図1 大豆時間足(出展元 サクソバンク証券株式会社) 図2 コーン時間足(出展元 サクソバンク証券株式会社)
昨日の大豆相場は先週末に米中間の貿易協議が基本合意に達したと報道されたこと、輸出成約高が148.0万トンと前週の157.8万トンを若干下回ったものの150万トン前後を維持したことや中国向けの輸出が75.2万トンと前週の53.5万トンから大きく増えたことを受けて上昇した。今年度の累計は955.2万トンと前年度の862.1万トンを上回っている。一方のコーンはコーンベルトの天候が好転し、作業が遅れている州での収穫が進むとの見方や輸出成約高が27.5万トンと前週の39.1万トンを下回った他、今年度の累計が375.3万トンと前年の998.0万トンを大きく下回ったことで輸出不振による懸念が強まり下落した。筆者は大豆、コーンとともに上昇すると考えたが、1勝1敗となった。
今週のUSDA(アメリカ農務省)のクロッププログレスレポートとCFTC(アメリカ商品先物取引委員会)発表の建玉数の中身を見ていきたい。
まず、大豆のプログレスレポートは以下の表の通りになった。今年の大豆の生育はほぼ終了し収穫も75%が終了し、ほぼ平年に比べて1週間の遅れ程度になっている。
大豆 | 今週 | 前週 | 前年 | 平年 |
収穫率 | 75% | 62% | 81% | 87% |
次にCTFC発表のここ5週間の大豆の建玉数は以下の通り。
総建玉 | 大口投機家 買玉 | 大口投機家 売玉 | 差引 | 大口当業者 買玉 | 大口当業者 売玉 | 差引 | |
10/1 | 713,462 | 165,058 | 126,293 | 38,765 | 340,320 | 373,721 | -33,401 |
10/8 | 711,318 | 163,729 | 122,308 | 41,421 | 343,691 | 384,297 | -40,606 |
10/15 | 752,145 | 180,214 | 98,416 | 81,798 | 337,558 | 425,401 | -87,843 |
10/22 | 795,241 | 180,508 | 89,052 | 91,456 | 380,019 | 469,469 | -89,450 |
10/29 | 714,564 | 182,748 | 80,065 | 102,683 | 330,438 | 421,365 | -101,927 |
図3 2019大豆建玉数(出展元 CFTC) 建玉前週比 買い越し数
図3が先週までの2019年の大豆建玉数、建玉の前週比、買い越し数となっている。先週は投機筋は買い玉を若干増やし、売り玉を10%以上減らしている。結果、102683枚の買い越しと、前週より買い越し数が拡大している。
コーンのプログレスレポートは以下の表の通り。コーンの生育もほぼ終了し成熟を待つだけの段階となっている。作柄は良以上が58%、劣以下は12%とどちらも2%の改善となった。
コーン | 今週 | 前週 | 前年 | 平年 |
成熟率 | 96% | 93% | 100% | 99% |
収穫率 | 52% | 41% | 74% | 75% |
作柄予想 | ||||
良以上 | 58% | 58% | 68% | – |
劣以下 | 13% | 12% | 12% | – |
次にCFTC発表のここ5週間のコーンの建玉数は以下の通り。
総建玉 | 大口投機家 買玉 | 大口投機家 売玉 | 差引 | 大口当業者 買玉 | 大口当業者 売玉 | 差引 | |
10/1 | 1,602,769 | 362,049 | 376,055 | -14,006 | 689,965 | 764,869 | -74,904 |
10/8 | 1,621,187 | 346,062 | 350,324 | -4,262 | 710,405 | 793,329 | -82,924 |
10/15 | 1,570,763 | 320,150 | 316,803 | 3,347 | 685,371 | 763,474 | -78,103 |
10/22 | 1,608,763 | 312,403 | 323,782 | -11,379 | 723,726 | 790,334 | -66,608 |
10/29 | 1,591,878 | 303,450 | 311,503 | -8,053 | 715,620 | 264,882 | -70,398 |
図4 2019コーン建玉数(出展元 CFTC) 建玉前週比 買い越し数
図4が先週までの2019年のコーン建玉数、建玉前週比、買い越し数となっている。投機筋は買い玉、売り玉共に減らしている。結果、8053枚の売り越しとなった。
コーンベルトの今日の天候は下の図5Aと5Bの通り。コーンベルトの西南部では気温が低下しているが降水はない。西北部の端ではみぞれや雪が降っており、東部の広い範囲では雷雨となっている。図6の2枚は1-2週間後の気温予報で寒波が到来しており、北部と東部を中心に気温が低下する見込み。14日後は気温低下の範囲がより東側に移って行く見込みとなっている。
