
先週金曜日の天然ガス相場は下落で始まったが、日本時間10月11日の立会時間に約50pips上昇する強い買いが入る展開だった。この強い買いは一時的なものですぐに元の水準に下落した。その日の取引全体としては若干の上昇だった、立会開始直後の上昇は気温の低下による需要増見込みからの買いだったと思われるが、天然ガスの在庫増加が平年並みへ上昇したこと(最新3415Bcf、5年平均3424Bcf、図2)を嫌気して下落したというのが分析となる。エントリー側の反省点をいえば、天然ガスの想定ポイントはもっと低くポジションの入力を行わなかったのは残念だった。2週間後の気温が上昇して現在よりは穏やかになるという天気予報の情報を持っていたため、2.250ドルを超える上昇が全く予期しないものだった。

今週10日23時にEIA(アメリカエネルギー情報局)が発表した天然ガスの在庫は98Bcfの増加となり予想の97Bcfを上回った。今週は先週とは異なり需要の増加より在庫が重視されて下落していたのとは反対の反応となった。
それでは、EIAの週間報告の中身を見ていきたい。
今週 | 前週 | 前年同時期 | |
Marketed Production(Bcf/日) | 105.6 | 106.3 | 97.7 |
天然ガス生産(Bcf/日) | 93.5 | 94.0 | 86.7 |
天然ガス輸入(Bcf/日) | 4.5 | 4.6 | 5.4 |
天然ガス供給(Bcf/日) | 98.1 | 98.6 | 92.1 |
天然ガスの生産は前年同時期に比べて日量7.9Bcfの増加となっているがほぼ横ばいとなっている。今週は輸入も横ばいだったため、供給量はほぼ横ばいとなった。次に需要の内訳は、
今週 | 前週 | 前年同時期 | |
発電用(Bcf/日) | 32.4 | 34.4 | 33.2 |
工業用(Bcf/日) | 21.1 | 21.2 | 21.2 |
住宅用(Bcf/日) | 10.3 | 10.3 | 12.2 |
パイプライン輸出(Bcf/日) | 5.4 | 5.4 | 5.0 |
パイプラインでの消費やロス(Bcf/日) | 6.3 | 6.4 | 6.1 |
LNG輸出(Bcf/日) | 6.1 | 6.3 | 2.9 |
天然ガス需要(Bcf/日) | 81.5 | 84.1 | 80.6 |
発電用が2.0Bcfと大きく減少したほかは需要が気候が穏やかだったことで横ばいとなっている。全体の需要は2.6Bcf減少した。
次に平均気温と需要の関係を簡単に見てみよう(報告に含まれるのは10月3日まで)。
図3A 48州平均気温 (出展元 EIA) 図3B 48州発電所消費量推移 (出展元 EIA) 図3C 48州住宅用消費量推移 (出展元 EIA)
まず需要だが、予報では48州の平均気温は10月4日以降下落(図3A)するが、実際の先週のガスの需要は発電用(図3B)、住宅用・商業用(図3C)も横ばいとなっている。次回の統計の締め日となる10月10日は北部や西部で雪やみぞれの舞う大荒れの天気だった(図4)。この天気がどう統計現れてくるのかが楽しみである。
図4 10月10日の天気(出典元 NOAA)
次に図5は10月13日の最高気温と最低気温の実測値で、アメリカ南部や東部でも20度まで下がっている。一方で西部や北部では氷点下近くまで下がっている。図6は10日後までの平均気温と14日後までの平均気温の予報で、現在アメリカに訪れている寒気は去り、低下している中西部、東部の気温は平年並みまで戻す見込み。

参考値(10℉=-12℃、20℉=-6℃、30℉=-1℃、40℉=4℃、50℉=10℃、60℉=15℃、70℉=21℃、80℉=26℃、90℉=32℃、100℉=37℃)
図6A 6-10日後予報(出展元 NOAA) 図6B 8-14日後予報(出展元 NOAA)
以上から今週と2週間後のEIA報告では今回の寒波による低温を反映して天然ガスの需要増と在庫の増加スピードの減少、今週の相場は再来週の需要の減少観測による値動きが予想される。ただ、報告は事前予想とずれるかどうかが相場へ効いてくるため、この情報だけでは今後2週間のEIA報告内での需要増報告を予測する精一杯となる。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。