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レポート
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2021/10/27

レポート:世界の天然ガス事情(2021年10月27日)


ダイジェスト

・アジアはアメリカ産LNGを調達
・欧州は天然ガス高の対応について足並みがそろわず
・アメリカは気温低下による需要増見込みと好調なLNG輸出で価格は上昇しているものの余力がある
・ロシアは欧州の天然ガス価格の下落を望んでいるものの、自国向け冬季需要を備蓄中でスポット市場への出荷増が確認されていない

概要

 今日は世界の天然ガス事情についてレポートする。

アジア

 需要期の冬を前にして価格が最も安いアメリカ産のLNGの調達を日本や中国が急いでいる。現在、世界的に天然ガスと石炭の価格が高騰している中でアメリカ産天然ガスの価格も今年の初めと比べて2倍以上に高騰しているが、それでも他の地域と比較すると格段に安いのが理由となっている。中国にとっては域内の天然ガス輸出国であるオーストラリアとの関係が悪化していることもありアメリカからの調達を目指している。

欧州

 欧州では国によって内情が異なるが、電気代が2倍となった国や工場の操業が止まった国もあり、天然ガスの高騰はホットな話題となっている。ただし、ロシアからのパイプラインに接続されている国とされていない国、環境保護を優先する国と天然ガス高を解消することを優先している国の間で歩調がそろっていない。昨日、ルクセンブルクで開催された天然ガス高対策のための緊急会議が開催された。しかし、現状の仕組み(エネルギーとCO2排出るを削減するための環境保護政策)を変えて消費者や企業の負担を軽減するためEUの介入を求めるスペインやポーランドと、今回の天然ガス高は一時的なものとして仕組みの維持を主張するオランダやデンマーク、オーストリアなどとの溝が埋まらず会議では何も決まらなかった。個々の国では、ドイツはバルト海の海底を通るパイプライン・ノルドストリーム2の承認を通じてロシアから供給を受けることについて前向きな発言を行っている。スペインは北アフリカからの天然ガス供給がアルジェリアとモロッコの対立により継続不能となり天然ガス高に悩んでいる。一方で欧州の需要量の25%と天然ガスを大量に供給しているノルウェーは価格の高騰と輸出量の急増で官民とも好景気に沸いており、ノルウェーの新政権は国内の油田・ガス田に追加投資を行うと報じられている。ノルウェーは国内向けエネルギーのほとんどを水力で賄っているため、天然ガスのほとんどの輸出が可能で非常に有利な立場にある。

アメリカ

 今週に入って気温の低下予報により暖房用需要が需給をひっ迫させるとの懸念からアメリカの天然ガス価格が週の初めに10%以上高騰した。今年の10月は平年より温暖となっているが、人口の多いアメリカ中西部や東部で11月初旬から気温が下がるとの予報が出ている。加えてアメリカ産LNGに対する引き合いが強くなっており、好調や輸出が続いていることが支援材料となっている。一方で、今回の上昇は商品の適正価格を超えて投機が引き起こしているとの市場アナリストの観測がある。

ロシア

 欧州に対する最大の天然ガス供給国(およそ3分の1)であるロシアは価格の下落を望んでいる。現在の欧州の価格は1000立方メートル当たり1100ドル(1メガワット当たり約90ユーロ)の水準となっているが、ロシアのガス会社ガスプロムは1000立方メートル当たり300~400ドルを目指していると報じられている。これは欧州における天然ガスの高すぎる価格が消費量の減少やシェアの低下を招くことをプーチン大統領を始めとしたロシアの首脳部が危惧しており、ほどほどの価格で長期安定することを目指しているためと報じられている。ただし、ロシア産の天然ガスは現在冬季の国内需要向けの充填に多く向けられていると言われている。長期契約者には問題なく送られているものの、欧州のスポット市場に追加で大量に送られていないのは事実となっている。

今後の見通し

図1 エネルギー収支(出展元 ノルデア銀行、ブルームバーグより転載)

 図1は各国のエネルギー収支ついてまとめたもので、国内エネルギー需要を国内産出のエネルギーで賄える場合を0%にした図となっている。100%は国内エネルギー需要を全て輸入で賄っている場合で、100%に近い日本は純エネルギー輸入国に近く、逆に図の一番上にいるノルウェーは自国のエネルギー需要をはるかに超えるエネルギーを輸出していることを示している。よって上のグラフは今回のエネルギー高で恩恵を受ける順となっているとも言える。

 世界銀行の最新の見通しによると2022年までエネルギー価格の高騰は続くと考えられている。欧州ではロシアが本格的に供給増を行わない限りは高価格が続くと考えられる。一方で、アメリカ産天然ガスは好調な輸出や気温低下による需要増で需給は締まっているものの、現在の価格上昇は本来の適正価格を超えていると言われている。これは世界的なエネルギー価格の高騰により投機資金が集まっていることが要因であり、需給が確実に緩むとわかるまでは現在の価格高騰と大きな値動きが継続するのではないかと考えている。現在の状況を変える鍵はノルドストリーム2の稼働で欧州向け天然ガスが確実に増えることが確定した場合と思われるので、年末に向けて続報に注意したい。
 


※このコラムで紹介している相場の動きの見方や見通しなどは執筆者の主観に基づくものであり、利益の増加や損失の減少を保証するものではありません。

 

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