にアメリカ国内の季節要因がこれまでは主なものだった。今日は拡大する輸出を軸に中長期的な天然ガスの値動きを考えてみたい。

図2 天然ガス在庫推移(出典元 EIA)

まず、2006年のシェール革命以降アメリカの生産量は図3の青線で示すようにそれまで一定だった1500BcFから上昇に転じていて、2019年には3000BcFに達する勢いとなっている。

図3 天然ガス生産量と国内需要量推移(出典元 EIA)

シェール革命が起ったあとは急速に生産が進んだとはいえ、生産量が伸びてくるのは時間がかかったため、アメリカが純輸出国に転じるには2018年を待たなければならなかった(図4)。その一方で、国内消費(図3のToal Consumption)は頭打ちとなってきている。そこで、国内消費と生産量の差を輸出に回そうとアメリカ政府は考えている。下表は先週のEIAの週報をもとに作成しているが、既に需要全体のうち約8%ほどがLNG化による輸出が占めている。

今週    前週    前年同時期    
発電用(Bcf/日)30.629.927.3
工業用(Bcf/日)20.420.621.6
住宅用(Bcf/日)13.312.617.6
パイプライン輸出(Bcf/日)5.35.44.9
パイプラインでの消費やロス(Bcf/日)6.46.46.1
LNG輸出(Bcf/日)6.96.53.6
天然ガス需要(Bcf/日)82.981.581.0

ただし、パイプラインの繋がったメキシコとカナダ以外の国への輸出はLNG化して輸出することが不可欠。元来、LNG輸入用だった設備の輸出用への転換などの準備が遅れていたため、2017年頃から輸出が始まったもののまだ輸出用基地が少なく本格的な輸出開始は始まっていなかった。

図4 天然ガス輸出入量推移(出典元 EIA)
図4B 天然ガス、LNG輸出入量推移(出典元 EIA)

ここで、日本とのかかわりあいを見ておきたい。日本へのLNG輸出は長らくアラスカからの天然ガス輸入が主で横ばいで推移していた。このアラスカ産の輸入が止まった時期があり、つい最近まで継続的な輸入は行われていなかったためグラフに大きな欠損が出来ている。2017年に対日ガス輸出が解禁されて以後、アメリカ側の輸出体制が整うにしたがって、輸出量が拡大を始めている。更にパナマ運河の拡張が完了し、これまでより一回り大きなLNG船が運河を通過可能となり、輸送コストが大きく下がったことも、アメリカからの輸入拡大の支援材料となっている。

図5 天然ガス輸出量と、LNG輸出量、日本向け輸出量(出展元 EIA)

下表は直近6か月のアメリカの輸出量全体と日本向けLNGの比較となっている。今年5月にルイジアナ州のキャメロン基地やコーブ・ポイント基地が本格的に輸出を開始して以降、LNGの輸出が拡大を始めていて、日本向けの輸出も拡大している。現時点で日本はアメリカのLNGの輸出能力のおよそ15%を購入している。

Mar-19   Apr-19   May-19   Jun-19   Jul-19   Aug-19   
アメリカ輸出天然ガス全体(McF)373,543338,213368,568360,226392,491384,094
アメリカ輸出LNG全体(McF)130,814127,102134,4913141,956156,865138,578
日本向けLNG輸出(McF)7,14310,5317,14914,58221,24221,031

今後の見通しについて述べておこう。アメリカでは更にLNG輸出用の基地が整備、順次稼働する予定となっている。現在3500万トン(JETRO調べ)ほどの輸出能力が2020年には7000万トン以上( JOGMEC調べ)と現在の2倍以上に拡大する予定となっており、そのうち日本は4分の1に当たる1700万トンを購入する契約が結ばれていると報じられている。 この他、EU向けも過去6ヶ月で181%増と拡大を続けている。現在、日量7Bcf程度の需要に占めるLNG輸出は年末には8Bcfを超えて需要の1割に達して、来年末には14Bcfと拡大することが考えられる。このほか、生産量拡大と輸出拡大の間のタイムラグも考えられるため、中長期的に天然ガスは値上がりすると考えるがいかがだろうか。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。