図5A アメリカの天気(出展元 NOAA) 図5B 最高気温(出展元 NOAA) 図6A 6-10日気温予報 (出展元 NOAA) 図6B 6-10日気温予報 (出展元 NOAA)
次に、今週も先週から引き続きレポート内部の収穫率の州ごとの詳細を見ておきたい。レポートには大豆とコーンを生産する18州の名前が記載されている。
まず大豆はコーンベルトでは大豆の生育がほぼ終わった。後は収穫するだけとなっているが、収穫率は平年比で10%程度(約一週間程度)の遅れとなるまで遅れを回復している。
州名 | 今週収穫率(%) | 前週収穫率(%) | 平年収穫率(%) |
アーカンソー | 82 | 77 | 87 |
イリノイ | 77 | 69 | 91 |
インディアナ | 79 | 71 | 86 |
アイオワ | 80 | 66 | 91 |
カンザス | 70 | 56 | 77 |
ケンタッキー | 77 | 69 | 67 |
ルイジアナ | 99 | 98 | 98 |
ミシガン | 57 | 51 | 78 |
ミネソタ | 80 | 62 | 97 |
ミシシッピー | 93 | 90 | 94 |
ミズーリ | 54 | 43 | 73 |
ネブラスカ | 94 | 85 | 94 |
ノースカロライナ | 45 | 39 | 41 |
ノースダコタ | 56 | 29 | 95 |
オハイオ | 78 | 70 | 86 |
サウスダコタ | 82 | 58 | 96 |
テネシー | 75 | 72 | 73 |
ウィスコンシン | 62 | 46 | 85 |
平均 | 75 | 62 | 87 |
次に、コーンの成熟率はいまだミシガンと両ダコタ、ウィスコンシンが低めとなっている他はほぼ今年の大豆の生育は終了した。一方の収穫率はミシガン、ミネソタ、ウィスコンシン、アイオワ、ノースダコタ、サウスダコタ、ネブラスカ、カンザスの各州では収穫率が低くなっている他、全体として20%程度遅れているが、作業遅れて進んでいない州と好天に恵まれて平年並みとなった州があり明暗が分かれている。
州名 | 今週成熟率(%) | 前週成熟率(%) | 平年成熟率(%) | 今週収穫率(%) | 前週収穫率(%) | 平年収穫率(%) |
コロラド | 100 | 97 | 100 | 66 | 56 | 63 |
イリノイ | 95 | 93 | 100 | 58 | 54 | 92 |
インディアナ | 97 | 94 | 100 | 57 | 48 | 82 |
アイオワ | 97 | 95 | 100 | 43 | 26 | 69 |
カンザス | 100 | 98 | 100 | 83 | 74 | 84 |
ケンタッキー | 100 | 100 | 100 | 95 | 94 | 92 |
ミシガン | 99 | 75 | 100 | 25 | 21 | 55 |
ミネソタ | 100 | 96 | 100 | 44 | 22 | 75 |
ミズーリ | 100 | 100 | 100 | 71 | 64 | 92 |
ネブラスカ | 100 | 97 | 100 | 60 | 44 | 62 |
ノースカロライナ | 100 | 100 | 100 | 99 | 97 | 98 |
ノースダコタ | 99 | 77 | 100 | 10 | 6 | 47 |
オハイオ | 100 | 82 | 100 | 49 | 37 | 69 |
ペンシルベニア | 99 | 89 | 98 | 58 | 53 | 59 |
サウスダコタ | 100 | 88 | 100 | 27 | 14 | 46 |
テネシー | 100 | 100 | 100 | 99 | 98 | 96 |
テキサス | 100 | 100 | 100 | 88 | 85 | 89 |
ウィスコンシン | 96 | 74 | 100 | 21 | 13 | 57 |
平均 | 96 | 93 | 99 | 52 | 41 | 74 |
まとめると、大豆の落葉は終了、コーンの成熟は一部の中西部北部の州を除いてはほぼ終了し、残る作業は収穫だけとなり、収穫も大きく遅れている中西部北部の週を除けば平年並みの週も多い。コーンベルトの天候は寒波によって北西部から雪やみぞれになっている他、東部では雨や雷雨が降っており、悪天候が収穫を妨げている状況となっている。加えて、先月は雨が多く水分過多による大豆・コーンの品質低下が懸念されていて支援材料となる可能性がある。
ただ本年度の農作業は終了しつつあり、来週の需給報告後は、来季の作付けや南半球の話題に焦点が移ると考えられる。
※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。