欧州政治情勢(つらつらコラム2019年8月21日)

 

欧州からの政治経済を巡るニュースが最近増えている。主要国の状況の整理と見通しをまとめておきたい。

これまで欧州経済を主導してきたドイツでは経済(EUのGDPの2割強)の減速が明らかになってきており、最新の2019年第2四半期GDPはマイナス成長となっている。ドイツの内需自体は堅調なものの、アメリカと中国の対立に伴う世界経済と貿易の減速によって、輸出頼みであるドイツ経済(ドイツの貿易依存度69%、フランスの貿易依存度45%、日本の貿易依存度27%)の構造的な弱点が露呈した形となっている。一方で経済減速などによって政治情勢が変化してきており、これまで安定した政治運営を行ってきたドイツ・メルケル政権は極右・極左の台頭によって、与党の弱体化に歯止めがかからず、ついに2021年の任期終了に伴って、16年に及んだ長期政権が終了する見込みとなっている。
ECBなどではドイツ政府に財政出動を求める意見が高まっており、それを受けたドイツ政府はこれまでの財政規範を変更する形で財政出動を決定したとの報道が先週末にあった。ショルツ独財務相が言及した金額は500億ユーロ、投資分野は国内コンセンサスの取りやすい環境保護・気候変動対応名目となるといわれている。この方針転換とほぼ同時となった中国銀行の金融緩和措置を受けて今週月曜日の株式市場は軒並み上昇がみられた。

イギリスでは先月メイ前首相が離脱交渉の難航の責任を取る形で辞任し、離脱強硬派のジョンソン前外相が首相に就任している。ジョンソン首相はバックストップ条項の削除のための再交渉を求めたが、EUのトゥスク大統領は昨日これを拒絶しており、EU加盟27か国も条項削除に反対していることから、10月31日付での「合意なき」離脱の可能性が高まっている。これを受けて対ドル、対ユーロでポンドは下落、各国の株式市場にも懸念材料として影響が波及した。

イタリアでは連立政権内の不協和音からコンテ政権が昨日崩壊し、マッタレッラ・伊大統領は新政権の模索のための協議を開催すると表明した。政権崩壊の元凶は左派政党「五つ星運動」と右派政党「同盟」の間の公共投資や財政を巡る対立が原因となっており、ドイツのケースとは逆にイタリアでは積極的な財政出動を主張する同盟のサルビーニ副首相の方針がEUの財政規律に反すると批判されている。サルビーニ副首相は景気刺激のため500億ユーロの投入を主張している。とはいえ、コンテ首相の辞職により直近の総選挙がとりあえず回避された形で、金融市場は上昇した。

ECBではドラギ現総裁が10月末で退任し、ラガルドIMF専務理事が就任する人事が発表されているが、タカ派ドイツの発言力がドイツ経済の減速によって下がっているため、ドラギ総裁退任直前に金融緩和に踏み切るという見通しが高まっている。FRBの追加利下げの可能性なども含め年末に向けて、金融市場には大きな動きが予想される。


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。